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田中邦衛さん追悼。永遠の青大将のまま天国に行ってください

田中邦衛さんがなくなった。この間、加山雄三さんが体調を壊して心配したが、回復された後でこの訃報である。

ニュースでは、「北の国から」の田中さんと語られることの方が多いような気もする。そして、映画黄金期のバイプレイヤーとして、個性的な姿は今後も語られ続けるだろう。個人的には「人間の條件」「網走番外地」「若者たち」「仁義なき戦い」などが印象に残っている。

だが、田中邦衛というキャラクターを子供の時に最初に知ったのは、なんと言っても「若大将シリーズ」の青大将である。私にとって田中邦衛は、常に青大将的な存在として記憶にあった気がする。金持ちで強気でいい加減な男。この漫画のようなキャラクターは、子供にもよくわかったのだ。だからかどうかはしらないが、封切り時の「若大将」は怪獣映画との二本立ての時もあった。

若大将が爽やかでスポーツ万能だが、女性の扱いがヤボったいのに対し、青大将は金の力を最大限に利用し、女性には積極的に押し倒してまでも自分のものにしようとする。青大将にみられるように田中邦衛の印象は積極的な悪役であったりする。あとは、威勢がいい時と落ち込んだ時の落差の演技の魅力というのもある。そういう部分は、他の映画でも似たような姿が見られた。顔のキャラクターが印象的な部分、ヒーローにまとわりつく弱者的な役も多かった気がする。そう記憶を辿って行っても、やはり田中邦衛=青大将なのだと思うのだ。

新聞は「北の国から」の彼を、その代表作とする。そのことに特に異論はない。テレビの中では「若者たち」もそうだが、いたって正義派の良い男を演じていたりする。この訃報でよく知っている人の話からは、日常の中ではとても良い人である。彼にとってテレビは、そんな本質的なものを表現する場だったのかもしれない。

若大将の加山雄三は田中より5歳下である。そして、若大将を撮っていた頃は、加山のボンボン生活に対して田中は質素な生活だった話も聞いたことがあるが、この日常と反対の役をここまでできる俳優が田中邦衛でもあったのだ。

昭和を代表するというよりは、戦後の高度成長期が生んだ芸能人が次々に亡くなって数少なくなりつつある。田中の代表作として取り上げる人も多い「仁義なき戦い」だって、主要メンバーで生き残っているのは小林旭、千葉真一くらいであろう。本当に、この令和の世の中で1960年から1970年初頭の映画を観ると、そこで暴れている人々は鬼籍に入った人ばかりだが、彼らの雄姿が今も輝く作品として見られるのは奇跡である。俳優とは奇跡の仕事なのかもしれない。

とにかくも、若大将の健康が回復したすぐ後に流れてきた青大将の訃報は、昭和の記憶を甦らせた。先に天国に召されたスミちゃんこと星百合子さんにいまごろ、ちょっかいを出している頃ですかね。そんな、軽い感じの田中邦衛さんの青大将がいまも大好きです。

最後に、田中邦衛さんのご冥福をお祈りします。

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