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「春になったら」産まれること、結ばれること、亡くなること。それを一括りに考えるドラマ

「死ぬまでにやりたいことリスト」で終わる初回。ラストは、奈緒の花嫁姿を泣いて見ている木梨憲武が浮かんではくるが、そんな簡単なドラマでもなさそうだ。ホームドラマの形態をとりながらも、なかなか深いテーマが語られていきそうな感じ。

福田靖のオリジナル脚本。最近では珍しい、お正月風景から始まるドラマ。そう、正月だと言ってそういうドラマも作らなくなった日本は、それでいいのか?と少し考えさせられた。メディアも騒がなくなった新年。まあ、今年は災害から始まったから、もし、そんなドラマが作られていたとしても放送延期になったかもしれないが・・。

そして、正月を描ける場所ということで、足立、荒川、江戸川近辺のロケのようで、明確な土地は指定されていないが、下町が舞台ということだろう。そうなると、昔っぽいドラマの雰囲気になる。とはいえ、この家族も母親が先に亡くなっていて父と娘の二人暮らし。その二人が正月の元日の朝、結婚の話と、余命3ヶ月の話を一緒に言い出すというドラマチックな始まり。こういうなさそうな話から始めるのはうまい。

そして、主人公、木梨憲武の商売は、デパートなどで見かける実演販売士である。昔は、確かにこの手の商売の人たちは初売りはかなり儲かったということでしょうな。最近は、そうさせるお正月の空気もなく、そしてこういう商売自体が縮小し、それを継承する人も少なくなったということでしょう。何か、そこで木梨の余命が少ないということが商売のあり方とシンクロしてくる感じが見えなくもなく、すごく刹那さも感じさせる。そんな脚本設定はお見事。

そして、久しぶりの木梨の芝居だが、昔から同じだがうまくはない。それはコントである。全てがそういう台詞回しで、これが合わない人はいるだろうが、私はそんな台詞回しよりも、勢いのある彼の存在感みたいなものが勝っていて面白いと思った。彼の役の思いみたいなものがうまくドラマの中にシンクロしてくる感じは、彼だからできる味なのだろうなと思いながら見ていたりしたわけだ。

そんな彼独自の芝居が爆発するのが、初回のラストで娘の結婚したいという相手のライブの中で、「俺は許さない」と宣言反対してライブをめちゃくちゃにするところだろう。そこで、彼(濱田岳)が東大中退だとか、バツイチで子持ちだとかのアウェイな情報が全部出され、テンションマックスになっていくところがなかなか、脚本を書いた側の思いを超えた出来になってるのではないだろうか?エキサイティングな感じを作れるのはさすがだ。

そして、その木梨に対して娘役の奈緒は相手として不足感がないのがいい。昨年は「ファーストペンギン」で堤真一、他の親父たちを見事に相手に仕切った彼女であるが、今度の共演の相手もなかなかパワフルだと感じて望んでいる気はする。とはいえ、彼女の役のバックには小林聡美などもいるし、まあ、この悲喜交々の展開が予想される家族プロレスドラマ。先が楽しみでならない。


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