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ショートショート【黒いパールの友人】


「真珠の耳飾りの少女でしょぅ」

友人との会話で君が放った一言。
宙に浮いた20文字が口角を上げ、君への愛が溢れた。どちらも取りこぼさないように丁寧に集める。
完全に私のツボでしかない。君のこの魅力は他の誰にも伝わって欲しくない。
これを公にしたとしても私以外が価値を見い出せるとは思えない。ただ彼女を知る他の人にこの感情を友情の証だとひけらかさないのは、彼女が私だけに伝わる魅力を持っていることさえも彼女の私だけに伝わる魅力であるからで、それは純情な友愛の中に潜んだひねくれ独占欲という名の先程拾い損ねた愛の破片かもしれないが、もはやそれすらも愛おしい。
かと言って彼女の華を隠したいわけではない。寧ろそれは声を大にさせてもらいたい。彼女は知的で謙虚でありながら持ち前の明るさとひょうきんさで太陽が霞むほどに輝く。そう、それはきっと誰もが惹かれ羨む彼女の魅力だろう。
だからヨハネス・フェルメールは左耳の真珠を大きく描いたのかもしれない。

ただ私なら作者不明の大作として世に放ちたいところだ。


本当に君の右耳のほくろは素敵だね。

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