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廣瀬俊朗と車いすラグビー(後編)

RUGGERSオリジナルコラム
筆:廣瀬俊朗
1981年生まれ、大阪府吹田市出身
元ラグビー日本代表キャプテン
株式会社HiRAKU 代表取締役
NPO法人 Doooooooo 理事
スクラム・ジャパン・プログラムアンバサダー

※前編はコチラ

東京2020パラリンピックを振り返って

 車いすラグビーについて、今回の東京2020パラリンピックに至るまでの道程や、僕の想いを前編のコラムで書いた。後編では今大会について振り返りたいと思う。

 いよいよ東京パラリンピックが始まった。初戦はフランス戦。いつも通りの力が出せれば勝てると思って見ていたが、久々の試合ということや、負けられないというプレッシャーもあったのだろう、フランスの勢いに押される展開になった。セドリック・ナンカン選手は前回のリオパラリンピックでも気になっていたが、どんどん圧力をかけてきて、なかなかペースが作れない。「負けてしまうかも!!」と不安もよぎった。でも、なんとか後半盛り返して、勝利。安堵の瞬間であった。まずは大きな壁を乗り越えたと思った。

 翌日は2連覇しているオーストラリアを破ったデンマークとの対戦。厳しい試合になるのでは、と思っていたが、ここは完勝した。最後には様々な選手も出場することができ、若い橋本選手などもプレーできたのは嬉しかった。次回のパリ大会にも繋がる。

 そして、予選大一番のオーストラリア戦。相手はエースのライリー・バット選手がいる。めっちゃ応援しようと思って挑んだ。試合が始まると日本のプレーは素晴らしく、終始安定して試合をしているように感じた。ローポインターの活躍も前回以上に素晴らしかったように見えた。見事に勝利し、予選を1位通過した。「よし!!!」ここから順位決定トーナメント。準決勝でイギリスに勝って、決勝でもう一度オーストラリアかアメリカと対戦になるだろうと予想した。

 いよいよ土曜日の準決勝。自分自身の反省は、ここは大丈夫だと思ってしまっていた。選手はそんなはずはない。一生懸命いつも通り分析をして取り組んだのだと思う。ただ、残念ながら後半かなり差を開けられてしまい敗戦となった。選手の涙を見て、金メダルの目標が途絶えたことの大きさを改めて感じた。同じ準決勝での敗戦とはいえ、前回大会とは違う形の負け方に3位決定戦が心配になった。

 5日連続の試合となる日曜日。相手はオーストラリアとの再戦。正直なところ、「前回は快勝しているだけに、逆にオーストラリアの方が気持ちは楽。日本は自国開催での金メダルを取れなかったショックも大きいのでは?どんな試合を見せてくれるのだろうか。」という不安な気持ちもあった。
でも、そんな不安を吹き飛ばすくらい日本代表は今回もタフだった。試合が始まれば、素晴らしいプレーを見せてくれた。長谷川勇基選手がタックルで相手エースのライリー・バット選手を倒したりとビッグプレーも生まれた。そしてそのまま快勝。見事に銅メダルを勝ち取った。前回と同じ色。でもまた違った価値のあるメダルになったのではないかと思う。

 今回のパラリンピックの財産はもう一つある。日本の皆が車いすラグビーのファンになってくれたことだ。多くの人からめちゃくちゃ面白いと言ってもらい認知度は大きく上がった。ここから国内の試合が盛り上がったり、車いすラグビーに限らず障がい者との向き合い方そのものが変わっていったり、誰しもがスポーツを楽しめる社会、生きやすい社会ができるキッカケになればと思う。次は我々がバトンを受け取り、そういった社会の実現に向けて走る番である。

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