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「ドリーム・ホース」馬が綺麗に撮られていて、競馬に対する愛情を感じられる映画

競馬好きとしては、競馬の映画は絶対に見たいと思う。これはイギリス、ウェールズの話。実話というが、その馬の名前もその奇跡の話も全く知らなかった。ほぼ、何も知識を入れなかったことでラストがどうなるのかもわからなかったことが良かったと思う。競馬ファンである方も、そうでない方もこの映画は、何も知らないで見た方が良い映画だ。そして、新年に見るのはとても良い映画だと思った。(ということで、この後はネタバレ書くので見る予定がある方はこの先お気をつけください)

イギリスの競馬事情はほとんど知らないが、賭け事は好きな国民だろうから結構な賑わいなのだろうと思う。この映画は、そんな競争馬を通じて、町や人が元気になる映画だ。そういう映画を作りたいという意思は明確に見えるしわかりやすい。そして、作り手が競馬に対する愛情を持っていることもよくわかった。とにかく、馬が綺麗に撮られているし、レースシーンの提示の仕方もとても上手い。ラスト、芝を目一杯走る、主人公の馬、ドリームアライアンスの姿を画面の前で強く応援している自分がいたりする。そう、競馬ファンには元気が出るフィルムと言っていい。

そして、主人公のトニ・コレットをはじめ演者がここで繰り広げられるゲームをすごく楽しんでる感じもよい。それでないと、ラストのクレジットでのおどけた感じは出せないだろう。とにかくも、心躍る実話の映画化ということだ。

まず、主人公が今に納得していないというのが、とても映画的な導入部。パートと介護の毎日。そんな中でバーでもう一人の主人公とも言える元馬主だった男(ダミアン・ルイス)の話を聞く。そこで、競走馬で稼ぐという夢を見る。ここは、結構唐突だ。彼女が昔、鳩のレースに優勝したことがあるということで、そういう勝負が好きなのはわかるが、・・。まあ、思いついたらのめり込みやすいのだろう。そして、日本なら、共同馬主の会社のメンバーになるみたいなことになるのだろうが、ここでは、まず牝馬を買うところから始まる。これを見て、日本も安値でこういうことが可能だったら競馬ももっと面白くなるのではないか?と思ったりした。

そして、種づけして競走馬を育てるために、街のみんなに共同馬主にならないかとビラを巻く作業から。この馬主が集まるところも奇跡的な感じがする。実際はもう少し紆余曲折があったのだろう。映画はそんなところはシンプルにというところで、すぐに仔馬は生まれるが、母馬が死んでしまうという悲劇。でも、それがあって、この馬が奇跡の馬になるというドラマが始まる。

そして、農場で育った馬ということで、スターになるわけだが、まあ日本ではなかなかありえない話だろう。そして、レースシーンが何回か出てくるが、最初の草競馬と呼んでいいような地域の競馬場から、最後の大観衆の馬場に出るまでのスタンスがはっきりわかるのもなかなか心熱くする演出。

ドラマとしては、共同馬主がいる中で、「金持ちが馬を譲らないか」というところと、馬が怪我をして「保険金をもらう」というところで、皆の意識がバラバラになるが、主人公の馬に対する愛情が強く、そこを乗り越えていくというシーンが印象的に描かれる。競馬はビジネスではあるが、人が馬に元気付けられていることを重きに置くところは心揺さぶられる。

そう、途中で馬が怪我をするシーン。この映像の構成の仕方は、自分が競馬場にいる感じで感心した。怪我をする瞬間の馬をアップなどにはせず、いつの間にかレースから馬がいなくなっているという情景にする。そして、コースに幕が張られるというもの。私も、実際競馬場で馬を追っていてこういう状況にあったことがある。「何が起こったか?」ということが一瞬わからないのだ。そう、あくまでも主人公は馬ではなく馬主の彼女だということだ。そういう視線がはっきりできている映画である。そこがとても心地よい。

そういう中で、ダミアン・ルイスの家族も崩壊寸前だったのが馬のおかげで元に戻るというのはとってつけたような光景なのだが、それがギャンブルというものなのである。人を一瞬で幸せにもするし不幸にもするということ。

とにかくも、ラストのレースシーンはなかなか感動的。最後の障害を飛んだ後で抜きつぬかれつ熱い競馬シーンだ。感動の昂まりの描き方が最高だった。そして、町全体がそれに湧くという姿も興奮できる。そう、小さなきっかけが大きな感動になり、人の生きる糧になる話だ。ある意味、御伽噺的なシンプルな話ではあるが、人の夢が人を強くし、そこに大きな何かを連れてくるということは、この世の中に確実にあることだと思う。この映画には、それを信じた人々の思いみたいな空気が感じられるのがとても良い。

今年、少し頑張って夢を追いかけてみようかなと思わせる一作でした!元気いただきました!



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