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警告!夏場の練習計画を立てるために知っておくべき2つのこと

 こんにちは、ランナーの為の大学「ウェルビーイングオンラインスクール」で講師を務めさせて頂いている池上です。ウェルビーイングオンラインスクールには無料メールサポートをつけているのですが、暑くなるにつれて受講生様より「暑くて練習の質や量が落ちるのですが、どうすれば良いですか」と言ったご質問を何件か頂くようになりました。今回はそのうちの一人の方への返信をそのまま掲載させて頂きます。


「○○様

こちらこそお世話になります。

ウェルビーイングオンラインスクールはかなりの分量があるので、是非ゆっくりとご覧いただければと思います。

さて、ご質問頂いた件についてですが、いくつかの観点からお答えすることが出来ます。

先ず夏場に疲労を抱え込みやすいのは、市民ランナーからオリンピック選手まで全員共通しています。強豪高校、大学、実業団の選手がほぼ例外なく、高地、準高地、北海道で合宿をすることがこのことを示しています。

とは言え、普通は毎年夏に合計2-4週間の合宿を敢行するというのは難しく、対策が必要になります。

 ではなぜ夏の練習で疲労を抱え込みやすいかというと実は睡眠と食事というリカバリーの二大要素が阻害されるからです。要するに、暑さによる睡眠の質の低下と多量の脱水などによる食欲不振によるものです。まず、食欲不振の方から見ていくと、人間は食べ物と飲み物のどちらが重要かというと明らかに飲み物です。食べ物は一か月くらい食べなくても何とか生きていくことが出来ると言われていますが、飲み物は3日間ほど何も飲まないと死の危険にさらされます。当然、夏場の練習は発汗で多くの水分を失うので、食欲よりも飲欲が沸き起こります。これ自体は人間である以上変えることが出来ませんが、問題は冷たい水を多量に飲むことで消化器系に負担がかかることです。冷たい飲み物をがぶ飲みすると消化器系に負担がかかって食欲不振に陥ります。ですので、先ずはこれをやっているのであれば、やめた方が良いです。唯一の例外は走行中の給水です。走行中は冷水を飲んで中核体温を下げる(というよりは上昇に対するささやかな抵抗)ことが非常に重要になります。それ以外においては、冷たい飲み物の摂取はなるべく避けた方が良いです。走り終わった後の冷たいビールが楽しみで走っている場合は、それをやめろとまでは言わないのですが、ネガティブな側面を理解しておくことは重要です。

 それから、多量の発汗によってミネラルやビタミンもたくさん失われるので、水やお茶だけの補給ではなく、野菜や果物、お味噌汁など食物から水分を採ることも地味に重要になります。これも夏場あるあるなのですが、水分ばかり飲んでご飯を食べないと余計に夏バテがひどくなります。おじややおかゆ、お鍋などにして水分とエネルギーが同時に摂取できるような方法を考えることも重要です。消化器系もある程度暖めることで元気になるので、夏場のお鍋やおかゆはそういった面からもおすすめの調理です。特に過度に冷たい飲み物を摂取することを避けたとしても常温の飲み物だけということもないでしょうから、冷と温とでバランスをとってあげることも重要です。

 そして、睡眠の質が下がることに関してですが、人間は中核体温が下がると眠たくなるように出来ています。ということは、中核体温が下がらないと入眠が困難になるということです。このため、夜や夕方に高強度のトレーニングをやると、入眠が困難になるのですが、夏はそれが顕著になります。運動が終わるとすぐに末端は冷え始めますが、中核体温は数時間上昇したままです。とはいえ、お仕事の関係で夜ランになることもあると思います。そういう時は、しっかりと冷水シャワーを浴びて中核体温を下げてください。おそらく寒いくらいで出てきた方が良く眠れます。あと、クーラーに関してですが、昔はクーラーをつけて寝ると体に良くないと言われることが多かったのですが、一番体に悪いのは眠れないことです。確かに、クーラーで人工的に温度を下げすぎると体に良くないのですが、赤ちゃんを寝かせておいても大丈夫なくらいの温度で寝ることがベストです。それから、実は気温だけではなく、太陽の光の強さも人間の体に大きな影響を与えます。ですから、なるべく早朝か夕方に走るのがおすすめです。

 次にトレーニングについてですが、質と量という観点だけではなく、特異性と一般性という観点を取り入れることが重要になります。例えばですが、真夏に長い距離を速いペースで押していくようなトレーニングを入れれば質も量も落ちるでしょう。これは先述の通りオリンピック選手も例外ではありません。これはレースに近い実戦的なインターバルトレーニングにおいても同様です。一方で、ペースを落として長い距離を走ったり、短い距離を速く走って長めのジョギングで繋ぐような練習なら真夏でもあまり影響を受けずに出来るでしょう。基本的には夏場はそういった練習を重点的に取り入れるべきです。

夏場にレースに出ないので有れば(少なくとも重要なレース、タイムを狙いたいレース、ピーク、もしくはそれに近い状態を持っていきたいレース)がないのであればペースを落として走り込むのとリカバリーを長めにとった短い距離のレペティション(例10x400m/400m)や登坂走を入れると良いと思います。

この意図は単純で高温多湿の中レースに近い負荷をかけてもタイム的にはレースに近いものは出せませんし、慢性的な疲労をため込む原因にもなりやすいので、そこは目指さずに基礎的なトレーニングに取り組むということです。

暑ければ暑いで故障のリスクが下がるという利点もあるので、レペティションをやったり、時には遊び感覚で持久走の後に1000mのタイムトライアルをやったりといった練習も良いと思います。

また年間スケジュールのどこかに休養を挟むとしたらこの時期がおすすめです。どうせそこまで実戦的な練習が出来ないならこのタイミングで一度心身共にリフレッシュして、徐々に基礎練習から積み上げて秋以降気温が下がるにつれて実戦的なトレーニングを入れていくという流れです。

私は市民ランナーの方であっても時にはランニングから離れることも大切だと思っています。理由は重要ではない時期に負荷を意図的に抑えることで重要な時期のオーバートレーニングや故障のリスクを減らすことが出来ることと一度走ることから離れることで再び走ることへの情熱を再認識出来るからです。


 私がケニアでお世話になっていたマッサージガイの方がこんなことをおっしゃっていました。


「いつも妻と一緒にいると妻も冷たくなるが、一か月くらいナイロビに仕事で行って帰ってくると、空港まで迎えに来てくれてハグしてくれる。ランニングもそれと同じでしばらく離れるとまた抱きしめたくなる」

夏場に重要なレースがある場合は夏以外の重要なレース同様実戦的な練習を入れていきますが、それでもやはりタイムを抑え気味にして、必要に応じて距離も抑える必要があります。

理由は夏場のレースはそもそもピークを合わせてもタイムが落ちること、暑さによる疲労は日をまたいで持ちこしやすいからです。世界選手権などは8月でもトラックで良い記録が出ていますが、日本の暑さとヨーロッパの暑さはレベルが違うと思って頂いて間違いないです。ですので、夏に重要なレースが来る場合、順位が全てでタイムは関係ありません。

夏場にタイムを狙うためにレースに出るのは賢明な判断とは言えないので、タイム狙いなら必然的に夏場は精神的にもリラックスして一般的なトレーニングに取り組むのが良いと思います。

こんなところでご質問の答えになっていますでしょうか?

他にもお役に立てることがありましたら、何なりとお申し付けくださいませ。

池上秀志」


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