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luna2

皆既月食を見終えて
ふたりでベッドに包まって
冷え切った身体を
抱きしめ合って温め合った。

そして、
あなたの身体を見て驚愕してしまった。
細くなってしまった身体を見て
切なさが込み上げた。

痩せ方が異常だった。

骨張った身体に触れて泣きそうになってしまった。

どうして?あなたに何があったの?

震える声であなたに問いてしまう。

どうして、いったりきたりでしか
生きられないのだろうか。


病気だったら移して?

あなたとふたり、あなたの病気なら
喜んで受け入れるのに。

移せないのなら、治らないのなら、
このままわたしの腕の中で死んで。

そう、あなたに投げかけた。

あなたはすぐに
いいよ。
と言ってくれた。

遺灰になってわたしはそれを飲み込んで
そしたらずっと一緒にいられるのに。

それくらい、わたしはあなたと溶け合いたいの。
あなたをわたしの中に入れ込みたいの。
飲み込んで飲み込んで
誰にも見えない世界に
わたしだけの世界に
閉じ込めてしまいたいの。

お互いそう思っているから
わたしたちは奇跡なの。

心臓を食べたい。も、
臓器の交換をしたい。も、
2人の肋骨を折って
取り出してアクセサリーにしよう。も、

叶わない願いが
わたしたちの宝物なの。

ずっと想っていて
ずっと心配していて
ずっと愛していて
ずっと不安を抱えて

あなたはひとり、
どれだけ辛い数ヶ月を過ごしてきたのだろう。

痩せ細った身体で
何を思って生きてきたのだろうか。


抱きしめて抱きしめて
わたしの愛情と優しさを捧げたくなった。
わたしのすべてを捧げて
少しでもあなたの辛さや弱さが和らいで
穏やかに過ごせればいいと願ったの。

誰かをここまで愛おしいと思ったことは
初めてかもしれない。
誰かを守ってあげたいと思ったことは
初めてかもしれない。

あなたの気持ちが落ち着くなら
いつだってわたしの腕の中で包み込むわ。


抱きしめ合ったベットで
このままスペインへ飛んで行かないかなぁ。
と、言うあなた。

魔法の絨毯のように飛んで行けたら
ふたりの世界にいけるのに。

そうしたらふたりで
誰にも邪魔されずに死ねるのに。


この日、はじめてここまで
自然体で話せたのは初めてだと思った。

拗ねて抱きしめ合って冗談を言いあえた。

離れている日々を重ねて
一緒にいた日々より絆が強くなっていたことを
とてもとても感じた。

離れている日々は寂しいけれど、
こうして会えた瞬間に
大好きと愛しい気持ちでいっぱいになって
ふたりが、カチッ。と音を立ててくっついて
ふたりの時間がまた動き出す。進み出す。

こんなにも、あなたはわたしの心に記憶に
住み着いているのね。


昔からこの日に会うのが決まっていたみたいな
前世も、その前もきっと、何十年何百年も前から
この日に会う約束をきっとしてた。

そんな風に胸の奥の奥から喜び合えた。


写真を撮る姿を見て
あなたのプロの一面も見れた。

わたしは邪魔をしないように離れたけど
「だめ。そばにいて。このままくっついていて」
そんな風に甘えるあなたを見れたことが
嬉しかった。


あなたは、何度も何度も弱々しく
「もう、会えない気がしてならないんだ」
そんな風に言った。

いいえ。そんなことはさせないわ。

わたしはあなたの頬を何度も撫でて
あなたを力強く抱きしめて

「大丈夫。必ずあなたを探し出すわ」

そう、告げた。

あなたの不安が少しでもなくなるように
何度も何度も伝えた。

あなたが大好き。
あなたを愛してる。
あなただけをずっと愛している。

だから、大丈夫。と。


カチリと左耳にあなたの傷が付く。

誰にもできない
誰にもつけられない
あなただけの傷。

紙切れで繋がれるわけでも
ずっとそばにいれるわけでもない。

目に見えるお守りが
触れることのできるお守りが初めて出来た。

果たされなかった約束が
ひとつだけ叶った。

わたしは、あなたのもの。

そしてそれ以上に
わたしたちの絆が強くなったことを感じた。


あなたが帰る前に
またひとつ約束をする。

おまじないのように
一つずつ約束が増えていく。

叶う日を夢見て
またあなたのいない日々をまた過ごしていく。

別れの時間が近付く。

名残惜しく離れ難く
抱きついてキスを交わす。

また、離れる前に
あなたの香りをわたしのハンカチに
付けてもらった。

笑顔を交わしながら
ハンカチにハートを書いてくれる。

離れる間際に、こんな風に触れ合えたことは
初めてだった。

いつもは泣きながら寂しい想いと不安が
胸を締め付けていた。

今回は、それが無かった。

新しい香り。
新しいわたしたち。
新しいふたりの関係ができた気がした。


穏やかな気持ちでもいられた。
だから、この前はできなかった
あなたに何度も振り返って笑顔で手を振る。

わたしはエスカレーターを登って行く。

あなたがわたしから目を離さないように
わたしが見える場所まで移動しながら手を振る。

何度も何度も。

お互い屈んで見えなくなるまで
ずっと。ずっと。

愛しいあなた

思い出の1番上のページは
なんと暖かくて穏やかなんだろう。

寂しくても辛くても
この想いがあれば生きていける。

そんな風に思える。

きっと何度も振り返って戻って進んで
お互いにいったりきたりしながら
揺れながら揺れながら
そんな風に馬鹿みたいに想い合って生きていくの。


わたしはもう、
あなた以外の男性に
「愛してる」を伝えることはもう出来ない。

でも、それでいい。
そう思えるくらい
わたしはあなただけをずっと、ずっと愛してる。


あなたに出会えた感謝を。


どうか、小さな幸せが
離れた場所で暮らすあなたに降り注ぎますように。
と、儚いあなたに願いを込めて。
穏やかにどうか元気でいて欲しい。

いつか、一緒に過ごせる日を夢見て。

さようならとまたねを。
ありがとうと愛してるを。

あなただけに。心を込めて。




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