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とある理系の研究室16 ティーチングアシスタント

某国立大学の理系の研究室の話。

そこそこの大学のそこそこの研究室。国内外の学会にもコンスタントに出ていて、論文もそれなりに出している。活気もそこそこ。古き良き時代の雰囲気を残している研究室。

ティーチングアシスタント(TA)の話。


TAとは院生の公式バイト。

要は教官が学部生に行う講義や学生実験のアシスタントである。
講義で使う資料の印刷配布、プロジェクターなどの準備片付けだけのものもあれば、学生実験を完全に任されたり、補講※を任されたりすごくめんどくさいものもある。

※補講:講義の補助として演習や小テスト、その解説などを一コマかけてやる、単位にならない講義。でも補講に出ないと単位はもらえない。2コマ拘束されて1コマ分しか単位が出ない辛い風習。

当たり外れアリ

当たりは講義準備片付け、ハズレは学生実験である。特に化学系の実験はハズレである。
学生実験は3-4限、つまり昼イチから16:30くらいで組まれている。がそんな時間に終わるわけがない。大体終了は19:00ごろになる。素人の学生を何十人も同時に実験させて、スムーズに行くわけがない。熱濃硫酸を持ってフラフラしてる奴を注意するのに大半の時間を費やす。
実験器具、試薬の準備と片付け、実験中に割ったガラス器具の補充などもしないといけない。拘束時間と労力が大きすぎる。ふたコマ分しか時給つかないのに。

実験レポートの添削もします

さらに実験後のレポート添削もやらなければいけない。しかも研究室の方針で一発合格させない決まりがあるので、最低でも受講人数×2倍の量のレポート添削が必要になる。
学部生は、院生(TA)に最低でも2回以上レポートを見てもらった後に、教官が最終チェックするので3回レポートを提出しに来なければいけない。そりゃウチの研究室の人気がなくなるわけだ。

コピペはもちろんバレます。

賢いヤツは、サークルや部活の伝手などでTAが作った模範レポートを入手して周りに流しちゃう。むしろそのためにTAに近づいてくるヤツは一定数いる。その行動力は評価できる。でもコピペは通しません。
一回だけ自分が学部生の頃に書いたレポートのコピペに出会ったこともあった。データを共有した人もいたので心当たりはあった。君のレポートの元データ、目の前の私のPCに全部入ってるよ。

困る案件。

稀にマニアックな本とかペーパーを参考文献にしてくるヤツがいると焦る。さらにその記載が間違ってそうな場合。本当にそんなことが書いてあるのか裏取りが大変。附属図書館の蔵書にない本や論文を参考にされるときつい。大人しく附属図書館でレポートを書いて欲しい。


お願いだから泣かないで。

再レポートを食らって泣いちゃう学生もたまにいる。優秀な女子学生は泣くか、キレるか、泣きながらキレる。一発でレポート合格しようと頑張ったのに再レポートを食らい、院生にダメ出しされる。「このレポートのどこに不備があるんですか!」とキレちゃう。
さすがに研究室でシクシク泣かれた時には、USBでデータをもらって、その場で優しくグラフを直してあげるしかなかった。

先生は容赦無い

狼狽えるTAと違い、先生は慣れているのか、泣いているのもあまり気にかけずお構いなしにズバズバ指摘してレポートを返す。怖い。
こうやって「あの研究室はヤバイ」との噂が広がっていくのか。




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