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2022年新作映画レビュー

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2022年に見た新作映画のレビューです。
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2022年4月の記事一覧

「カモン カモン」子供の深層心理には、さまざまな気づきがあり、未来の形は彼らに聞いた方が早い?

ホアキン・フェニックス、「ジョーカー」の後に選んだ作品として語れば、現代のまた違ったアメリカの顔を表現することに挑戦したというふうにも見える。A24作品で、あまりお金もかかっていないだろうし、特に変わったこともしていない。まあ、モノクロ映画というところは、変わっているのだろうが。正直言って、似たようなシーンが続くので、中盤、眠気が襲ってきた。映画館で私の列の端にいた人は、最近では珍しく、中盤すぎに席を立って帰ってしまった。ポップコーン食べてたから、やはりつまらなくて帰ったんだ

「パリ13区」都会の孤独とSEXと絶頂と虚飾と未来と

昨年公開のフランス映画だから、パンデミックの中で、こういう映画が撮りたくなったということもあるのかもしれない。三つの原作をもとにパリ市の端の方の地区に住む4人の男女、いや男は一人か…の生活を淡々と追っていく映画だ。画面は基本、白黒。ただ、一箇所だけ、ネットのポルノスターが登場するところだけがカラーになる。アクセントとして、もう何箇所かカラーに置き換えてもいいと思ったが、なぜなのだろう。 冒頭、裸でカラオケをする主人公の一人の台湾人、ルーシー・チャンが映る。そこに黒人のマキタ

「親愛なる同志たちへ」この映画を観て、今のロシアをシンクロさせて見て良いのか?

1962年、ソ連で起こった、ストライキ事件を題材にしたロシア映画。2020年の作品だが、今、現在、こういう映画は作ることが可能なのだろうか?とまず思ってしまった。そう、誰もが、現在進行形の「ロシアのウクライナ侵攻」に重ねるのは当然であり、今も、同じようなDNAが、国の中を掌握しているのではないだろうか?と考えるのが必然である。そして、もう、この事件当時、プーチンはKGBとして活動していたのだろうから…。 昔のソ連の映画というと、まず、フィルムの質が良くないのか、独特のテイス

「とんび」瀬々敬久監督の緻密で正攻法な演出に唸る作品。役者が全て生きている!

2度のテレビドラマ化作品は両方とも観ているが、それと比較するのは意味がないくらい、きっちりできた映画に仕上がっていた。瀬々敬久監督だから、そんな変なものは作らないだろうとは思ったが、多くの人がが知ってる話を、気負いなく濃厚な139分で作り上げたという感じ。 とにかく、役者がみんな良い!昨今騒がれているパワハラ、セクハラなんかが蔓延する現場だったら、絶対にこんな映像の空気感は出せないと思う。そういうのって、映像に確実に出ます。だから、怒号が飛ぶような現場ではいい映画は撮れない

「アネット」映画って自由でいいのだけど、もう一つ古臭い気がするんですよね

先週は、レオス・カラックス監督、来日ということで、コアなファンからは、SNSにさまざまな反響が寄せられていた。そして、同じフランス映画(この映画は、ドイツ、ベルギー、日本資本との合作らしいが)なら、「TITANE」を薦めるかたが多かったように思う。「TITANE」がカンヌの作品賞なら、こちらは監督賞を取った作品。そういう意味でも、見比べるのは面白い。しかし、私、洋画に関しては、ここのところ、これで3作連続フランス映画を見ている。ある意味、ハリウッドでは作れないだろう香りの3本

「TITANE チタン」こういう映画がつくられているフランスに嫉妬する

ネットで多くの人が反応していた映画。クローネンバーグ監督に影響されたというジュリア・ジュクルノー監督の話がネットに書いてあり、ということは「イカレタ映画」だろうとは思ったが、そこに徹している映画だった。という意味では、これを受け入れるか?受け入れないかというだけである。設定から、到達点まで、ほとんどその状況や怒っていることへの説明はない。そして、主人公がほぼ、言葉を発しないために、その思考回路も理解できないし、そういうものを提示したいわけではないということなのだろう。一昔前は

「やがて海へと届く」友人、家族、亡くなった人に声を届けようとする心の映像化

原作がある映画だが、何も情報を入れないで観たと言っていい。岸井ゆきのと浜辺美波の共演というのだけで観に行った。岸井は現在、30歳。浜辺は21歳。この二人が同じ歳を演じる。時に、浜辺の方がお姉さんっぽい雰囲気を出すこともある。なかなか面白いマリアージュといった感じだった。この二人、テレビドラマ「私たちはどうかしている」でも共演していた。この時も、同じ男を伴侶に狙う役ということで同年代の役であった。岸井が背も小さく、童顔なのでこういう役が回ってくるのだろう。でも、岸井は年の功とい