旅心
そこには見知らぬ景色と見知らぬ人がいる
湿気を含んだ大きな空気の塊に太陽の光が閉じ込められている
背の高い楠が青々を繁っている
素敵な娘と逢引の約束を交わす
役場の扉を出ると生暖かい空気に入り込む
この町には結界が張られているみたい
何を守っている
私は異物だ
この町を脅かしてはいけない
透明になって礼儀正しく通過せなばならない
あの娘は来るだろうか
あの娘を見知ったとき私はただでは帰れなくなる
結界に些細な風穴を開けてしまう
気づかれないでいられるであろうか
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