目は口ほどに 〜「好きな人に『好きだ』と言わずに『好きだ』と伝える短篇集」より〜
『目は口ほどに』
「どうした? さっきからずっとこっちばっかり見てるけど?」
「……イヤ?」
「イヤではないけど」
今は信号待ちの最中だから別に問題はない。
歩いているときは前を向いておいた方がいいと思うのだけど、どうも彼女はこちらというより、確実に僕の顔ばかりを見ている。
ちらりと視線をそちらに向けると、逸らすというわけではない。
むしろさらに強烈に僕を、僕の目を見てくる。
視神経にまでつながろうとするような目力だ。
くりっとしたブラウンの瞳に吸い