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「いちばんすきな花(第2話)」見える事だけで幸せかどうか決めつける大人にならなくて良かった・・・。

脚本家が、主人公4人の名前を何故、この不思議な名前にしたのだろう。男には、男らしくない、「椿」と「紅葉」、そして、女には「ゆくえ」と「夜々」。かなり考えて名付けた節がある。それを考えるような人は、多分、このドラマの沼にもうハマってる人だと思う。

私の記事への反応やネットニュースの数を見ても前作「Silent」に比べて話題にはなっていないようだ。確かに前作は主演が目黒蓮と川口春奈、そして初恋の人の耳が聞こえなくなっていたと、ドラマが明確に見えやすかったこともあるだろう。だが、私に言わせれば、この二作目の方が数段、考えられ、様々な仕込みがある脚本に見える。そして、多分だが、多部未華子の役、いや4人の思考回路は、生方美久の自分の今までの考え方の映し絵なのではないだろうか?

そして、一つ一つのセリフの重量感というか、印象度が半端ない。シーンを跨いで韻を踏むような、セリフの存在感も脚本というより、壮大な詩的世界を体現させられているように感じる。今までに見たことのないテレビドラマがそこに存在し、この4人の感覚にシンクロできるものは、確実にその沼にハマるようにできている。

そう、まだドラマは始まってからそんなに動きがないのに、セリフ世界の中で私たちの感情が踊るのだ。青春時代に「個」というものをうまく出せず、「集団」の中にうまくはまり込んで過ごしてきたことに後悔する思いがある人には、このドラマの全てのセリフが刺さってくるように感じる。

今回は、ゆくえの同窓会のシーンから始まる。(いつもは俳優名で記述するのを常としているが、このドラマに関しては、役名で書いていった方がスッキリしそうなので、そうする)。ここで、自分が友人の結婚式に呼ばれていなかったことを知るゆくえ。そして、今回、何度も出てくる「交換ノート」を持ってくる友人がいる。そこで、ゆくえは「彼女がこのノート止めたんだ」と知るわけだが、それも言えないし、それで自分の居場所をなくすわけだ。この後で実家で、後で話題になるちびっ子相撲のビデオが出てくるのだが、この使い方も見事であった。そう、最初のここで試合の結果を見せずに、ゆくえの気まずい記憶の表情だけを写すのだ。これが脚本的にイイか悪いかはともかく、視聴者がその結果を見ていないからさらりとかわしてしまい。後になって、「えっ」と思うわけである。その結果、この話が妙に記憶に残る。

夜々は友人の結婚式に出席し、帰り道、友人たちから「感動する演技うまいね」と言われる。自分は本当に感動していたのに、それをディスられる感じ。そして、家に帰れば、この間、部屋にこないのか?と誘った泉澤祐希が待っていて、「友達からでいい」と言ってくる。逃げる夜々。そして、公園にたまたまいた紅葉を彼氏だと言って泉澤を追い返す。紅葉はコンビニで、アルバイト仲間が自分のことをディスってるのを聴いて落ち込んでいたところだった。そして、二人は「二度目まして」と挨拶する。これ、イイですね。

そして、夜々は忘れ物を届けにいくから椿の家に行こうと紅葉を誘う。忘れ物とは、前回、椿の部屋のゴミ箱にあった夜々の勤めている美容室のカード。このカードをこういう形で使うとは、思いもよらなかった。

そんな時間にゆくえは職場の塾にいて、子供に対峙していた。不登校の女の子にクラスに席はあるの?と聞くと「ある」と答える生徒。ゆくえは笑顔で「席があるだけいいよ」という。その後に、紅葉に椿の家に呼ばれ、そこのこの間座った席が「ゆくえちゃんの席」と紅葉に言われるのだ。

今回も4人をうまく集めている。毎回、こんな感じで4人が集まるとも思えないが、2人で対峙するのが気まずい4人がここで気を許せる場を持ったというところまでが、この2回目だ。そう、この4人なら正直に自分の思いを話せるということ。そして、先に出した相撲大会の話になる。小さい子が大きな子を押し出して、皆が小さな子のことを褒め感動したという話。それで、ゆくえは、負けた子のことが気になってしかたなかったという思いを今も記憶しているという。見える事だけで幸せかどうか決めつけるのはおかしいという話。そして、最後に夜々が告白するが、夜々もゆくえの話にシンクロしていたわけだ。この時の演技も結婚式での表情も今田美桜の演技は素晴らしかった。前クールは、「トリリオンゲーム」で金持ちのわがまま娘を演じきっていたが、こういう繊細な演技の方が彼女の魅力は出せると思う。たぶん、このドラマでまた一つ大きくなりそうな今田である。

で、4人の席が決まって、男2人、女2人で対峙するシーンに展開していくラスト。そう、彼らの中での二人ならしゃべりやすいという事なのだろう。この空気感を視聴者に理解させるまでに2回を使ったという事らしい。

さあ、ここからどんなドラマが始まるかと思いきや、椿の元フィアンセの臼田あさ美が忘れ物をとりにくるところで、初動からドラマが動き出す感じ。もう、本当にこの先、期待しかないですよね。この空間にハマってしまった事だけは確かです。

そう、フリーランスで働く今の私は「私の席はあるの?」と自分で自分に問いかけてしまいました。皆さんは自分の席がありますか?



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