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新しい船出へ

前回の出来事から2年が経ち、覚悟と決意の初夏、わたしはバッサリと髪を切ったのだった。


「どうして切ったの?」には自虐を込めて「失恋したから」と答えていた。みんな笑ってくれたのは呪縛が解けたわたしに安心してくれたからだと思う。

ほんとは何年もずっと切りたかった。ショートヘアは自分には自由の象徴であった。

初めて行く美容室を選んだ。お店の名前は『かもめ』。当時はまだInstagramにマネキンをカットしたりセットしたりした画像ばかりを載せている新しいお店で、餞にぴったりだった。予約の電話を入れたら意外と若めの男性の声が聞こえて、潔く切ってくれそうな気がした。

「首の後ろ、焼けないように気を付けてくださいね。」
マスターは優しく言ってくださったけど、日焼け上等!開放感でいっぱいだった。

『穏やかな空に お別れの風船
ほら、耳の先では汽笛の音』

新しい船出は自由という切符を持って。聞き馴染んだフェリーの汽笛が癒やしと勇気をくれる。今持つ荷物はまだ重いけれど、少しずつ解いて軽やかに生きたい。