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医療ドラマという安易なネタとその結果,そしてTVドラマの未来。

今クール(2020年1月〜3月)の民放のゴールデンタイムのドラマには5本の病院を舞台にしたドラマが放送されている。その中で、テレビ東京「病院の治し方」に関しては以前触れた。このドラマに関しては病院経営という新しい視点はいまだに展開が面白く、ビジネス書を読むような中身は興味深い。

ここでは、他の4本について書いて行きたい。珍しく、4本のドラマを全体の折り返し地点の今までみ続けている。(今週分はまだみていないが)別に展開が面白いものはないが、時間があるのでみているだけだ。しかし、テレビ全体の劣化がドラマにまで如実に伝わっている感じはなかなかつらい。

「恋はつづくよどこまでも」

TBS。原作は円城寺マキさんの漫画。ということで、医療ドラマというよりは、完全に恋愛ドラマ。修学旅行の時に恋した医師を訪ねて看護師になる娘の話。主役の上白石萌音は妹とセットで売り出し中なのだろうが、私にはピンとこない。地味なので主役向きではない。このドラマの客引き要素は佐藤健の方だろう。なんか噛み合わない恋愛話と、ダメなナースの成長物語をミックスしたライトノベル的な軽〜いドラマである。そう、結構、病気のことが出てくるのだが、ほとんど頭に残らない。手術シーンなどもあるのだが、残像が薄すぎる。ただの恋愛ドラマである。それも、特に佐藤がツンデレタイプなだけで、上白石を脅かす敵もいないので面白みにかける。ひねりがない。上白石に関しては、色気がなさすぎる。

「アライブ がん専門医のカルテ」

フジテレビ。脚本 倉光泰子さんのオリジナル作品。そういう意味では、結構みていられるドラマである。腫瘍内科の松下奈緒と消化器外科の木村佳乃のW主演。夫の手術でミスをしたとする木村が松下に近づくというサスペンス要素も含め、今までにないものを作ろうとする意思はある。様々なガン患者が出てきて、それぞれに悩みがある。その辺りは脚本家の取材の結果だろう。だが、もう一歩見入る展開にならないわけだ。そして、松下と木村がどうしてもデキル医師に見えてこない。これは、彼女たちの演技のせいでなく演出の空気感がないことによる感じがする。いろいろ凡庸な部分が多いのだ。私的には研修医の岡崎紗絵を見るだけのドラマになってしまっている。線は細いが期待できる雰囲気を持っている。

「病室で念仏を唱えないでください」

TBS。原作はこやす珠世さんの漫画。今クール、TBSは2本の医療ドラマを出しているのだが、両方とも漫画が原作。この辺りはどうにかならないのかねと思うところ。漫画原作は結果的には突飛な発想が多く、そこに無理が出る感じが拭えない。そして、テレビの場合、そのテーストを変えずに原作者に気を使ったりもするので、まあ、一定以上の飛躍した演出も望めないというところ。漫画は、元の絵のイメージが存在するところが実写化が難しいよね。だから、救急の医師が僧侶という設定は面白いのだが、今ひとつその道具がうまく使われていない気がする。医者の仕事を通して、一回ごとに仏のありがたい言葉でもきければいいのだが、そういう細かいことは考えていない感じの脚本である。主人公を恨んでいるムロツヨシも感じ悪すぎる。中谷美紀は最近オーバーアクションすぎる感じがするのだが、これは、外人の夫の影響か?ちょっともったいない演技が続いている。このドラマも、私的には松本穂香を見るためだけのものになっている。救急救命のドラマにしては全体的に緊張感がなさすぎる。

「トップナイフ 天才脳外科医の条件」

日本テレビ。原作は林宏司さんの小説。だが、日本テレビが作るドラマは、小説も漫画化させてしまう。トップナイフという言葉を医者自身が使うのがなんか嘘くさい。まあ、脳の病気というのは様々なものがあるという部分は面白い。その病気についてもっと焦点を合わせればいいのだが、テレビドラマの性なのか、恋愛物語も入れていたり、家族の問題も様々に出てきて面倒臭い設定である。天海祐希はいつもの天海祐希である。椎名桔平や永山絢斗らも特に前に出るでもなく印象不足。広瀬アリスは目立つが、抜けているコメディリリーフなのでどうでもいい。彼女はこういう使われ方が増えて目立っているが、なんか違う気がする。妹とは違う使い方ということなのだろうが、もっと二枚目で使ってもいいと思う。最後のダンスのクレジットシーンは印象深いが、ドラマがこの雰囲気になっちゃってるんだよね。

ということで、4本の雑感を書いたが、どれもこれも、似たようなヒネリと抑揚にかける作品ばかり。最近のテレビドラマが医療ドラマを好むのは、撮影できる医療現場を確保できればお金がかからないということが書いてあったが、本当だろうか?そういう安易な発想の企画が、日本の医療のあり方をダメにしている気もする。

昨年末には「ドクターX」の新シリーズを放送していたが、これなんかは、医療ドラマをエンターテインメントに押し上げるデフォルメを過剰にするために、ヒーロー大門未知子を作り、そこに主役がハマり、お金もかけられるようになり、結果、それなりの完成度で仕上がっている感じである。そう、金をかける気合いがないと視聴率も取れないのである。

ここ数年、テレビは様々に面白く無くなっているのは事実である。ドラマも、回を重ねるごとに何か手応えのあるものが減っている。デジタル時代にドラマを作る基本姿勢を何も変えてないせいなのだろうか?みたくなる演出家もいないし、脚本家も本当に新しい才能が出てこない。全ての関係者にテレビの中のコンテンツを面白くするという意欲が薄い気がする(もちろん熱い人もいるだろうが、顧客に見えてこないのだ)。視聴率がへり、若者がテレビをみないという現状で制限も多くなるのだろうが、もう少しみられるものを作って欲しいというのが本音である。

テレビの中のみなさん、未来は見えてますか?



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