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23冊目:月の扉/石持浅海

こんなクローズドサークル見たことない!
神秘性と論理性を兼ね備えたハイジャックミステリー

ミステリー紹介シリーズ、第4弾は石持浅海さんの「月の扉」。
石持浅海さんって、名前からして絶対女性作家さんだと思いますよね?
実は男性だということを知ったときは、とても驚きました!!笑
桐野夏生さん、桜庭一樹さん、北村薫さん、住野よるさん、乾くるみさん、有川浩さん、恩田陸さん、高尾長良さん…名前で性別判断できない作家さん多すぎ問題。笑
 
そんな石持浅海さんを読むようになったのは、ミステリー好きの友人から「変わった設定のクローズドサークルのミステリーを書く作家さんでオススメ」と紹介してもらったのがきっかけです。
そんな石持さんの作品は、まさに友人の言葉どおり、とにかく舞台設定が独特!
なんでも「兼業作家で読書量が多くないので、気がつかないうちに他の作家さんとトリックがかぶることを危惧した結果、同業者が書きそうもない舞台を用意することにした」という理由なんだそうです。
 
そんな彼の代表作である「月の扉」も、かなり独創的なクローズドサークルが際立った作品です。
その設定とは、なんとハイジャックされた飛行機の機内で起こった不可解な殺人事件。
3名のハイジャック犯によって、乗客や搭乗員たちは監視下に置かれるのですが、そんな中、ハイジャック犯が航空機のトイレの使用を認めた乗客が、トイレという密室の中で遺体となって発見されます。
ハイジャック犯が見張っており、誰も中にいなかったはずのトイレの中で、誰がどうやって殺人を犯すことができたのか?
普通に考えれば、犯人はハイジャック犯の3人しかいないはずですが、彼らは、一様に知らないといい、遺体の扱いに本気で困惑しています。

犯人はハイジャック犯ではなく、一般の乗客や飛行機の搭乗員の中にいるのでしょうか?
そもそもなぜ被害者は殺さなければならなかったのでしょうか?
さらに、犯人はなぜわざわざハイジャック事件の最中に殺人を犯さなければならなかったのでしょうか?
謎が謎を呼ぶ不思議な展開に翻弄される、まさにミステリーの魅力たっぷりな作品で、ハイジャックと密室殺人という2つの組合せはハラハラドキドキの連続です!
物語の最後に、ようやくこの事件の謎が種明かしされるのですが、不可能状況と思われた殺人事件の謎が非常にロジカルに説明され、「なるほど、その手があったか~」とかなり感心してしまいました。

そしてこの小説でさらに驚いたのが、物語の最後にハイジャック犯がとったある行動。
このオチは全く予想できませんでした…!すごく意表を突かれました!

他のミステリーとは全く違った読み味で、しかも相当ハイクオリティー。
「誰が」「どうやって」「何のために」殺したのかの、3つの謎がすべて驚きの真相を孕んでいる、3拍子整った逸品なので、ちょっと変わった本格ミステリーを読んでみたい方にオススメします。

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