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「俺の家の話(第2話)」プロレスと能と介護と、これで話をまとめていく才能

第2話も面白かった。1話で振った、結婚詐欺話を、スピード感を持って回収。それによって、戸田恵梨香のしたたかさと、介護現場での必要性を強く訴える。それは、長瀬の介護に対する未熟さとの対比であり、その差異にドラマがある。だから、今回の最後は、プロレスでアルバイトする間に、西田が倒れるという具合に3話につなげる。

しかし、マスクマンとしてプロレス復帰とは、宮藤脚本らしさが感じられる。そして、今回も。ちゃんと長州力の見せ場も用意して、そして「セリフがはっきり聴き取れた」ことに感動し、その後にリキラリアットを見せられる。贅沢なドラマである。

前半部は、長瀬が後継者になるために能のシーンが出てくるが、2、3回のシーンで、下手くそな能が、それなりに見えてくるのは、長瀬の演技力なのだろう。完璧な感じはないが、かなりの練習をした感じが見てとれる。しかし、長瀬智也、随分とゴツゴツした顔つきになってきたなと驚く。このまま、もっと野性味が出てきたら、日本映画の中では必要な人になれる感じだ。ジャニーズが大人になった時に、こういう顔つきになる人も珍しい。そういう意味では、このドラマが彼の転期になるかもしれませんな。

この話、中心にあるのは、老人の介護問題なのだと思う。毎回、西田敏行の裸を見せられるのは、少し辛いが、長瀬が西田のおしっこを心配する展開や、痴呆の状態の見せ方、今回の最後の倒れ方など、多様な問題をしっかり入れ込んでいる。そこに合わせて、長瀬の息子の脳的な障害を見せていくのは、色々な伏線が潜んでいそうだ。こういうふうにパラレルでいろんなものを見せていく技は「いだてん」を書き切ったことで、かなりうまくなっている感じの宮藤官九郎だ。そう、昔に比べて、無駄な感じなところがなくなった。

しかし、長瀬の元妻が平岩紙というのも、不思議なキャスティングだが、宮藤ワールドの中では、こういうのが楽しいのだろう。平岩も、まさか、長瀬とカップルになるとは思わなかっただろう。こういう私たちが考えないキャスティングはまだまだあるのかも楽しみである。

あと、初回の感想でも書いたが、マスク生活をちゃんと描いているのは、本当に心地よい。モブシーンで、何人かが鼻だしマスクをしているのは、わざとだろうと思うが、そういう部分でドラマのリアルさは動くのだと思う。とにかくも、これはファンタジーではないと言っているような演出で、最後まで、2021年の現在をしっかり描いて欲しいものだ。

宮藤官九郎のドラマは、一回一回、どっちに進むのかが見どころではあるが、…。

女の又に心が「怒る」、口に兄で「呪う」みたいなセリフが妙に心に残るのも好きである。

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