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作品集

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ネット物書き・御子柴流歌が書いたモノを集めてみました。
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#短編小説

【小説】『純潔守って死ねるかよ・急』(後書き・解説有り)※R-15【短編】

前書き 短編です。  ラブコメです。  タイトルはアレですが、エロはありません。  ただし直接的な表現を入れているので、R-15 くらいかもしれません。  こちら、3部構成のラスト、「序破急」の『急』です。  また、最後には後書きと解説がありますので、よろしければそちらもぜひ。  なお、『序』・『破』を未読の方は必ずそちらからお願いします。 序 破 登場人物について ・一生《いっせい》:主人公、大学院生(博士課程) ・姫星愛《きらら》:(たぶん)ヒロイン、JK

【小説】『純潔守って死ねるかよ・破』※R-15【短編】

前書き 短編です。  ラブコメです。  タイトルはアレですが、エロはありません。  ただし直接的な表現を入れているので、R-15 くらいかもしれません。  こちら、3部構成の真ん中、「序破急」の『破』です。  第1話である『序』はこちらです。  未読の方はこちらからどうぞ。 登場人物について ・一生《いっせい》:主人公、大学院生(博士課程) ・姫星愛《きらら》:(たぶん)ヒロイン、JK 破: 『守ったままで死ねるかよ』 俺が姫星愛を初めて見たのは、とある春の金曜日。

【小説】『純潔守って死ねるかよ・序』※R-15【短編】

前書き 短編です。  ラブコメです。  タイトルはアレですが、エロはありません。  ただし直接的な表現を入れているので、R-15 くらいかもしれません。  3部構成です。  まずは、『序』をどうぞ。 登場人物について ・一生《いっせい》:主人公、大学院生(博士課程) ・姫星愛《きらら》:(たぶん)ヒロイン、JK 序: 『会いたい』 いつもなら既読無視されるはずだった深夜のメッセージにスタンプがひとつ返ってきて、すぐに俺は姫星愛に「会いたい」と返した。 自分ができる

【短篇小説】 『ベーリー・オクルス王宮廷の無愛想な猫』 【#猫の日】

ベーリー・オクルス王宮廷の無愛想な猫便利屋稼業  大きな河のほとりにあるこの街は比較的過ごしやすい気候だという。エアコンのような類いのモノなんて無くても楽に過ごせるという事実は、寒暖差に弱い俺としてはとてもありがたい話だ。流れ着いたのがこの街だったことは幸運だった。  そんなことを思いながら、俺は外を見ながら紅茶を楽しむ。  見た目はいわゆるハーフティンバー様式だが、その実態をざっくばらんに言い捨ててしまえば3階建ての雑居ビルのような建物。それがいくつも立ち並ぶエリア。

『ヌーヴォーとヴィンテージ』【#短編小説】

 ――むしろ『超短篇小説』かもしれない。  っていうか、そうだね。  1000文字すら行ってないです。 『ヌーヴォーとヴィンテージ』 「んーっ! うぉいしーっ!」 「『うぉいしい』の?」 「そ。ただの『美味しい』との差別化、的な?」  食後のバニラアイスに舌鼓をうつ彼女の頬は、アイスよりもよく溶けていた。   お気に入りのそれは、乙女のなんとやらなどを考えた上で週3回を限度にしている。  毎日食べるよりも喜びが大きくなるらしい。 「なによ。その顔」 「なにが?

『眼鏡越しのあなたと私』【#短編小説】

あらすじ  暮れなずむ空、教室。  イイ雰囲気、のはず。  ――「カワイイなぁ、って思って」  そんなことを言う彼の視線は、やっぱりちょっとメガネに行ってる。  これは生粋のメガネ女子と生粋のメガネフェチによる、夕暮れ時のひとコマ。 その想いが ちからをくれる 「ちょ、ちょっと待って」 「ん? 心の準備?」 「あの、えと……。うん、そんな感じってことで」  小さい頃から、私は視力は悪かった。  そのおかげで小学校に入るかどうかという頃から、眼鏡は私のパートナーだった。

『珈琲は月の下で』【#短編小説】

貴女と飲むのは、これがいい。 「ふぅ……」  ちょうどお客様の流れも途切れた、カフェスタイルのバー。お昼とされる時間はコーヒー系をメインに、夜とされる時間帯はお酒をメインに提供するスタイルのコーナーだ。  カウンターのやや奥まったところで、鋭く、だけど小さく一息つく。傍からは気づかれない程度に背筋を伸ばしてみれば、関節も何度かぱきぱきと一心地つくような音を立てた。  かれこれ一週間もこうしていれば、朝も昼も夜もよくわからなくなってくるものだ。それはこうしてカウンターの内

スカーレットと夏霞【#短篇小説】

その先で、ふたりが聴く音  かつり、こつ。こつり、かつん――。  わずかにタイミングが合わないボクらの靴音が深夜の街に響いて、日付変更線を越えるよりもはるかに早く、再び落ちてくる。  だけどそれは相見えることは無くって、落ちて転がって背を向け合っていた。  終電にはまだ時間があるとはいえ、残された時間はそれほど多くない。  夏純《かすみ》は少しだけ気怠そうに闇を横目に見ていた。  隣を歩く夏純との約束を果たすためには、どの辺りで口を開けば良いのだろうか。  昔の彼女に

Humanity Dance【#小説】

プロローグ: さながらUTOPIA(ただし続けるとは言ってない)  経年的な老朽化が見えながらも、整備はしっかりと行き届いている関節を、それでもギリギリと言わせながら飼い主の傍らを歩く『犬』。  そんな犬に向かって、シリコンカバーを付けてもらっている『犬』が吠えかけている。  天気も良い昼間の公園は、いつにも増して騒がしいように見える。  不思議に思ったが、よく考えればノイズキャンセリング機能が全開になっていた。  いつもの癖だった。  さすがに外でこれはマズいの

マーガレットの悪夢【超短篇小噺】

『マーガレットの悪夢』 「好き、嫌い……。好き、嫌い……。好き、嫌い……」 「……」 「好き、嫌い……。好き!! ボクのこと、好きなんでしょ!?」 「……いや。その結果が出るまで花をむしり続けるようなオトナは、ちょっと」 「そんな!」 「っていうか、ふつうマーガレットの花びらって奇数枚なんだけど。そんなに偶数のモノばっかり見つけるっていう、アンタの運の悪さもどうかと」 「それはさすがに理不尽!」 「それはアンタに毟られ続けた花のセリフだわ!」 あとがき  い

買い物は「そのとき自分が、どれだけ満足できたか」にかかってくるものなんだ【#超短篇小説】

ポイントカード・シンドローム 「いやぁ、得したー」 「何が」 「コレ買うと、今ポイント還元2倍だって言うからさ。この前から気になってたし、思い切って買っちゃったんだよね」  袋の中を覗けば、おそらくはメイクアップ用のアイテム。  ちょっとした機械っぽい代物だった。 「またポイントたまってきたしー。今度は何と引き換えようかなぁ」  ほくほく顔で袋の中身を見ているカノジョには、しばらくの間何も言わないでおこう。  さっと検索して、わかってしまった。  カノジョが買

青藍スフィア 【#短編小説】(& 100日連続投稿)

『青藍スフィア』  2020年、夏、真っ盛り。  ギラギラと照りつける太陽が肌を焼いていくのがわかる。  マスクの端の方もじっとりと湿ってきていた。  正直言って外してしまいたい気持ちはある。  けれどきっとそれをしてしまうと、目も当てられないような状況が  いつもの夏ならば――。  今頃はグラウンドを走り回る部員たちを眺めながら、仕事に作業に準備にと、何かと忙しかったはずだ。  たまに飛んでくる他の部活の声やボールにも気を付けながら、あいつらのことを目で追い続けてい

被写体 【#超短篇小説】

『被写体』  ――――今から少し前。  お前を撮らせてくれ、と言われたときの写真が現像できたということで見せてもらった。  わざわざそんなことしなくても液晶越しでもいいのに、と言ったが聞かなかった。  いざ、ちょっと上質な用紙に現像されたものを出されると、すこし恥ずかしさのようなものが湧いてくる。 「我ながら、イイ出来だなぁ」  私が気もそぞろに写真を見つめている傍から、ひょっこりと顔を出すようにして自画自賛した。 「やっぱ、被写体がイイからだな」 「やめてよ。…

Last Letter, Love Letter 【#短篇小説】

"Last Letter, Love Letter" 「それじゃあね」  そう言って彼女は涙も拭かずに背を向け、少しだけ高いヒールを鳴らしながら駆けていった。  果たして、封筒ひとつを手に持ったまま「うん」と頷いた僕は、彼女の視線に収まっていたのだろうか。きっと、ピントも合っていないだろうし、手ぶれだってひどいはずだ。もう彼女の中には、僕を収めておけるくらいの隙間なんてありやしないのだ。  もう一度だけでも話をしよう——。  そんな考えは、結局甘いのかもしれない。  せ