「彼女はキレイだった(第6話)」記憶の書き換えはできないという話
先週のラスト、イメチェンを図った小芝風花。今回はそのきっかけと変身を佐久間由依に手伝ってもらうところから始まる。そう、ここで小芝と佐久間の友人としての近さをまずは示すわけだ。
これが、最後の佐久間と中島が近づいていくところを小芝が見てしまうところにシンクロしているのが今回の脚本。佐久間は、小芝の思い出のパズルのを持ち出し、自分が幼馴染の愛だと証明して中島を引き止めようとする。そう、友情の破綻がここで起こるわけだが、その時にはもう中島の心は小芝に引っ張られているという流れ。こういう物理的なことと、心の速度との微妙な差異を表現するとドラマは増幅する。つまり、中島の心の変化の加速が頗る速いという恋の相対性理論みたいなものが視聴者にうまく示される感じだ。
小芝は変身しても基本的にはやる気以外には何も変わっていない。赤楚に対しての想いのなさも同じだし、中島に対してのスタンスもそれほど変わっていない。ただ、中島が小芝に対応してくれる様になったことで、中島のことを信頼できるようになってきただけだ。
今回で、一番心が乱れているのは中島だ。綺麗になった小芝を認識して、昔の記憶がもう一度脳裏をグルグルしてくる。そして、小芝が本当の幼馴染ではないかと気づいてくる。その確認に佐久間に、その記憶を振ってみるがそれがうまく伝わらないことに気づく。佐久間も、そんな中島の話についていけないことに苛立ち、最初に書いたパズルのピースを持ち出すに至るわけだ。
ここまで持っていく1時間の中島の心の乱れがなかなか秀逸。先にも書いたが、中島の心を表す微妙な表情の演技がなかなか独特で面白いのだ。小芝のすごい前向きな演技に対して、そこについていけない様な呼応の仕方。そして、自分のプライドをかなぐり捨てたくないような自分もわかっている。自分の嘘臭さみたいなものがよくわかっているという演技だ。火事があって、小芝が無事で抱きしめる様はもう完全に心が奪われているのがわかる。そばにいた赤楚が完全に嫉妬している感じにしがっているのは、ラブコメの王道的演出だが、とてもわかりやすいシーンだった。
そんな中で、雑誌が廃刊になる話が今回は全く放っておかれるのが気になる。そういうパラレルに走っているドラマもちゃんと走らせないとなかなかドラマ自身の完成度は高くならない気がする。多分、小芝が絵本作家にあって、またいろんな展開になるのだろうが、作家の思いも今回に少し入れておいてもよかった気もする。この辺りは、足し算と引き算の話で、ドラマのスタッフは考えてやっていることだとは思うが、各回でこの塩梅が違うと、どうもバランス感が悪く私には感じられる。次週あたりからドラマも終盤の一悶着とハッピーエンドに向かうのだからこそ、大切なところだと思ったりする。
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