ドラマ「恐怖新聞」京都、嵐電が走る風景が、題材にうまく融け込む。
原作は1973年に発表された、つのだじろうの漫画。47年の時を越えて、デジタル時代でのドラマ化である。原作を使っているのは、恐怖新聞という予告新聞だけで、あとは、ほぼオリジナルと言っていいだろう。
現代だから、和風の家に放り込まれる新聞ではない。マンションのドアポストにそれは投げ込まれる。投げ込まれるというシチュエーションがあるから、オートロックのマンションではいけなかったのだろう。あくまでも、アナログチックな部分を残さないとなかなかドラマとして成立しない感じだ。
でも、スマフォでの連絡先交換や、出前宅配のアルバイトなど、明確に現代を入れながらの脚本。おどろおどろしい雰囲気を出すためであろう、舞台は京都。嵐電が走る、風情のある街だ。その中で起こる、事故や自殺は、ドラマとしても、血が結構出ているし、容赦ないと思ったら、1回目の演出は中田秀夫。HPを見ると、3人の演出家で回すようだが、中田監督の思いが強く出るということだろう。それは期待できる。
主演は、これがドラマ初主演となる、白石聖。派手さはないが、美形で、何かに追われるような役にはぴったりな感じである。初回を見る限りは彼女の演技もなかなか期待はできる。
恐怖新聞は、昔ながらの新聞紙に刷られ、主演の彼女以外には見えないという設定。そんな中で、新聞の絵が実際の画として降りてくる感じは、なかなか視聴者を引きつける。昔と違って、そこそこのものができるので、そこは見所。ただ、最後に父親に足場が落ちてきて刺さるシーンは、ちょっとやりすぎな気もした。そこまでやるなら、もっと血を出しても良かったのでは?(ここは、自主規制の気がした)
その父親が死ぬが、ラストに娘に「生まれてこなければ良かった」という伏線的な問題定義。白石に近づいて、キスまでしたEXILEの佐藤大樹も、今風な感じが、結構おどろおどろしい。中田監督だから出ているという感じなのだろうが、黒木瞳もそんな雰囲気に輪をかける。
そして、この恐怖な事件に巻き込まれていく刑事、駿河太郎。京都の刑事はこんな格好しているのか?と思う戦後すぐの刑事のような格好。京都の街には似合うが、ちょっと作りすぎている感じもする。臭いはいい感じだが…。
7回シリーズのドラマのようだが、初回はとても面白かった。とりあえず、ドラマ展開に必要な点を散りばめて、次の恐怖に持っていく感じは、さすが中田秀夫と言ってもいいのかもしれない。脚本、高山直也も、楽しんで書いているように見える。
73年当時の新聞は、世の中の情報の中心だった。だから、「恐怖新聞」という言葉に子供たちが湧いた感じはあった。ただ、2020年、新聞は、虚構を伝え、それが国民の恐怖になったりしている。まあ、新聞を配達してもらっている家庭も少ないから、私など、新聞がポストに入れられただけで、恐怖ではあるが…。
原作のつのだじろう氏はまだご存命だが、意見はしているのだろうか?少し気になるところである。