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「あの頃、文芸坐で」【85】007とロマンポルノをハシゴする映画ファンであった時代

上のプログラムは三枚残っている。1982年7月13日、文芸地下で荒木経惟監督「女高生偽日記」(2本立ての「グレープフルーツのような女 性乱の日々」は以前観てつまらなかったので見ていない」)。7月15日には文芸坐で「007 ムーンレイカー」「007 ユア・アイズ・オンリー」の二本立てを見た後、文芸地下で「Mr.ジレンマン 色情狂い」と「ポルノドキュメント トルコ特急便」の二本立てを観ている。「トルコ特急便」は2度目の鑑賞だ。と言うことで、この5本を一気にまとめて書かせていただきます。

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まずは、プログラムのコラムから。関西の友人が「緋牡丹博徒」のニュープリント上映の自費パンフレットを作ったと言う話。当時は、こう言うのを作るのもそれなりの費用がかかったものである。そう、自費出版など、儲けることを前提にするものではなかったのだ。そして、重人たちが、悲観的な感想を漏らすのも時代だ。私も何人かの映画人に似たような言葉をかけられたことがある。そして、「三十路を迎えてなお映画にうつつをむかしておる身」という言葉がある。今、ネットを見ると、30など若造の姿は少ない。うつつを抜かし続けてるのは、50代、60代、70代だったりする。色々と、この当時には現在の映画状況は見えてこなかったと思ったりもする。そして、私は今日も映画三昧をしようとうつつの時間を探していたりもする。

プログラムは、文芸坐の「スーパーSF世界映画大全PARTⅤ」のラインナップが出ている。なかなか、今この特集やってもお客さんがそれなりに入りそうな気がする。こういうのを見るとワクワクするのが変わらない私だ。文芸地下は、今前から追加のものはなし。オールナイトも変わらず、ル・ピリエは、夏休みはずっと映画なのですね。橋本以蔵のISAMIのロードショーが出てますな。

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そして、この時観た映画5本。まずは、ロマンポルノから。

「女高生偽日記」
荒木経惟が唯一撮ったロマンポルノである。昨今は、セクハラ問題もあり、表舞台に出てこないアラーキーだが、この時代は、「写真時代」などで、好き勝手に写真を撮り続けていた。そして、私がそれを好きだったかといえば、そんなことはなかった。私は「GORO」などに出ていた篠山紀信の写真の方が好きだった。紀信さんにもロマンポルノの話って行ったのでしょうか?で、この映画、主演は荒井理花という新人の主演。森村陽子共演だが、映画としては、大して面白くなかった記憶。そして、前貼りアリの世界では、その猥褻性みたいなものが出せていなかった記憶である。これ、スチールを宇崎竜童が担当したりしてるんですよね。

「Mr.ジレンマン 色情狂い」
小沼勝監督作品。まだ、テレビでの露出もなかった頃の東京乾電池が出ているロマンポルノ。エロ漫画が原作で、正義の味方Mr.ジレンマンが活躍する話。柄本明が主役。映画は「赤塚不二夫のギャグ・ポルノ 気分を出してもう一度」「下落合焼きとりムービー」に続いて三作目で主役。共演が高田純次、ベンガルという面々。彼らの若い勇姿を見るには良い映画である。そしれ、柄本さん、次の年には「ヒポクラテスたち」に出てるから、ある意味、出世街道はここからということでしょうかね?そこそこ面白かった記憶はある。

「ポルノドキュメント トルコ特急便」
この映画を二度観ているのは、やはり美保純が今までにない、ロマンポルノの華だったからだろう。ピンク買取りに2本出て、ロマンポルノでファンを掴み、女優として受けいられ、40年後の今、まだ女優をやっているとは、本当に同世代として、すごい成功者だと思ったりするのですよ。選挙に出るようなことがないのも、良いところ。

「007 ムーンレイカー」
「007私を愛したスパイ」の成功で、これはその続編的な作品。そして、007が宇宙に行くのは、「スターウォーズ」のヒットにあやかったところがあるのだろう。主題歌も007三回目の「シャーリー・バッシー」。なかなか気合が入っていて、面白かった記憶。

「007 ユア・アイズ・オンリー」
シーナ・イーストンの主題歌が記憶に残る。あまり、内容は覚えていないが、この辺りのロジャー・ムーア ボンドの成功が、今に至るシリーズの存続の勢いをつけた気が私はする。

しかし、007を観た足で、ロマンポルノを観ている、当時の私の頭の中はどうなっていたのでしょうか?言えることは、文芸坐のプログラムの玩具箱をひっくり返した感じを楽しんでいたのは確かですね。


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