手帳ミステリー SOSEIの手帳2
Day 1: 響直人
やっちまった。
大事な手帳が盗まれた。全然訳がわからなくて場所を取るために手帳を置いておいたら、急に電話。マナーと思って外に出て電話を受けていたら、戻ってきた時には、すでに手帳はなく、知らない人が座っていた。
聞いてみたが、手帳どころか店員の人が席を拭いていたから座ったのだと、やや逆ギレ気味にいわれた。
店舗のスタッフも誰もみていないと。
先輩から預かった大事な手帳なのだが。
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そもそも話は2日前に遡る。日曜日の午後、大学時代の先輩が三年ぶりくらいに連絡が来た。確かテレビ関係の仕事をしていたはず。
久しぶりの食事の誘いだった。大学時代によく行っていた懐かしい居酒屋で先輩と会う。しっかりひげを伸ばし。長髪を後ろで結んでいる。これが業界人というやつか。30分くらい雑談しながらビールを2杯くらい飲み終わったところで、先輩から
「直人、面白いバイトあるんだけど、やらないか」と声をかけられた。
「もしかして、ヤバいやつですか?」
恐る恐る聞いてみる。先輩に言われたら、断りにくい。それくらい先輩のおかげで大学を卒業できたと言っても過言ではないくらい何度も助けられている恩人なのだ。
「ばーか。俺は今の生活に満足してるさ。そんな危ない橋わたるようなことするわけないだろう。」
そう笑って、自分のカバンを持ち上げ、一冊の手帳を取り出した。グレーのような緑のような革の手帳。先輩、昔こんなの持っている人じゃなかったのに。
「これの中に重大な謎がある。この謎を解けたら賞金が出るって仕組みだ。」ニヤッと笑いだす先輩。
「謎解きってやつですか。でも、俺そういうの苦手なの知ってますよね。」
本当にロジカルみたいなのが大の苦手。大学の試験だって、周りのヘルプと選択式のテストをなんとか感で切り抜けてきたタイプなのだ。
「期間は1週間。謎が解けたら教えてくれ。ここ、俺出しておくからすきなだけいていいからさ。仕事あるからもういくな。」そう言い残して、足早にいってしまった。なんともマイペースな先輩。昔から全然変わっていない。
残された俺と手帳。
なんで手帳?
とりあえず手帳を持ち上げてみる。文庫くらいのサイズの手のホールド感がちょうど良い手帳だ。ストッパーの中に2本ペンが刺さっている。どちらも高そうだ。市販の使い捨てのようなペンしか使ったことがないので触るのも躊躇われる。
パラパラのページをめくってみた。ほとんど訳がわからない。
最初の方に海賊漫画の切り抜きがあったのと、、最後の方にも漫画の切り抜きが貼ってあったくらいしかパット見わかるものはない。
表面のポケットには名刺が何枚か入ってる。これが謎解き?名刺は全部で9枚うち5枚は同じ人。あと4枚は別の名前が書いてある。裏側のポケットにはSuicaが入っていた。今は、カード発行も止まっているはずだけど。手帳の中身を再度パラパラとめくるが、謎なんてどこにもない。
しいていえば、海賊漫画のあのワンフレーズか。
『おれの全てを置いてきた。探せ』
どこに?
それを探せと。手帳の中か。それとも手帳本体か。
無理だ。 そんな言葉が頭をかけめぐる。
何故かいっつも、トラブルに巻き込まれる。いわゆるトラブル体質なんだとおもう。いつも自分ではどうしようもなくなって誰かが助けてくれるのを待つだけだ。会社でも同じ。結果、周りのメンバーは俺を助けることで活躍して表彰したり、出世していった。
今回は1人きりでどうしたらいいか、さっぱりわからない。
とりあえず先輩の奢りと言うから、追加でハイボール3倍、高めの肉料理を頼んでその場を後にすることにした。
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手帳ミステリ SOSEIの手帳3|Rukawa.Nagamasa (note.com)
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