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米国企業と与信取引を行う上での注意点とは?

皆さん、お元気ですか?

本日は、「与信管理」をテーマにしたシリーズの一環として、米国に目を向けてみたいと思っています。

世界一の経済大国である米国企業との取引を行う上での注意点とは、というテーマで、自分自身の体験に基づき、少しお話をさせて頂きます。

私は前職の総合商社に在籍していた時代に、2回米国ニューヨークでの駐在歴がありました。1回目は入社5年目の実務研修生として1年間、そして2回目は2010年4月から2018年6月末までの8年3ヶ月間に亘る、管理職の立場での駐在員の経験です。

今回は、まず一般的な話の導入部分として、皆さまにお聴き頂きたいのですが、米国と言うと、世界一の経済大国、情報開示も物凄く進んでいて、取引先の企業分析・調査をする上で、何ら情報の取得面で不安のない場所と思ってはおられませんか?

実は、答えは、真逆なんですね。但し、この説明を行う上では、最初に、上場企業と非上場企業の2つに大きく分けて考える必要があるのです。

前者の上場企業については、日本企業以上の豊富な情報量と分厚い説明資料が定期的に発行されて、誰でも目にすることができます。若干の英語力は必要不可欠ですが、辞書を片手に粘り強くトライすれば時間は掛かりますが何とか対処はできます。

さて、では非上場企業はどうでしょうか?

米国なんだから、取引先に決算書のデータの開示を求めれば、どの会社も全く拒絶することなくオープンに開示してくれて、また質問にも適宜応じてくれる、と思っておられませんか?

答えは、Noなんです。

実は、日本の非上場企業以上に、米国の非上場企業の決算関連のデータは原則非公開が徹底されていて、所謂信用調査機関による調査書(代表例はD&B report)でも、社名、本社所在地、業種、代表者名(役員陣容)、資本金の金額程度しか掲載されておらず、業績推移等の数字は全く分からないのが普通なのです。因みに、日系企業でも、在米国の企業の場合は、基本的には決算書を入手できないと思っておいた方が無難です。

では、どうやって、その米国の取引先である非上場企業の財務内容を把握するのでしょうか?

具体的な対処法は以下の2つがあります。

1)営業部に同行して訪問調査を実施し、その会社の経理担当責任者と面談   の場を設営してもらい、推定バランスシートを自身で作成できるように、個々の聞き出し易い財務データを話の流れで聞き出すこと。

2)米国の信用調査会社に、特別オーダーに基づくレポートの発注を行い、ある程度の費用を掛けて、間接的に調査してもらうこと。(但し、調査の結果、決算の数字が必ず判明するとは限りません。)

斯様に、実に閉鎖的な世界なのです。

そこで、米国での与信管理上、重要視されるのが、会社の支払い振りのパフォーマンスです。要は、調査会社がその対象企業の取引先に対する支払実績をデータ上で調べ上げ、「PAYDEX」という風にスコア化して、そのスコアを信用調査レポート上に開示されるケースが結構多くあるのです。

会社の決算データの入手が困難な中で、この支払い振り(PAYDEX)が重要視されるのも必然の結果なのかもしれません。新規取引先ではない既存の取引先などについては、過去の取引実績と共に、この支払い振りを記録に残して、与信判断に役立ているケースがかなり目立ちます。例えば、取引増額の申請が社内で出てきた場合には、取引開始以降のその取引先企業の支払い振りを示すレコードが非常に重要な役割を担うことになるのです。

私自身の体験を披露しますと、実務研修生時代に、インストラクターを務めて頂いた先輩駐在員と2人で訪問調査を実施した際に、上記で触れた推定バランスシートの作成を試みたことがあります。目から鱗で非常に勉強になりました。それ以降、訪問調査の時の質問の仕方、キーポイントになる数字の聞き出し方について、工夫を凝らすようになりました。これはその後、日本に帰国してからも同じように試みるようになりました。そのキーポイントになる数字については、後日またここで披露させて頂きます。それにしても、米国の場合は、定期的な訪問調査の実施の重要性が、とりわけ高いというのが特徴であります。

そしてもう一つ、米国の非上場企業でも、決算数値を把握するチャンスがあるということを、最後にお伝えしておきたいと思います。

それは、増資実施等の株式発行を行う際に、その会社が投資家向けの説明資料として当局経由で発行・開示される「目論見書(prospectus)」になります。これは、極めて内容の充実した資料であり、過去10年程度の業績推移も詳しく開示されているケースがありました。投資家重視の姿勢を重んじるアメリカらしいスタンスだと思います。勿論、日本でもありますが、資料の充実度合いが段違いに異なります。従い、非上場企業でもその対象企業において、過去増資等の株式発行を実施した実績がある会社であれば、その企業名でデータ検索して調べ、その過去の目論見書(prospectus)を読み込めば、全くの別世界が目の前に広がってくるということです。

米国企業を侮るなかれ、世界一の経済大国であり先進国であっても、非上場企業の決算・財務データが簡単に取得できない世界がそこにある、どうか皆さま、その点だけは、肝に銘じておいて頂きたいと思います。

次回、また与信管理シリーズでお会いしましょう。

Rユニコーンインターナショナル株式会社

代表取締役 髙見 広行