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RWC2023用オールブラックス入門ブック-2019年から現在までの物語-



はじめに。

皆様こんにちは。初めて方もいらっしゃるかもですが、いつもお世話になっております。オールブラックス番記者黒猫です。

数日前から何日間に分けてオールブラックスの日本で開催されたRWC2019から現在までに起こった事を本当にざっくりと振り返って書いたものをXに投稿していましたが、それをnoteにまとめて、公式のハイライトなども貼り付けてRWC2023用オールブラックス入門ブックを作ってみました。

ものすごーく長文になると思いますが、お付き合い頂けたら幸いです。

ちなみに、これを読んで2019前も知りたい!!という方がいらっしゃいましたら、アマゾンプライムにオールブラックスを追ったドキュメンタリー「ALL or Nothing」なんかもありますので、よかったらどうぞ。

第一章: 崩壊の足音。

2017年までの114年間テストマッチ566試合行った中で、勝率77.21%。2011年と2015年にワールドカップで初の連覇を果たし、2012年から2016年にかけての68試合のテストマッチでは92.6%という驚異的な勝率。ワールドラグビーランキングでは2009年11月から2019年8月までの約10年間1位を保持…。

まさに「世界最強」の名を欲しいままにしてきたラグビーニュージーランド代表オールブラックス。2019年のRWCでは3連覇の期待もかかりましたが、決勝トーナメント準決勝で、当時エディー・ジョーンズさん率いるイングランドに敗れ、この大会を終える事となります。

それからチームは、2012年からチームを率い、2015年のワールドカップ を制覇したスティーブ・ハンセンさんが退任し、ハンセンさんと共に長年チームを支えていたアシスタントコーチのイアン・フォスターHCが2年間オールブラックスを率いる事となり、2020年から新たな体制の下始動していく事となります。

しかし、2020年と言えばみなさんもご存じの通り、世はまさにパンデミックでした。

どの国の代表チームも同様でしたが、国の往来が困難となり、テストマッチが開催が難しい状況の中、オールブラックスもこの年6試合のテストマッチしか行えず、オーストラリア代表ワラビーズとの伝統のブレディスロー・カップは何とか開催出来たものの、南アフリカ代表スプリングボクスの新型コロナの影響による参加辞退もあり、従来のザ・ラグビーチャンピオンシップは行えず、従来のザ・ラグビーチャンピオンシップは行えず、前途しましたオーストラリア代表ワラビーズとアルゼンチン代表ロス・プーマスを含めたトライネーションズとして大会をオーストラリア1ヵ国での集中開催という形で何とか行われました。

イアン・フォスターHCにとっては予想外の形での困難な船出となり、チームはトライネーションズで1985年の初対戦以来初めてロス・プーマスに敗れ、4試合対戦したワラビーズにも2勝1敗1分けと満足するような結果を得られず、2020年のテストシーズンを終える事となります。

ぱっと思いつく限りだと、この年のオールブラックスのハイライトシーンとしては、ブレディスロー・カップでのケイレブ・クラークさんの衝撃的な活躍、同年の11月に亡くなられたアルゼンチンの英雄ディエゴ・マラドーナさんに捧げられたHAKAなどがありましたよね。

2019年のワールドカップを持って、ワールドカップ優勝経験のあるベン・スミスさん、ソニー・ビル・ウイリィアムズさんなど多くのスターが代表を退き、キャプテンもキアラン・リードさんからサム・ケインさんに代わり、経験不足という声もあったイアン・フォスター新HC率いるオールブラックス。

私達ファンはまだこの時彼らが、今後起こる大きな混乱へ向け既に片足を踏み入れていた事など知る由もありませんでした。

第2章: 混乱のPrologue

明けて2021年。この年も変わらず新型コロナが大きな影響を与え続け、オールブラックスは7月にNZで予定されていたイタリアとのテストマッチを行えず、その代わりに近隣の太平洋諸島のトンガ代表と1試合、フィジー代表と2試合テストマッチを行います。

オールブラックスはこの3試合に全勝し、ワラビーズとのブレディスローカップも3戦全勝。そして、この年もオーストラリアを中心とした開催となりましたが、復活したラグビーチャンピオンシップでは復帰したスプリングボクスとの記念すべき100試合目となるテストマッチも勝利。ボクスとの2試合目は敗れたものの他は全て勝利しまして、ラグビーチャンピオンシップで2年連続8回目の優勝を果たし、チームはこの年好発進に成功する事となります。

この結果を受け、New Zealand Rugby(以下NZR)は8月中旬に2年だったイアン・フォスターHCとの契約を延長し、2023年のラグビーワールドカップ終了までの契約を結びます。この契約延長についてNZRのマーク・ロビンソンCEOは、誰もこれまで経験した事のないパンデミックでの難しい舵取りを評価し、延長を判断したようですが、賛否両論の声が上がりまして、当初からヘッドコーチへの昇格に反対していた人々、特にクルセイダーズのスコット・ロバートソンの就任を望んでいた人々から反発の声が上がる事となります。

フォスターHCも契約延長により自信と安定感を得られたと話し、これで再びチームは上昇気流に乗ってくるのではと思われていましたが、10月末から2021年に改たに名打たれて開始されました南半球のチームが北半球を訪れるツアー、オータム・ネーションズツアーの5試合を3勝2敗で勝ち越したものの、ワールドカップでライバルとなるであろうアイルランド、フランスに連戦で敗北し、この年のテストマッチシーズンを終える事となります。

2021年のオールブラックスは12勝3敗で勝率8割と一見好成績に見えますが、シーズン3敗を喫したのが2009年に年間4敗して以来の悪い成績だそうで、メディアではチームの現在の強さを測る上でその3敗が南アフリカ、フランス、そしてアイルランドだった事、そしてアイルランド、フランスに内容でも圧倒された事から、チームに対する不安、そしてイアン・フォスターHC手腕に対して疑問視する声が再び上がる事となってしまいます。

2022年に状況を好転させなければ彼のオールブラックスのベッドコーチとしての任期は短くなるだろうという意見も見られた中、迎えた2022年のテストマッチシーズン。

オールブラックスは、未曽有の大混乱を迎える事となりますー。

第3章: 王城陥落

2022年のオールブラックスを振り返るならば、まさに「混乱」だった思います。

パンデミックもほんの少し落ち着きを見始めた2022年。スーパーラクビーパシィフィックファイナルの前日に2022年初のスカッドも発表され、昨年の雪辱を果たせるかと大きな注目を浴びていました。

相手は昨年末に敗れたアイルランドとのNZでのテストシリーズ3連戦。

メディア論調的にはスカッドの高年齢化が進んでおり、特にタイトファイブ、(1番から5番)についてはそれが顕著であり、昨年アイルランド、フランスへの敗戦後のオールブラックスのFWパックの出来がどうなるのかも注目されていました。

また昨年の敗戦も含め直近の対戦5試合でアイルランドには3敗しており、チームとしては昨年の敗戦も含め、挽回する絶好のチャンスでもありますが、メディアでは今回のNZツアーでツアー勝ち越しと選手育成も目論むアイルランドとの試合はこのままでは大変な事になるかも知れないと悲観的なニュアンスも見受けられました。

では、このシリーズの結果はどうなったでしょうか?

第1戦は勝利したものの、なんと2戦目、3戦目と連敗。アイルランにNZの地で初黒星、そして初の3連戦の負け越す残念な形。

オールブラックスがホームテストで連敗するのは、1998年以来24年ぶりのことであり、ホームシリーズで負けたのは1994年以来初めてで、アイルランド代表にとっては「不名誉な」歴史的テストシリーズとなり、チーム文字通り混乱へと進む事となります。

フォスターHC、そしてキャプテンのサム・ケインさんへの批判、そして異例にNZRのマーク・ロビンソンCEOがこの負け越しについて「受け入れがたい」と発言し、フォスターHCも3戦目後の記者会見で、自分の将来についての質問を受けることを避け、日曜日の朝の定例記者会見も突然中止となるなど、解任か?と周囲のボルテージが最高潮に達する事となります。

過去オールブラックスのヘッドコーチの任期中の解任は前例のない事でした。

歴史的にも初の判断が下される事となるのか?大きな注目を浴びる中、チームはラグビーチャンピオンシップへと挑む事となってしまいます。

初戦と第2戦の相手は現ワールドカップチャンピオン南アフリカ代表、スプリングボクス。

しかもアウェイでの2連戦。

ワールドラグビーランキングでも5位にまで落ちてしまったオールブラックスは、ピッチ上でもピッチ外でも非常に困難な状況に追い込まれてしまいます。

第4章: 地獄からの生還

そしてそんな「大混乱」の中、2022年のラグビーチャンピオンシップが始まる事となります。

初戦と第2戦の相手がなんと、現ワールドカップチャンピオン南アフリカ代表、スプリングボクス。

世界王者相手に、しかもアウェーでの2連戦が待ち構えるという非常に困難な状況になりました。この状況をどうにかしなければなりませんし、何か手を打たなければなりません。

そしてNZRは改善策としてまずボクスとの連戦を前に、コーチのジョン・プラムツリーFWコーチとブラッド・ムーアバックスコーチ解任し、新たにクルセイダーズのジェイソン・ライアンさんのFWコーチ就任が発表する事となります。

選手達も厳しい批判に晒される中、イアン・フォスターHC、そしてキャプテンのサム・ケインさんを擁護するなど、チーム一丸となってこの状況を乗り越えていこうとする姿勢を見せていましたが、オールブラックスの不調は様々な所に飛び火してしまいます。

まず、前オールブラックス HCであるスティーブ・ハンセンさんがニュージーランドラグビーのサポート体制を批判、さらにNZR前CEOのデビッド・モフェットさんもマーク・ロビンソンCEOにシルバーレイクとの取引(NZRの株の売買)を含めた一連の騒動の責任をとるよう辞任を求め、さらに次期オールブラックスHCとその目されているクルセイダースのスコット・ロバートソンHCが他国の代表HCのオファーに前向きであるという発言をした事も重なる事となります。

そして、プレッシャーが更に高まるそんな中迎えたプリングボクスとの2連戦はどうなったかと言いますと、1勝1敗の五分。という結果になりました。

2戦目の勝利がイアン・フォスターHCが続投する理由となるのか?という話にもなってくるのですが、NZR+ドキュメンタリーを見た方ならわかると思いますが、どうやら協会のロビンソンCEOは解任に動いていたようで、勝利の後選手達は話し合いの場を設けてもらい、SNSでもチームが一丸となっている事をアピールします。

その成果もあってか、フォスターHC自身は自身の去就についてはどうなるかわからないと発言していたものの、次節のアルゼンチン戦に向け帰国した際、正式にロビンソンCEOの口から続投宣言が告げられる事となります。

これで本当にチームが安定飛行のハンドルを握り、ここからオールブラックスがようやく復活するのではないかと期待される中、

第3戦となったアルゼンチン戦で、チームはNZで初めてアルゼンチンに敗北するのです。


第5章: 届かぬ光

どん底から抜け出し、快勝が期待されていたホームでのアルゼンチン戦。

光は、手の届く所にあると思っていましたが、いざ伸ばしてるとまだ先にありました。

アルゼンチンは、2020年にオールブラックスから初勝利を上げ、この2022年にはNZの地で初勝利を上げるという快挙にアルゼンチン国内も大いに沸くことになりますが、オールブラックスにとっては再び不名誉な歴史的敗戦を喫する事となります。(スティーブン・ペロフェタさんの50秒のテストデビューなんかもありましたよね)

しかし、そこからは何とか盛り返し、アルゼンチンとの第2戦は快勝、続くワラビーズとのブレディスローカップでは第1戦は、歴史に残るような激闘となり、物議を醸した遅延の判定なとがありながら、勝利を捥ぎ取り、第2戦目は快勝。最終的には何とかチャンピオンシップ優勝という結果となりました。

それから北半球ツアーの戦いに突入していく訳ですが、まぁ皆様大熱狂の日本への来日もありました。沸きに沸きましたね。チケットはもちろんソールドアウト、何なら新国立競技場の動員記録を塗り替えて、6万5188人もの方が訪れたとの事で、日本での人気の高さにこんな活動しているものとしては嬉しい限りでございましたが、ニュージーランド国内では女子のラグビーワールドカップ の準々決勝とスケジュールが駄々被りしてしまう事件などもありました。

そこからウェールズに勝利、スコットランドにも何とか勝利しまして、最終戦は2019年のワールドカップ 準決勝で敗れて以来のイングランド代表との対戦は、勝って、気持ちよく終われたらよいなーと思いましたが、序盤のリードしていたものの追いつかれドローという展開に。そうやって、大波乱のオールブラックスの2022年は終わる事となります。

そして、迎える事となったRWCイヤーとなる2023年。

3月RWC終了を待たず2024年にオールブラックスを率いる次期HCにクルセイダーズでスーパーラグビー7連覇のダイナスティを築き上げたスコット・ロバートソンさんの就任が発表される事となります。

これは、オールブラックスの歴史上はじめての出来事であり、NZRにとってイアン・フォスターHCへの信頼度が低い事を改めて周囲に認識させる事となってしまいます。

まさに背水の陣と言える状態で臨んだラグビーチャンピオンシップ。オールブラックスは復活の狼煙を上げる事となります。

初戦のアウェーでのアルゼンチン戦を快勝、そして宿敵南アフリカ、スプリングボクスをホームに迎えた第2戦でも勝利を上げ、ワラビーズとのブレディスローカップも2戦とも勝利し、全勝でラグビーチャンピオンシップを優勝する事となります。

完全に復活を遂げたと思われたオールブラックス。しかし、RWC前最後の試合となるロンドンで行われたスプリングボクス戦で大敗を喫していしまいます。

まさに優勝候補として大きな声をあげた筈のオールブラックスでしたが、寄せては返す波のようなRWC2019から続くこの物語は、またオールブラックスに新たな試練を与え、9月9日の開催国フランスとの開幕戦を迎える事となります…。

さいごに。

最後まで読んで頂いた方ありがとうこざいました。RWCでのオールブラックスを楽しめる一興となれたら幸いです。この流れを映像で観たいなと感じた方は、ニュージーランドラグビーが先日「NZR+」という映像プラットフォームを立ち上げまして、上記にも張っている「IN THEIR OWN WORDS」というドキュメンタリーが無料で公開されていますので、よかったらどうぞ。日本語にも対応しています。

それでは、また。


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