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マニアAの失踪

       マニアAの失踪

薄闇に包まれた森の奥深く。その中に消えたマニアAを探し続ける私は、再びあの場所に向かう決心をした。森の中を進むにつれ、奇妙な違和感が増していく。まるで木々が何かを語りかけてくるかのようだった。

ふと、視界の端に何かが動いたように感じた。青いドレスに身を包んだ少女が、突如として姿を現したのだ。彼女の目は虚ろで、その瞳の奥には無限の闇が広がっているように見えた。

「あなたも、彼を探しているの?」少女の声は冷たく響いた。

「そうだ。マニアAを知っているのか?」私は彼女に問いかけた。

少女は微かに頷き、「彼はあの廃屋に引き寄せられ、戻れなくなったの。あの場所には、人の心を喰らう何かが潜んでいる」と答えた。

「どうすれば彼を助けられる?」私は必死に尋ねた。

少女は不気味な微笑みを浮かべ、「答えはそこにある。廃屋の中、箱の中に封じられたものを解放してはならない」と言い残し、闇の中に消えていった。

私は彼女の言葉を胸に刻み、再び廃屋へと向かった。中に入ると、以前のまま荒れ果てた光景が広がっていた。奇妙な祭壇の前に立ち、黒い布で覆われた箱に目を向けた。

「これを開けてはいけない」と自分に言い聞かせながら、マニアAを呼んだ。しかし、返事はなかった。

その瞬間、背後から冷たい風が吹き込み、部屋が一瞬で暗闇に包まれた。再び箱の中から呻き声が聞こえ、何かが這い出てくる音が響いた。

「彼を助けたいなら、私を解放しろ」と囁く声が耳に届いた。私は恐怖で動けなかったが、マニアAを思い、勇気を振り絞った。

その後の記憶は曖昧だが、気が付けば再び山のふもとに立っていた。マニアAは見つからなかったが、心のどこかで彼がまだ廃屋に囚われていることを感じている。

あの場所には、何か恐ろしいものが今も眠っている。そして、それが完全に解き放たれる時が来るかもしれない。その時、何が起こるのか、誰も知る由もない。




        異様な再会

数週間後、街中で偶然、青いドレスを着た少女を再び目にした。その瞳の奥には、変わらぬ闇が広がっていた。

「彼の消息は掴めたの?」彼女が冷たく尋ねた。

「いいえ…まだ見つかっていない」と私は答えた。

少女は薄笑いを浮かべ、「あの廃屋に囚われた者は、もう二度と戻れないのよ」と囁いた。その言葉に背筋が凍りついた。

彼女が去った後、ふとポケットに手を入れると、そこには見覚えのない古びた写真が入っていた。写真にはマニアAが写っており、その表情は恐怖に歪んでいた。背景には、あの廃屋が不気味に佇んでいた。

その日以来、私は廃屋の恐怖を胸に刻み、決して近づかないことを誓った。しかし、マニアAの行方は未だに分からず、彼が今もどこかで助けを求めているのかもしれないという思いが、私の心を苛み続けるのだった。

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