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手帳ミステリー SOSEIの手帳4

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手帳ミステリ SOSEIの手帳3|Rukawa.Nagamasa (note.com)

DAY2 (本当はDAY4): 深海蒼生

「すいません。今日ちょっと熱があるみたいで休ませてください」

と、会社のSlackにメッセージを入れる。

朝九時前。始業開始前にもかかわらず、社内の人から、お大事にとかゆっくりといったスタンプが押される。

メールが少なくなったとはいうが、むしろコミュニケーションツールがチャットに近くなったおかげで、チェックしている時間や回数はむしろ増えた気がするが、便利なツールだ。昔は緊張しながら電話していたと聞いたことがあるが。

昨日の衝撃の展開を受けて、今日は部屋に篭ってこの手帳の対策をすることに決めた。仕事は昨日で一旦一区切りついたはずなので、ま、いいだろう。

まずは、外国語たくさんのページを理解することにトライしよう。
幸い最近のスマホは写真を撮れば勝手にと言わないが精度良く翻訳を行ってくれる。

しかし、これが難航した。
文庫サイズのような小さいページの中に、いろんな言語の言葉が入っているのだ。英語だと思えばフランス語、スペイン語、ラテン語、ハングルやロシア語、アラビア語も入っている。パッとみると人間は見慣れた言葉にフォーカスしてしまうものらしい。なんとなく全部、英語に見えてくる。見えてきてもまったく意味は分からないのだが。

大枠、最近のIT業界のことが書いているようだ。ビットコインなどの暗号資産の相場の話、暗号資産を成立させている技術的なブロックチェーンなどの仕組み、マイニングのコスト計算などが入っているようだ。人並み程度以下の理解だと大枠そんな話のようだ。

気になるのはロシア語に入ってた占領、独占、破壊などの言葉。これもウクライナ侵攻の時事問題なのだろうか。

もし、ブロックチェーンの破壊とかだとすると、ヤバい話だななんて想像を掻き立てられたが、ま、そりゃ無理でしょと、気分転換にコーヒーを淹れようとキッチンに向かった。

引いたコーヒー豆にお湯を少しずつかけて蒸らしを行う。コーヒーから香ばしい優しい香りを楽しみ、ぷくっと膨らんできているさまを見ながら、これからどうしたものかと考える。

このよくわからない多言語ページには解くべき謎はない気がする。

こんな時はスタートに戻ることが最善のはず。

最初の謎。
なぜ、この手帳が俺の手元にあるのか。

答えは、俺の持っているものに瓜二つだったからだ。そんなことが偶然起きるはずはない。それくらい手帳の種類も多いしペンとの組み合わせとなるとこんなにきれいに一致する可能性は限りなくゼロに近い。

であれば、誰かがこれを自分に間違って手に取らせたかったはずだ。
問題はそこだ。なぜ、俺にこの手帳を渡したかったのか。マンガとか映画とかであれば、命を狙われている人が誰かに託すためにカバンをすり替えるみたいな話は見たことがあるが、手帳でそれをやるのはかなり計画的にやらなければ難しい。使っているうちに個性が出るからだ。

つまり、これは計画的に練られたものの可能性が高い。とすれば、この手帳の中に何かメッセージが入っているはずなのだ。正直にそれとわかるものはなかった。。とすれば、暗号? いささか、マンガの見過ぎかもしれない。

考え事をしている間に、いい香りを放つ黒い液体が出来上がった。そのカップを持ち上げ、手帳に戻る。もし暗号があるとするなら。。。
もう一回手帳を最初からめくっていく。

気になるものがあった。俺が手帳を間違えた要因は大きく3つ。外見の経年変化が似ていた。ペンがホルダーまで同じ。そして使っているマンスリーが一緒ということだ。マンスリーと呼ばれる見開きで1か月を確認できるシート。俺と同じく翌月の七月まで入っている。なぜ瞬間的に同じだと分かったかと言えば、少しはみ出たインデックスが特徴的な形だからである。中を見ると、1月~6月までのページには、出張やら会議など手帳ぽい予定が書きこまれているほかに、丸数字がいくつかの日に入っているが、順番がばらばら。
1月だと①は20日、②が15日、③が11日とさかのぼったかと思うと、④は25日。⑤は1日と5日について、⑥が19日だ。


じっくり見ると、同じペンで書いているように見える。そういえば、マンスリーページはなんどもみかえすはずなのにページの過度のヘタレもないし、一気に書き上げたように見えなくもない。
②と③の順番が逆転していることもきになる。

このページは何かあるのかも。暗号の場合だと、、置き換えか。。
一番簡単なのはアルファベット?
だとすると20って、A, B, Cと口ずさんでみるが、、、毎回やると時間がかかりすぎる。
とりあえず対応表を作ったほうが早そうだ。 1~26数字をふって、Aからアルファベットを振っていく。
この対応表に照らすと
①20=T, ②15=O ③11=K ④25=Y ⑤1=A ⑤5=E ⑥19=S
つなげると、 TOKYAES ときゃえす?
後半だけみると やえす=八重洲と読めなくもない? 東京の八重洲? なのか?
とりあえず同じように6月までの数字をチェックしてみよう

それぞれ、みていくと、


2月 ①25=Y ②14=N ③15=O ④18=R ⑤20=T ⑥8=H
3月 ①12=L ②15=O ③3=C ④11=K ⑤5=E ⑥18=R
4月 ①2=B ②9=I ③14=N ④1=A ⑤18=R ⑥25=Y
5月 ①6=F ②15=O ③21=U ④18=R  ⑤20=T ⑥8=H
6月 ①6=F, ②11=K ③16=P ④24=X ⑤4=D
つまり、
2月= YNORTH
3月= LOCKER
4月= BINARY
5月= FOURTH
6月= FKPXD

となる。3月から5月まではちゃんと英語になっているな。

この5か月分をみると1月の⑤も1文字になりそう。1と5それぞれじゃなくて15だとすると 1月=TOKYOSになる。

1月= TOKYOS
2月= YNORTH
3月= LOCKER
4月= BINARY
5月= FKPXD
6月= FOURTH

どういうことだ?

TOKYOSのYNORTHのLocker?

東京駅(TOKYO Station)の八重洲(Yaes NORTH)の北口のロッカー(Locker?)

Binaryってなんだ。2進数?
Forthって四番目? 2進数の番号の4番目のロッカーなんだろうか。
FKPXDはさっぱり分かんないけど。少なくとも、東京駅のロッカーを見に行くか。

あれ、ロッカーってことは、鍵が必要では?鍵がどこかにある?鍵の情報がどこかにないか、色々探してみたが、結局見つからず。気になったのは名刺だけど、よくわからなかった。

そのあとググってわかったのだが、駅のロッカーはSuicaが鍵がわりになるらしい。
しかし、Suicaは手帳の中に入っていなかった。もちぬしがもっているのか。ということは、直前の持ち主も謎を解く側の人間だった可能性がある。もちろん、持ち主が田中一郎本人の可能性だってある。何度か手帳を見返したが、鍵に該当しそうな情報は行き詰まってしまった。

自分の手帳に今の状況を書き出していく。チャンスがあるとしたら、手帳の持ち主となくなった田中さんが別人(謎を解く側)で、手帳を探している人間で、今、会うことができる場合だ。そうすると、鍵は会社近くのスタバか。明日か明後日くらいにいいが。

流石に今日は休んでしまった手前、明日にしよう。今日はこのまま、溜まった仕事を片付けることにしよう。

*****************
DAY4 響直人

手帳が盗まれたスタバに来てみたが、やっぱりその手帳を持っている奴はいない。先輩から与えられた期限は後3日と半日くらいなのに。
とはいえ、鍵はこのスタバくらいしかない。

明日もう一日ねばってダメだったら、先輩に連絡しよう。
大きなため息をつきながら、持ってきた本に視線を送る。

お店に入ってくる人たちが気になりすぎて、内容は全くあたまにはいってこないのだが。
夕食後くらいの時間になり、人が集まり始めた。今日はダメだなと、あきらめて帰ることにした。

つづきはこちら
手帳ミステリ SOSEIの手帳5|Rukawa.Nagamasa (note.com)


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