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「俺の家の話」宮藤官九郎のドラマに、なんとなく巨匠感が見える?

「いだてん」以来の宮藤官九郎脚本の連続ドラマ。「介護と遺産と結婚詐欺と」という話に、「プロレス」と「狂言」が混ざるという混沌とした感じが、彼らしい脚本だが、初回を見る限り、余計なものが削ぎ取られ、なかなか巨匠の脚本という感じの雰囲気が出てきた。

NHKで1年間、脚本を描き続けたということは大きな学習になったのだろうか?前はもっと無駄なシーンやセリフが多かったような気がするのだ。だから「あまちゃん」などをみていた頃、15分のドラマだと、そういう無駄が無駄に感じないで、彼の脚本には15分という朝ドラはあっているなと思ったりもしていた。とにかく、いろんなものが、玩具箱をひっくり返したように羅列される脚本は彼のそれなのだが、今回はなかなか全体に落ち着きがある感じにまとまっていた。

プロレスシーンで、観客がみんなマスクを描けている状況は、いまのコロナ禍をしっかり描く。家庭の中以外は、ちゃんとマスクをつけてリアルを描こうとしているのには好感がモテる。

そして、久々の長瀬智也とのタッグ。話の中にタッグマッチがうまくいかなかったシーンが出てくるが、脚本家と役者のタッグの相性も結構あると思う。そういう意味では、安心してみていられるのはいい。そして、周囲のキャストも、結構、宮藤ファミリー的な人ばかりでもないので、なかなかそのコアな世界に入っていないのも心地よかった。

そして、戸田恵梨香がこの話の最初のキーのようで、こういう話も時節的には本当にありそうですねという感じ。結婚したばかりの彼女にこの役をあてがうというのもなかなか洒落なのか、楽しみです。

脇では、長瀬の妹役の江口のりこが、ここでもなかなかぶっ飛ばしている感じ。存在感が大きすぎるくらいの役者が宮藤脚本の中では、ちゃんとこなれて浮いてこないのがいい。脚本自体が、静的なリアルを求めていないからだろう。

そして、どうやっても噛み合わないように見える、プロレスと狂言。でも、考えてみれば、小さな飾らない舞台で、ストーリーを語っていくのは同じような気がする。もちろん、お行儀がいいか、悪いか?という部分は全く違うが、自分をデフォルメさせ、観客に訴えるという技は似ているのかもしれない。

そういう部分を宮藤氏がどう捉えて、このドラマを描こうと思ったかは非常に気になるところではある。とにかくも、初回は、家族の現状をくどくなく視聴者に説明する、よくできた回であった。これからの構成がどうなっていくかは未知だし、まだまだ多くのよからぬことが起こってくるのだろうが、ワンクール楽しめるのだろうという感じはした。

今期のクールのゴールデンタイムのドラマはこれでほぼ出揃った感じだろう。やはり、これと、日曜劇場とTBSは堅実なドラマを投げてくる。そして、この金曜ドラマが一番楽しみではある。

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