見出し画像

「WAVES」結局、何を創りたかったのか?宗教的なものしか感じさせぬデジタル映画。

予告編を観ても、チラシを観ても、どういう映画かよくわからなかった。結果的には、称賛の嵐みたいな事が出ているのだが、そんな映画ではなかった。実験映画?それにしては長い。テーマから感じるのは宗教映画。幸福の科学が作ってるのよりは、エンタメなんだろうけど、どうも最後まで退屈感が漂っていた。

宣伝には「ミュージカルを超えたプレイリストムービー」とあるが、全然ミュージカルではないし、プレイリストに沿って流れた音楽に私は一つも反応できなかった。まあ、洋楽に疎いのは今に始まったことではないが、心地よくないのである。

そして話がつまらない。主人公の高校生が身体を痛め、レスリングを諦め、恋人を妊娠させ、よりを戻そうとして殺してしまい、30年間の刑務所暮らしを言い渡される。そこまでが前半。後半は残された妹の恋愛劇であり、家族の再生への道というところ。特に後半は蛇足にしか感じなかった。

だいたい、なんでこんなダメ息子の話に付き合わされなくてはいけないのか?父親にも母親にもシンパシーを全く感じないし、同情する余地がない。まあ、妹はまともでその恋人も良い人で良かったが、私たちはそこに何を見出せばいいのだ。日本人で、この話にシンクロできる人ってどれだけいるの?

確かに話は暗いが、画作りはきれいにしようと頑張っている。スタッフはそこにだけにしか興味がないのかもしれない。とはいえ、映画全体が長いのでどうもそういう部分も映えないのだ。最初の方は、カメラがやたら動く。多分、機動性の良いカメラをうまく使おうとしているのだろう。しょっぱなの360度回転などは、その最たるものだろう。「だから、どうした?」という感じである。

そして、この映画変なのは、画角が何度も変わるのだ。普通のサイズから、上下がトリミングされ、段階的に画面は小さくなり、中盤でスタンダードサイズになる。そしてまた横長画面に戻り、最後にまた上下の黒みが無くなるという変な映画である。演出としては、心持ちに合わせてサイズを変えるという試行なのか?意味がわからない。画面が小さくなって嬉しい観客はいないし、そんなところで演者の心情など感じることはありませんよ。この辺りはビデオとして観た場合は、もっとフラストレーションが溜まるでしょうね。

だいたい、プレイリストムービーというから、もっとミュージックビデオの羅列みたいなものを予想して行ったのだが、そういう感じの部分は数カ所あったものの、この暗い映画の中でそれがパワーにはなっていない。

そして、スターが出ているわけではないのだ。地味な犯罪映画でしかない。家族的な問題も日本とは違うというところもあるのだろうが、私がこの映画に寄り添うことはなかった。中に、堕胎に対するヘイトや、ネットでの誹謗中傷の話が出てくるが、そこもこの映画の本題ではなかったようだ。

そう、どこに映画の本質があるのか、見えないままに終わり、印象に残るといえば、予告編やポスターに出てくる、海の中でのラブシーンくらいですよね。

題名は「WAVES」。様々な世の中の生きる上での波動みたいなものを映像と音楽で語りたかったのでしょうか?そこからして謎の一作でした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?