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30冊目:さよなら神様/麻耶雄嵩

こんなミステリーってあり?!
~孤高の天才ミステリー作家が辿り着いた境地に震撼

本日ご紹介するのは、超問題作ミステリー「さよなら神様」です。
昨日の投稿を読んで、本格ミステリーの紹介はひとまず打ち止めなのかなと思った皆さん、甘いです!笑
本日はこれまでで最も強烈なミステリーをご紹介したいと思います!

さて、みなさんは麻耶雄嵩さんというミステリー作家さんを知っていますか?
この作家さんは、一言でいえば「ミステリー界の求道者」だと思います。
大衆ウケなど全く眼中になく、ただひたすら他の誰にも書けない唯一無二の強烈な作品を追求し続ける、異端のミステリー作家さんです。
とあるブログで「東野圭吾にマイナスをかけると麻耶雄嵩になる」と紹介されていて、まさに言い得て妙だと笑いました。

自分は、ミステリー好きの親友から「隻眼の少女」を渡されてこの作家さんを知ったのですが、あまりにも予想外のラストに膝から崩れ落ち、まんまと3日間くらい引き摺ってしまいました!
それくらいすさまじいインパクトがありました!
この方の作品はどれもこれもアクが強く、非常に捻くれまくっているので、読んだ方は「こんな小説、二度と読むか!」と思いっきり投げ捨てるか、「神!!一生ついていきます!!!」と敬虔な信者になるかのどちらかかと思われます。笑

さて、そんな孤高の天才ミステリー作家・麻耶雄嵩さんの作品の中でも、特に衝撃を受けたのが、本日ご紹介する「さよなら神様」。
この作品は、久遠小学校5年生のメンバーで組織する久遠小探偵団が、街で起こった殺人事件の謎を解く連作短編集ですが、どの短編もなんと1行目で犯人の名前が明かされてしまうんです。
そして、その犯人の名前を教えてくれるのが、なんと「神様」!!
そう、この小説では、同じクラスに「全知全能の神様」がいるという設定で、どの短編も「犯人は〇〇だよ」という彼の託宣から始まります。
ただ、この小説の肝は、神様が教えてくれるのは「犯人の名前のみ」という点。
そして、神様から告げられる名前はどれもこれも絶対に犯人ではあり得ない人物ばかり。
しかし、神様のご宣託は常に絶対的であり、探偵団のメンバーは「どうすればこの犯人が犯行を犯すことができるのか」を検証するという、かなり斬新なミステリーとなっています。

そして、そんなこの作品が凄まじいのは、この斬新な設定を見事に活かしきって、とんでもなく予想外かつ衝撃的なラストへと読者を連れていってしまうところです。
この設定でないと絶対に成立させられないトリックの数々はまさに既視感ゼロで、他の小説では見たことのないものばかり。
ミステリー界の未開地を開拓し続ける麻耶雄嵩さんが、ついにすごい境地に辿り着いてしまった作品だなと感じました!
はじめの3編で読者がこのフォーマットに慣れた頃に、思いっきりフォーマットを崩して、一気に読者の予想を裏切ってくる構成も完璧すぎます!
特にラストの3編はあまりにもトリックが神懸っていて、どうやったらこんな展開を思いつけるのかと震撼してしまいました。
全くどうなるか先が読めず、ページを捲る手が止まらない、国内最高峰のミステリー小説のひとつです。

そして、この作品のもう一つの特徴は、あまりにもなバッドテイストぶり。
麻耶さん独特のとっても嫌な気持ちになる後味の悪い作風が堪能できる一冊です。
いや、それにしても麻耶さん、このラストはさすがに意地悪すぎますよ~~!笑
 
かなり読者を選ぶ作品だと思いますが、ここまで研ぎ澄まされたミステリーはちょっとなかなかお目にかかれないと思います。
ミステリー好きほどハマる作品だと思うので、ぜひ試しに麻耶雄嵩さんの独特な世界に足を踏み入れてみてください。

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