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「夫婦の秘密(第3話)」みんな「嘘」と「不安」に苛まれながら、過去の記憶でバランスが徐々に崩れていく。

このドラマ、BS-TBSで放映されているわけだが、ある意味、地上波では流しにくいくらいに作家性が強い。内容はそうでもないのだろうが、脚本、演出はかなり攻めている感じがする。そして、この演出を成立させるには、それなりの役者の演技を必要とするわけで、そういう感じで集められたキャストなのだろう。

今回は、前回、宮本真希が訪ねてきて、臼田あさ美が拒否感を示したところから。そこから、ドラマは時を刻んでいないかのように、登場人物たちの内面を追うように、いろんなショットを重ねながら、心理的な不安や、本当か嘘かわからない会話を積み重ねていく。この辺りの演出はかなり面白かった。

最初から出てくる穴ほって、人を埋めてるようなシーン。今の所、それは、ただ一人明確な嘘をついている剛力彩芽と誰かに見えるが、宮本真希が夫を埋めたとしてもおかしくはない。まあ、そうすると、シーンの重ね方がおかしいが・・。

で、このタイトルにあるように、このドラマは「夫婦の秘密」の話なのだから、剛力彩芽の嘘はあまり重要ではないのかとも思える。と思ったところ、臼田あさ美の隠してることが表に出始める。彼女は宮本の弟子であり、宮本の夫に犯されそうになった。それを宮本が忘れられないでいる。

夫の豊田裕大は、宮本に頼まれて娘の話し相手になっていたのは本当なのだろう。そこに金銭も絡んでるはず。だが、臼田の話を聞いて、契約を解消しようとしたということは、宮本に心が靡いているということはない。

こんなふうに、登場人物の関係を全て見ていくと、全ての人物が孤立している感じになり、種明かしとしてどこがどう結びついていてもおかしくはないとも言える。そして、最初に投じられた「夫の秘密を知っています」という手紙の犯人は、ドラマが進むほどよく分からなくなっていくのは、なかなかうまい作り。

花屋のアルバイトの桃月なしこも、剛力の店でコーヒーを淹れている山下幸輝、誰のことを気にしてるのか、誰かと通じているのか?みたいなものがすごくわかりにくく、見ている方がイライラする感じもドラマとしてはうまいところである。そう、傍に登場人物も含め、皆秘密を持っている感じが、海外サスペンスっぽくて良いですよね。このドラマ、オリジナルではあるが、何か底本が色々ありそうな感じがする。

そして、そんな不安の渦の中心にいる主人公に臼田あさ美を配したことは正解だったようだ。この不安な役には派手な女優は必要ない。あくまでも秘密が開示されていくことで、不安が増幅する演技が似合う人が良いのだと思う。そういう意味では適役だ。

そして、ラスト、本人から臼田宛に荷物が来るって、本人が知らないのに何も考えず開くには危険すぎないか?そして、そこに入っていたのは、彼女の小さい頃のトラウマに通じるぬいぐるみ。謎の時間軸が広がってきた。わかりにくくもあるが、この混沌とした状況をどう処理していくのか、次回の脚本には興味をそそられる。


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