マガジンのカバー画像

過去の日記転載シリーズ

25
2006年ごろから2011年頃までの過去の日記をまとめています
運営しているクリエイター

2020年9月の記事一覧

「音楽」にみる 2009年1月14日

三島由紀夫の「音楽」を読んだ。 今朝方まで椎名誠を読んでおり、昼に逢坂剛を読んだ私は、三島由紀夫を読む頃には 一日に天国から地獄に落ちたような、それぐらいの急激な変化を受けた。 椎名と逢坂は同時期に生まれているにもかかわらず、 それこそ天と地ほどの性質の違いがある。 が、どちらも私のこころにとてもひびくものがあり どちらかというと三島はそのどろどろとした文体で 真実のものをありのままに描いており 椎名誠の日記のように簡潔でさっぱりとした文体は、 実は私にとってはとても雲の

ドリンク 2007年12月12日

その瞬間、安堵が流れ込んだ。 安堵、とも、嬉しさ、ともとれないけれど、 ただその瞬間、涙が止まらなくなった。 自分が怒っているのか、嬉しいのか、安心したのか、 わけが分からなかったけれど とにかく、人はみんな一人一人、抱えているものがあって でもそれは全部、つながっているということを 体全体で感じた。 どんなに頭で割り切ろうとしても割り切れないものが あるんだ。きっと。 浮かんだイメージは、喉に流れ込む液体。 私はそれをごくごくと飲む。 これだ、欲して

見えないドラマチック 2009年3月20日

ドラマチックには、見えるものと見えないものがあると思う。 見えないドラマチックは、こころのどこかにふたをしてあって だけどどうしても時々、あふれ出す。 ドラマチックだから、あふれ出さずにはいられないときがある。 それは時々病的で、不健全で、もろくて危うい。 見えるドラマチックは、実にヘルシー。 好きなときに好きといえる、好きなものを好きといえる、 感動したときに叫べる、泣きたいときに泣ける。 健康的。                 * 天気がよくてあったかい日が続くと

特別な244049 2009年3月4日

24時40分49秒をさしたまま、時計が止まっている。 12時40分49秒でもいいんだろうけど、たぶん、 ほとんどたぶん、それは24時40分49秒だろうと思う。 とまったまま、時計が忘れられている。                    * 24時間の中のとある時間に、特別な感情をもつことがあります。 いや、特別な感情を持つ「時間」というものが 1日の中にいくつか、あるのです。 たとえば、6時50分。 小学校高学年のとき、その時間に家を出ないとバスに間に合わなかった。 だ

見当違いに愛を 2011年2月4日

今でも時々思い出してギュッと抱きしめたくなる 甘くて苦くて濃厚で それでいて とても見当違いな方向に向かっていた 愛の時代。 見当違いであることに気がついていなくて 盲目で でもだからこそとても愛おしい 甘い時間だった 一番私を甘えさせてくれた人たちのこと バランスをとりながら高いところを よろよろ歩いていると ちょっと手を貸してくれて それだけできゅんとなっていたけど きっと今では ムスコをだっこしながら歩いていて 少しバランスを崩したとしても 私よりムスコに誰もが手

ほんの少しの、水で 2009年02月24日

黄色いガーベラを買った。 ガーベラはピンクのイメージだったけど 今日はどうしても黄色いガーベラがよかった。 白い花瓶に刺すと、部屋は春の匂いになった。             * 春は、むこうがわから優しく包むようにやってくる 冬は、迫るようにやってくる 春は、雨が多くて、一雨ごとに暖かくなる 冬は、きんきんに晴れて澄んだ空気が突き刺すよう でもきっと、春も冬も、女の子だと思う。 季節はみんな、女の子だと思う。 私は9月生まれだけど、9月の通り雨のようだと、言われたこと

スラムドッグ 2009年5月9日

のどに詰まる片栗粉のように あたたかいベッドから キレイな部屋を見渡して 途切れるような息をして 声にならない叫びを押し殺し 空回る指先を泳がせる そうそれは片栗粉を食らうよう 野良猫と野良犬の違いは 野良猫はそれが自然体で 野良犬はそのまま狼になること スラムドッグ それは狼になりうる存在 だからミリオネアになれるのです スラムキャットか スラムドッグか どちらにもなりきれず 夜明けの青白い空の下で 腹いっぱいになったままくたばるのだけは ごめんだと そう思いながら ス

デイドリーム 2009年5月7日

あなたが悪いのよ あなたが悪いのよ ああ あなたが悪いのです どしゃぶりを食べてしまいたい ええ いっそのこと どしゃぶりなど食べてしまえばいいのです ぼくは ぼくの名前を知らない ただ春になったら顔を出し モンシロチョウとくすぐりあって そしてただ時がきたら 花を咲かせる ただそれだけ ああこれだから あなたは何も分かっちゃいない あなたが悪いのよ おいおい、おいおい ああ あなたが悪いのです どしゃぶりを食べて おひさまを抱きか

うつくしい人 2009年07月28日

汗をびっしょりかいて眠ったら お母さんが心配してくれた 心配してくれる人がいるのは嬉しくて ずっとずっと熱が出ていればいいと思った 自分の手足の感覚や動きがおとぎ話のようで まったくウソのような感覚 引っ越すなってことじゃないの、 と言いながら、とうとう寂しいことを認めたお母さんは ノースリーブのピンクのブラウスに 黒いネックレス、黒いパンプス 黒いネックレスなんて珍しいね? というと じいちゃんが昔買ってくれたのよ じいちゃん、とはてっきり自分の父親かと思ったら お父