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育児について語るときに外科医の語ること

「父親と一緒に遊んだ覚え全くないですね」
大学時代に聞いた外科医が父親だった後輩の言葉である。
僕は外科医になると決めた時、絶対に自分は外科医と父親を両立させようと思った。
二兎を追い、二兎を得てやると決意した。

正直我が家の子育てに関しては妻なくしては成り立たない。
食事の準備、習い事の送り迎えをはじめ平日の日中は全ての育児を妻に任せっきりであり、妻には感謝しかない。
そんな状態で僕が育児に関して語ることは恐れ多いが、子供や妻との時間の作り方という点において、外科に興味のある若手医師や家庭との両立で悩んでいる外科医師などに対し、多少なりとも伝えられることがあるのではないかと思う。

外科医とは確かに不規則な仕事である。
手術が長引けば帰りが遅くなることもあるし、緊急で呼び出されることもある。
しかし時間の使い方や仕事の仕方を工夫することで、家族と過ごす時間を確保することは可能と僕は考えている。

僕は息子が生後3ヶ月の頃から毎週ベビースイミングに一緒に通っていたし、運動会をはじめ休日祝日に行われる息子関連の行事は基本的に全て参加している。
また平日も可能であれば定時で仕事を終え、家族みんなで夕食を食べ、息子に本を読み聞かせ寝かしつけるという日常を送っている。
必要かどうかは別として、専門医資格や博士号なども取得はできている。

家族との時間を捻出できるかどうかに関して最も重要なポイントは、自分が家庭にどの程度コミットする気があるかだと思う。
僕は幸運なことに妻とも仲が良く、また息子が好きでたまらないと同時に育児に対する興味も尽きない。
2人と共有できる時間や思い出が何よりも優先度が高い。
そのため僕にとって家族と過ごす時間を作ることは自分の楽しみのためであり、能動的な取り組みである。

僕が実際働く上で意識していることは、勤務時間に無駄を作らないことだ。
仕事を効率良く処理していき、手術や緊急処置などのやむを得ない場合を除いて定時までには仕事を終えられるように計画する。
またスキマ時間や当直の空き時間を勉強、学会準備、論文執筆などに最大限に活用する。
これらを意識するだけで、時間は自ずと捻出されてくる。

そして外科医として最も注力すべきことが、丁寧な手術と術後管理である。
術後の合併症はある程度不可避な部分もあるが、丁寧な手術はそれらの減少に寄与すると信じている。
術後管理において、患者の異変に早期に気づくことも外科医として大切な能力であり、それは合併症の重篤化を未然に防ぐことに繋がる。
患者の状態が安定していることこそ、安心して家に帰るためには不可欠な要素である。

最後に同僚の医師やコメディカルとの関係性の構築の重要性にも触れたい。
仕事と家庭の両立のためには自身のスタンスを周囲に理解してもらうことが必要であるし、そのためには仕事をしっかりとこなさなければならない。
自身のやるべき仕事を抜かりなくこなしていれば、家庭を大切にする姿勢を周囲も認めてくれる。
また良好な関係を築いておくことも、仕事を迅速かつ円滑に進めていく上で重要である。

ここまで僕が家族と過ごす時間を捻出する上で日々意識していることをつらつらと書いてきたが、正直環境に恵まれていただけの可能性もある。
僕のようなスタンスの人間を外科医として認めてくれない環境もあるのかもしれない。
それでも僕はこの生き方を変えようとは思わない。
僕にとって父親、夫であることは外科医であることと同じかそれ以上に大切なことであるから。

育児はトライアンドエラーの連続であり、うまくいかずに落ち込むことも多いがそれ以上に面白みや、やりがいに溢れている。
これからも妻と一緒に頭を悩ませながら、息子と向き合っていきたいと思う。

勿論外科医としての矜恃も忘れずに。

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