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「天間荘の三姉妹」死後の世界のファンタジー映画だが、今ひとつ世界観が浅い印象

髙橋ツトム原作のコミックを北村龍平監督が映画化。私的には内容はよくわからぬままに、のんの演技が見たくて観に行った感じ。話の舞台は「三瀬」と呼ばれる生と死の間の世界。いわゆる三途の川の事を三瀬の川とも言うらしい。そこに送られてきた、のんが今生に戻るまでの話。つまり、臨死体験をする話である。

この後は色々とネタバレになるので、これから観る方はお気をつけください。まずは、映画の尺が150分もある映画なのだが、120分で十分まとめられる題材の気がするので、脚本の引き算が全くできてない印象。そして最後の30分強で、一気にファンタジスティックな映画になるのだが、この辺りに今ひとつ違和感がある。最初から、そういう映画にするか、最後までそういうものは押さえていた方が、映画としてはまとまりがついた感じが私にはした。

役者は揃っている。のん、門脇麦、大島優子、寺島しのぶ、柴咲コウ、三田佳子、そして永瀬正敏。役者の演技でなんとか映画の質が保たれている感じ。三田佳子は久々にスクリーンで見たが、老けたのは仕方ないが、サングラスをかけているので淡路恵子みたいな雰囲気に見えた。そう考えれば、やはり淡路さんの方が強烈な印象の芝居をしたなと思ってしまったりも・・・。三田佳子にもうひと花咲かさせたいという感じの使い方ではなかったですが、のんとの芝居のやり取りは面白かったし、やはり若い女優たちには共演することで刺激にはなる人だと思う。

津波で亡くなった姉妹役の大島と門脇。こちらは、イルカの調教師という門脇の役の方がインパクトがあり、もらい役。大島にもう一つ見せ場を作ってあげても良かったのではないか?その母の寺島しのぶは酔っ払ってばかりだったが、まあ、この中で芝居すれば貫禄はありますよね。そういう、女優さんたちを観るという点に関してはとても楽しかった。

ただ、最後になってわかる、この場所が津波で流されたところで、ここに住んでいる人は、死にきれない被害者だったという説明が最後の方であるわけだが、今ひとつなんか観客に対しうまくシンクロしてこない気がした。映画の途中で三瀬での高良健吾の姿から、今生に生きている父親の柳葉敏郎に画面が移るあたりから、その辺りが観客に伝わってくるわけだが、なかなかそういう映像の積み重ねの中に作り手の明確な主張が伝わってこない気がした。

多分、こうやって、津波の被害に遭って死にきれない魂がいっぱいあるのだから、まだ、生きることができるなら、一生懸命生きなきゃいけないという事を言いたいのだろうが、そこのところが、先にも書いたファンタジックな演出のせいで、御伽話的に処理してしまわれているので、何か映画全体が軽くなっているのである。だから、最後にのんが今生に戻って、亡くなった人の伝言を伝えるシーンも涙腺をくすぐるまでに至ってこないのだ。

とはいえ、「さかなのこ」に続いて水族館に勤める人を演じたのんは、同じようにいつもの、のんなのだが、やはり見ていて心地よい演技をする。彼女の持っているこの空気感は誰にも真似できないだろうし、まだまだスクリーンをさまざまな役で駆け回ってもらいたいと思ったりする。そういう意味で、のんを観に行った私的には、そこは満足ではあった。


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