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「私たちはどうかしている」浜辺美波が漂わせる不穏な表情がドラマを包む

安藤なつみ原作のコミックのドラマ化。浜辺美波と横浜流星というコミックから抜け出したような美男美女が展開する、愛想劇?サスペンス?ある意味、下手な視聴者むきな題材である。

とはいえ、浜辺美波の役者としての成長にただただ興味がある。とにかくも、それなりのセンスを持った和菓子職人の彼女が母が殺人犯とされた老舗に乗り込んで、その店の再生と事件の真相を探る話である。敵の中に入り込んで、虐められることも理解しながら、生きていく話。そして、母を死に追いやることになった横浜との愛の葛藤というものもあるのだろう。古臭いが、日本人が本質的に好きそうな題材。それを浜辺がどう演じ切るかが見所?という感じだ。

上の写真のポスターのビジュアルもそそる。紅がはみ出した浜辺が印象的だが、彼女が紅い和菓子が作れないというハンデも面白い。義母になる観月ありさの存在のウザい感じ、佐野史郎の存在もまた不穏を増幅している。

初回から、浜辺は、結構な喜怒哀楽を微妙に瞳で演技している。それは前回のドラマ「アリバイ崩し承ります」のある意味、素なままの可愛い感じで責める演技ではない。ここで始まる結婚生活自体が芝居なわけで、その部分と本気で好きになっていくような場面との葛藤が描かれるのだろうから、かなり芝居としては多重構造を強いられる。初回を見る限りは浜辺の演技はそれを十分に了解してのものなようである。

様々な和菓子を生み出すという役柄にも無理がない。葉桜の和菓子、羊羹に新月を感じさせる話など、浜辺の説明の観ている方が納得させられる感じは好感が持てたし、真剣になるときの瞳は本当に力のある女優さんである。

そう考えると、横浜流星に対しては、ちょっと芝居が凡庸である。まあ、浜辺を知っている女と感づいていない役というならそれも良しか?彼よりも職人役の高杉真宙が目立っているのは、ドラマの動かし方も示しているのだろうが、不安定さは感じる。

夜10時代のドラマの主役というのは、ある意味、大人の女優として認められたことなのだろうか?最近のテレビ局のそういう目論見はよくわからないが、浜辺が女優として広がりを見せるにはいい試みだろう。

次週予告では、いじめドラマに突入のようだが、なかなか身体を張って虐められている感じで、浜辺の演技が楽しみなところ。とにかくも、凡庸な日本の慣習縛りのような古臭いドラマにはして欲しくない。不安な部分も多いが、私は浜辺美波の演技の振り幅の広がりに期待するのみ。

とにかく、週末からは映画も公開!浜辺美波の季節がすぐそこに来ることは確かなのである。彼女自身が才能をどう伸ばしていくか?演出がどれだけ彼女の表象していない部分を引き出すのか?一気に女優としてメタモルフォーゼしていく時期だと思うので、とても興味深いのだ。

浜辺のお母さん役が中村ゆりというのは納得の配役。綺麗な芝居のできる女優さんが活躍する季節には、時代も活力を増すと信じている私です。



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