僕と君の世界

【欅坂46】楽曲に登場する『僕』は3年半の時を経てどのように成長したのか。「僕と君の世界」を歌詞から考察してみた - 前篇

音楽っていいですよね。

気分を高揚させてくれたり、背中を押してくれたり、励ましてくれたり、、、
音楽に救われたという方、世の中にたくさんいるのではないでしょうか。

私も音楽に多大な影響を受けている人間の1人です。

小学校4年生の時に出会ったMr.Childrenには「人生」や「恋愛」を教えてもらいましたし、高校1年生の時に出会ったRed Hot Chili Peppersには純粋に音楽の楽しさやかっこよさを教えてもらいました。

そして2019年に出会った「欅坂46」というグループ(私はメンバーや秋元康さんやダンサー、作詞作曲家を含めてアーティスト集団だと思っています)は、私に大きな衝撃を与えて新しい世界を見せてくれました。

今回はそんな新しい世界を皆さんにも共有したいなと思っております。

このnoteを読み終えた頃には、欅坂46の楽曲の今までとは違う一面が見えると思うので、長くなりますがぜひ最後まで読んでいただければ幸いです。(一緒に楽しみましょう!)

-

はじめに

※これを書こうと思ったキッカケを書いてます。早く読みたい方は次の見出しに飛んで下さい。

2019年9月、欅坂46にとって初めての「選抜制」が発表されました。
2016年4月にリリースされた「サイレントマジョリティー」から2019年2月リリースの「黒い羊」まで全員選抜でやってきた欅坂46において、選抜制は大きな転機となる出来事だったと思います。

私は2017年紅白歌合戦の不協和音で欅坂46の存在を知り、黒い羊から本格的にケヤつき始めた比較的新規のヲタなんですが、そんな私にとっても選抜制は衝撃でした。

そして選抜発表直後に公開されたメンバーブログを読んでいたところ、齋藤冬優花さんがこんなことを書かれていました。

1stから見守ってきた主人公の『僕』の成長に携われないのはとても悲しいですが、
『僕』も確実に成長をしているのでね、
私も成長しなければです。

欅坂46メンバーブログ / 齋藤冬優花 2019年9月10日更新より抜粋

はい?
1stから見守ってきた主人公の『僕』の成長?
なにそれ?(ポカーン)

確かに欅坂46の楽曲を聞いていると、女性グループなのに「僕」という言葉が多く出現します。これは聞いてて少し違和感があったんですよね。

音楽ってだいたい楽曲毎に物語があるじゃないですか。

たまにGreen Dayの「21st Century Breakdown」のようにアルバム単位で物語があるものもありますが、大半は楽曲単位で物語があり、その中で完結していると思います。

しかし、この齋藤冬優花さんのブログを読む限り、欅坂46の楽曲には1stの「サイレントマジョリティー」から8thの「黒い羊」まで、『僕』という主人公が存在するみたいなんですよ。楽曲だけでなく、リリース時期の垣根を超えて壮大な物語が描かれてるみたいなんです。
しかもまだ終わっていない。

また他のメンバーの石森虹花さんもこのようにブログを綴っています。

2019年も欅坂46の楽曲を多くの方に届けられますように…
どんな楽曲に出会えるんだろう。
すごく楽しみです!
主人公の「僕」は確実に成長していて多くの葛藤を乗り越えてきています。
私も頑張らなきゃ。

欅坂46メンバーブログ / 石森虹花 2019年1月2日更新より抜粋

このブログを読んで

『僕』を追いかけるしかない!

と謎の使命感に襲われた私は、友人のヲタと一緒に楽曲の物語を読み解いてみようとなったわけです。

↓友人の欅ヲタ

-

さぁ『僕と君の世界』に潜ろうか


その前に注意書きです。

※これから書いていく歌詞解釈は、筆者と友人で欅坂46が伝えようとしている『僕』の物語をイマジネーションの翼を羽ばたかせながら解釈したものです。

※人によっては「ここはこうだと思う!」といった意見が生まれると思いますが、そうなった時はコメントやTwitterで教えて下さい。一緒に考えます。

※私達が解釈した『僕』の物語は正解ではありません。あくまで1つの解釈としてお楽しみ下さい。

早速、欅坂46の『僕と君の世界』に潜るとしましょうか。。。

まずは登場人物と、取り上げた楽曲についてご紹介したいと思います。

〜登場人物〜
① 僕(僕A / 僕B)
② 君(僕A / 僕B / 物理的な君 / 夢 etc...)
〜楽曲(主体)〜
① サイレントマジョリティー (僕 / 僕Bの誕生)
② 世界には愛しかない (僕)
③ 大人は信じてくれない (僕A)
④ 二人セゾン (僕A / 君の登場)
⑤ 東京タワーはどこから見える? (僕A)
⑥ 不協和音  (僕A)
⑦ エキセントリック (僕A)
⑧君をもう探さない(僕B)
⑨ 風に吹かれても (僕A)
⑩ 避雷針 (僕B)
⑪ もう森へ帰ろうか (僕A)
⑫ ガラスを割れ! (僕A / 君の言葉)
⑬ アンビバレント (僕A)
⑭ I'm out (僕A)
⑮ 黒い羊 (僕A)
⑯ キミガイナイ (僕B)
※物語順

はい!落ち着いて!!混乱しないでー!!!

歌詞解釈を進めた結果、「僕=君(僕+君=僕)」と「僕≠君」などの様々なパターンの楽曲が存在するという結論に至りました。

この”僕”と”君”に関してですが、次のセクションで詳しく解説いたします。これを理解していないと私達の解釈を理解することはできないと思うので、ぜひ読んでいただければ幸いです。
また楽曲ごとに主体となる登場人物が変わることがあるのは、『僕』の成長に人間味を帯びるとても良い演出になっていると考えています。これも後々理解できると思いますので、頭の片隅にでも置いておいていただければと思います。

そして見ていただければ分かる通り、全16楽曲の物語考察を1つのnoteにまとめるととんでもない量になってしまうので、全部で2本に分けたいと思います。
今回は以下の8楽曲について、私達の解釈をご紹介できればと思います。

① サイレントマジョリティー (僕主体)
② 世界には愛しかない (僕主体 / 僕Bの登場)
③ 大人は信じてくれない (僕A主体)
④ 二人セゾン (僕A / 君の登場)
⑤ 東京タワーはどこから見える? (僕A)
⑥ 不協和音  (僕A)
⑦ エキセントリック (僕A)
⑧君をもう探さない(僕B)

通して聞きたい〜!!という方用に、Apple Musicでプレイリストを作っておきましたのでよかったら下記より聞いていみてください。

それでは...いきましょう!

サイレントマジョリティーのプロローグ的な位置づけとして存在する「月曜日の朝、スカートを切られた」という楽曲ですが、欅坂46のメンバーが集結する前の物語と明言されているので「僕と君の世界」からは除外しております。

※参考
欅坂46メンバーブログ / 菅井友香 2017年7月16日更新
ジャパンミュージックネットワーク株式会社 BARKS

-

“僕”と”君”の解釈について

僕と君の解釈

この「僕と君の世界」における”僕”と”君”の解釈ですが、シンプルですが複雑なものになっています。(アンビバレントですね)

・僕の解釈
“僕”はこの物語に一貫して登場する主人公の”僕”であり、物語を通して成長していきます。
成長とは「決意」であったり、「新しい価値観との出会い」であったりと様々な要因があると思います。現実世界の私達も様々な人と出会い、様々な経験を積み、新しい価値観と出会うことによって成長していきます。

そしてこの物語の“僕”は、成長の元となる”僕A”と成長をしていく上で登場する”僕B”の2種類の”僕”が存在していると考えています。
よく映画や漫画等で出てくる「自分の中の天使と悪魔」のような存在と認識していただけるとわかりやすいと思います。

・君の解釈
“君”は楽曲毎に意味が変わってきます。
例えば「サイレントマジョリティー」では、私達リスナーとしての”君”と主人公の”僕”を”君”と例えて僕自身に言い聞かせているといったように、楽曲毎に様々な解釈が存在します。
現時点で全ての楽曲の”君”の解釈を説明してしまうと分かりづらいため、それぞれの楽曲の解釈説明の際にしっかりと説明します。

-

決意「サイレントマジョリティー」

サイレントマジョリティー

一度は聞いたことがあるだろう「サイレントマジョリティー」、強烈なメッセージ性が話題になった楽曲です。

サイレントマジョリティーで登場する「僕(厳密には僕ら)」と「君」は、「楽曲を聞く私達リスナー」「登場人物としての僕自身」の両方の意味を持っています。

こちらを理解した上で、まずサイレントマジョリティーはどういった曲なのかを端的にまとめると、
"大人"を疑問視して抵抗するべきだと考えているからこそ、声を上げないマジョリティに対して抵抗することを提示している曲といえるでしょう。
また僕自身に言い聞かせて決意を固めています。

君は君らしく生きていく自由があるんだ
大人たちに支配されるな
初めからそう諦めてしまったら
僕らは何のために生まれたのか

夢を見ることは 時には孤独にもなるよ
誰もいない道を進むんだ
この世界は群れていても始まらない
Yesでいいのか?
サイレントマジョリティー

出典 : 「サイレントマジョリティー」 作詞 / 秋元康

"大人"という存在からの抑圧に抵抗することもなく、"僕らしく生きる自由"から目を背けて生きる"マジョリティー"になりたくないという強い意志を歌詞から読み取ることができると思います。

そしてサイレントマジョリティーに出てくる「夢」「自由」「マジョリティー」の3つの概念は、この後の物語においてとても重要なのでしっかりと理解しておいてください。

サイレントマジョリティーはストレートでわかりやすい歌詞なので解釈は以上です。

僕が「マジョリティーにならずに僕らしく自由に生きるんだ」と決意している曲だと思って下さい。

-

決意の前進「世界には愛しかない」

世界には愛しかない

前提として曲名にある「愛」とは、恋愛のことだけを指しているわけではありません。

もちろん恋愛の「愛」も含みますが、その他にも"家族""友人""自分自身"を大切に思う「愛」や生活や仕事に対する「愛」、戦争が起きる要因になる愛国心の「愛」、そして大人の子供に対する「愛」といったようなものまで含んでいると考えています。

「世界には愛しかない」は、サイレントマジョリティーで決意した僕(僕A)が、成長を通して新たな僕(僕B)と出会った後の物語として私達は解釈しています。
そして曲中に出てくる”君”とは、サイレントマジョリティーで決意した”夢”のことを指しています。

以上を踏まえて世界には愛しかないを端的にまとめると、
サイレントマジョリティーでの決意を確固たる決意へと変化させるために前進している曲といえます。

「真っ白な入道雲がもくもくと近づいて、
どこかでセミたちが一斉に鳴いた。
太陽が一瞬怯んだ気がした。」

出典 : 「世界には愛しかない」 作詞 / 秋元康

ここでは、サイレントマジョリティーでの決意を「太陽」とし、その決意が「入道雲」に例えたマイナスの要因によって少し揺らいだことを表現しています。

夕立も予測できない未来も嫌いじゃない
出典 : 「世界には愛しかない」 作詞 / 秋元康

この先どんなことが待ち受けていようとも、"夢"を追い求めて突き進んでいくことを宣言しています。
つまり、曲中に出てくる「入道雲」や「夕立」といったようなネガティブなものを受け入れつつ、決意を前進させていることを表現していると私達は解釈しています。

「世界には愛しかない」とこの後の「大人は信じてくれない」に関して考察している様子を撮影してあるので、良かったらご覧になっていただけると更に理解を深めることができると思います。

-

挫折「大人は信じてくれない」

大人は信じてくれない

大人は信じてくれないは、3rdシングル「二人セゾン」のカップリングになります。
「サイレントマジョリティー」での決意を胸に「世界には愛しかない」で前進していた”僕”は、初めての挫折を味わい大人へ助けを求めるも声は届かないという内容です。
ちなみにこの楽曲では、”君”は登場しません。

いいことなんかない 退屈な毎日さ
やりたいこともない 夢なんかひとつもない

心が叫び続けていたって
誰にも聴こえないよ(助けて)

出典 : 「大人は信じてくれない」 作詞 / 秋元康

冒頭から挫折を味わい絶望の淵に立たされている"僕"の心境が伝わってきます。
サイレントマジョリティーで語っていた「夢」さえも散ってしまうような、壮絶な挫折があったのでしょう。散々抵抗すると言っていた”大人”に助けてを求めてしまう心理状況が壮絶さを物語っています。

やさしさに触れるだけで 真っ赤な血が滲んでくる
僕が 僕がいなくなったって(誰にも)
大人は信じてくれない こんな孤独でいるのに
僕が絶望の淵にいるって思ってないんだ
And why? Believe me, I really wanna die, don’t ya know?
Why? No way I can find my sign

出典 : 「大人は信じてくれない」 作詞 / 秋元康

そして挫折を味わった僕は全てを塞ぎ込み、諦めてこの曲は終わります。

-

“生”の認識「二人セゾン」

二人セゾン

※ここから怒涛です。私達もこの後の5曲で完全に撃ち抜かれました。

3rdシングルの「二人セゾン」の”セゾン”ですが、フランス語で「季節」という意味になります。そして「二人セゾン」では曲名の通り、「春夏秋冬」「桜」といった季節の描写が散りばめられています。
また、今までの”君”は、”夢”だったり”僕自身(僕B)”だったのに対し、ここで登場する”君”は物理的な第三者としての”君”になります。

誰かと話すのが面倒で
目を伏せて聴こえないふりしてた
君は突然
僕のイヤホン外した

出典 : 「二人セゾン」 作詞 / 秋元康

「二人セゾン」は、「大人は信じてくれない」で死にたいと塞ぎ込んでいた”僕”が突然やってきた季節のような”君”と出会い、心の窓を開けられ世界を改めて目の当たりにすることで、世界の変化と自分の変化を重ねて”生”を認識する曲です。

つまり”僕A”と”僕B”で形成されてきた価値観に、他者の価値観が初めて介入して"僕"が成長を遂げる曲なのです。

昨日とは違った景色よ
生きるとは変わること

出典 : 「二人セゾン」 作詞 / 秋元康
一瞬の光が重なって 折々の色が四季をつくる
そのどれが欠けたって 永遠は生まれない

出典 : 「二人セゾン」 作詞 / 秋元康

塞ぎ込んで見えなくなってしまっていた世界(日常)が、“君”と出会ったことによって輝きを取り戻し、季節によって世界が変化していくことに”僕”は改めて気付きます。
それによって”僕”は「生きるとは変わることなんだ」「僕が欠けてしまうこと(死ぬこと)は正しくない」と、”生”を認識します。

春夏秋冬生まれ変われると
別れ際 君に教えられた

出典 : 「二人セゾン」 作詞 / 秋元康

しかし”僕”の世界に輝きを取り戻してくれた”君”は、気付いたら過ぎ去ってゆく季節のように”僕”の元から去っていきます。
「色んなことに気付かせてくれてありがとう」と感謝を伝える時間も、「なんで僕の前に現れてくれたの?」と聞く時間もなく。(泣きそう)

初めて感じたときめき
思い出はカレンダー
二人セゾン
Ha 僕もセゾン

出典 : 「二人セゾン」 作詞 / 秋元康

ここにある「思い出はカレンダー」でわかる通り、この曲は過去の思い出を語っている曲です。 現在進行系ではありません。

そして最後に、”僕”も季節と同じように移り変わる存在であり、変わることによって生きているんだという”生”の認識から「僕もセゾン」と結論づけています。

ここから解釈が少々飛躍します。

・歌詞で季節がかなり過ぎている点
・”僕”は変化する存在と定義している点

以上の点から、このあとに続く4曲は「二人セゾン」の楽曲内、細かくすると歌詞の最後の最後にある「Ha」の部分に含まれていると私達は考えています。
「Ha」で様々な経験から”僕”は成長を遂げ、「僕もセゾン」と定義づけて「人生は風まかせ」という流れになります。

。。。
意味分かんないですよね。笑
では「Ha」を細分化していきましょう。

-

空虚「東京タワーはどこから見える?」

東京タワーはどこから見える?

1stアルバム「真っ白なものは汚したくなる」に入っている「東京タワーはどこから見える?」は、「僕と君の世界」において失恋の曲になっています。
この曲に登場する”君”は、二人セゾンで登場した第三者の”君”です。

この歩道橋 渡る途中
東京タワー見えなかったっけ? 

出典 : 「東京タワーはどこから見える?」 作詞 / 秋元康
記憶の断片を 真実より 美しく補正して
そんなこともあったと いつの日か語りたい

出典 : 「東京タワーはどこから見える?」 作詞 / 秋元康

過去の現実を東京タワーと言い換え「この場所から東京タワーが見えたはずだったんだけど見えないな...」と、気付かないうちに”僕”の中で改ざんした偽りの現実を真実にすり替えている虚しさ。
誰もが一度は経験のある感覚だと思います。

ここまでは、成長の主体となっている”僕”の中の”僕A”の話です。
“僕A”は、二人セゾンで出会い別れた”君”に対して未練があり「真実を美しく補正していつの日か語りたい」という理想論を掲げています。

それに対し、

残酷なくらい ありのままの現実を見せようか?(悲しくなる)
僕たちの別れと答え合わせをした未来

出典 : 「東京タワーはどこから見える?」 作詞 / 秋元康

別れたという今の現実は「二人セゾン」の”君”と答え合わせをした結末の未来であり、"僕B"ありのままの現実を受け入れて前に進んでいこうと現実を直視した意見を持っています。

失恋をきっかけに、”僕”の中にいる”僕A”と”僕B”それぞれの考え方の相違が発生し、そこから”僕A”は空虚感を感じます。
そして空虚感に苛まれながら夢を追い求める”僕A”は、”僕B”や”他者”と対立していきます。

-

対立「不協和音」

不協和音

4thシングル「不協和音」ですが、ご存知の通り凄くストレートかつ強い歌詞になっています。
タイトルの「不協和音」は、「僕Aと他者(歌詞内で仲間)」「僕Aと僕B」の2種類の対立を指していると私達は考えています。

そしてここで登場する”君”とは、”僕B”のことを指しています。
「二人セゾン」の「Ha」の間に一体なにがあったのかはわかりませんが、二人セゾンの”君”と出会ったことで”僕A”の世界が広がり、「大人は信じてくれない」の時とは違って他者との関わりを持ちながら夢を追う”僕A”の中で、他者から裏切られるようなことがあったのでしょう。

また”僕A”と”僕B”の間柄でも「東京タワーはどこから見える?」でわかるように、考え方の相違によって対立が起きていることがわかると思います。

不協和音で 既成概念を壊せ!
みんな揃って 同じ意見だけではおかしいだろう
意志を貫け!ここで主張を曲げたら 生きてる価値ない
欺きたいなら 僕を抹殺してから行け!

出典 : 「不協和音」 作詞 / 秋元康

このサビの歌詞ですが、意味を汲み取ってみると1stの「サイレントマジョリティー」で言っている「僕らしく生きる自由」についてを言っています。

意見を持っているけど静かに抵抗しない「サイレントなマジョリティー(不協和音歌詞内の「軍門」)」になりたくない、諦めたら何のために生まれたのか、そんな生き方は生きている価値がないだろうという、”僕A”の確固たる意志を感じます。

夢を見ることは 時には孤独にもなるよ
誰もいない道を進むんだ

出典 : 「サイレントマジョリティー」 作詞 / 秋元康
ああ 調和だけじゃ危険だ
ああ まさか 自由はいけないことか
人はそれぞれバラバラだ
何か乱すことで気づく もっと新しい世界

出典 : 「不協和音」 作詞 / 秋元康

“他者”や”僕B”と対立し、孤独となった”僕A”は「調和だけでは危険、だけどまさか自由はいけないことなのか...?」と一瞬迷います。

僕は嫌だ
出典 : 「不協和音」 作詞 / 秋元康

一瞬迷ったものの、「僕らしく生きる自由」を掴む夢を否定することは嫌だと、強く宣言してこの曲は終わります。

-

孤独「エキセントリック」

エキセントリック

3rdシングル「不協和音」のカップリング曲である「エキセントリック」は、”僕A”の確立の曲です。
そのため、曲中の”僕”は”僕A”のことを指しています。

差出人のない噂の類 確証ないほど拡散する
意外にああ見えてこうだとか やっぱりそうなんだなんてね
本人も知らない僕が出来上がって 違う自分存在するよ

出典 : 「エキセントリック」 作詞 / 秋元康

ここで初めて、僕の中には違う”僕”が存在するということを、他者との対立によって”僕A”が発言します。僕の中に、サイレントなマジョリティーな要素を持つ”僕”が存在していると他者との対立によって気づくのです。

訂正したとこで また同じことの繰り返し
もう そういうのうんざりなんだよ

出典 : 「エキセントリック」 作詞 / 秋元康

そして”僕A”は対立により、”他者”と”僕B”に対して失望します。
そこからは結論に至るまで、”僕A”の自己の確立までが早く、

I am eccentric 変わり者でいい
普通なんかごめんだ 僕は僕でいさせてくれ
敬遠されたって 好きなように生きていくよ
カメレオンみたいに 同じ色に染まれない

出典 : 「エキセントリック」 作詞 / 秋元康
I am eccentric 変わり者でいい
理解されないほうが よっぽど楽だと思ったんだ
他人の目は気にしない 愛なんて縁を切る
はみ出してしまおう 自由なんてそんなもの

出典 : 「エキセントリック」 作詞 / 秋元康

他の人に同調せず好きなように生きていく、それが「僕らしく生きる」ことであり、それこそが「自由」であると”僕A”は意志を確立し、この曲は終わります。

では”僕B”はどう考えているのか。
次の曲で”僕B”の”僕A”の捉え方がわかります。

-

「君をもう探さない」

君をもう探さない

1stアルバム「真っ白なものは汚したくなる」に入っている「君をもう探さない」は、今までとは一転して”僕B”が主人公となり、”僕A”に対する思いを語っている曲です。
そのため、曲中の”僕”は”僕B”のことであり、”君”は”僕A”のことを指しています。

知らないうちに大人になってた
鏡の自分 絶望して
君は逃げ出したんだろう?

出典 : 「君をもう探さない」 作詞 / 秋元康

そもそも「サイレントマジョリティー」に気付いたのはなぜだったのか、それは"僕"が大人になりかけていたからだと思います。
自分を映し出す鏡を見た時に大人に近づいてしまったことに気付いた”僕A”は、「サイレントなマジョリティーのまま大人になりたくない」「僕らしく自由に生きたい」と思い、それを夢として様々な抵抗を繰り返していきます。

理屈じゃなくて 感情のままに
向き合うことを拒絶してきた
君はいつしか Yesという言葉
抵抗し始めた

出典 : 「君をもう探さない」 作詞 / 秋元康

ここでわかる通り、“僕B”は”僕A”の感情のままに逃げ出したと判断しているようです。
また不協和音で「僕はYesと言わない」と宣言していることに対しても、”いつしか抵抗し始めた”と捉えており、”僕A”が抵抗している理由を理解できていないことが伺えます。

人はいつも汚れて誰も逞しくなるんだ
割り切れたら 一人だって 生きられる

出典 : 「君をもう探さない」 作詞 / 秋元康
生きたくない
出典 : 「君をもう探さない」 作詞 / 秋元康

“僕B”は、人は汚れることで大人になっていくわけだから、抵抗することだけを選ぶなと言っており、それに対して”僕A”が「僕らしく生きられないなら生きたくない」と回答している描写になります。

“僕B”は「傷つかないと自由は口先だけ」と”僕A”に警鐘を鳴らし、成長を求めています。

-

前編まとめ

いかがでしたでしょうか?
突拍子もない考察で驚かれている方もいるとは思いますが、1つの物語として見てみると1人の人間の成長の物語が生々しく描かれていると思います。

そしてここまで読んでくださった方はなんとなく感じていると思いますが、"僕A"は理想を追い求める少し子供っぽい人格で、"僕B"は理想を持ちながらも現実をしっかり見据えている大人っぽい人格です。

どんな方でも生きていく上で、「ここはこう言ったほうがいいな」とか「これは現実的じゃないな」といった判断で人生の舵を切ることがあると思います。でも裏では「本当はこうしたい」と思っている。
そんな誰しもが経験したことのある「成長」をこの物語では読み解くことができ、自身を投影できるからこその魅力があると私達は考えています。

"僕"の成長の物語はこの後も進みます。
よかったら後編も読んでいただければ幸いです。

- - -

あとがき

いやセカアイであんだけ「悲しみは一時的!だから大丈夫!」って言ってたのに、オトシンで「マジ死にてぇ。」ってその間に何があったんだよおい!っていう話は私達の考察の中でもかなり悩みました。笑 (考察している様子の動画はセカアイの部分に載せてあります)
ただオトシンで「マジ死にてぇ。」となった結果、二人セゾンの「悲鳴を上げない存在」に繋がってくるということが明白です。

また不協和音での他者からの裏切りがどういうものだったのかも気になりますが、考えても考えても見えてこないので深く考えないようにしました。
でも気になるから今後のアルバム等で出して欲しいな〜なんて思ったりもしてます。

この続きの物語の考察となる「後編」は今年中に公開予定です!
このnoteが面白いと思ったら、私達の励みにもなるのでぜひスキを押していただければと思います!
それではまた!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?