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アルバイトの履歴書

ひな姉(あらしろひなこ)さんが、アルバイトの履歴書を公開されていました。とても面白かったので、乗っからせてもらいます。

学生時代のバイトが、どれほど自分の人生の役にたっているのでしょうね。
地元の大学に通っていたので、高校時代と衣食住には変化はなかったけど、「大学生=バイト=かっこいい」イメージから、いくつかのバイトをやりました。

花屋の留守番

大学1年の春、駅前を自転車で走っていたら、花屋の前で中年の女性に突然、声を掛けられました。
声を掛けたのは、その花屋の店主で、花を市場に買い付けに行っている午後の数時間、留守番をしてほしいというんです。
時給650円。
バイト未経験だったので、これが高いか安いかも分からず、どんな仕事をするかも分からないままやることにしました。

店主がいないので、店は閉めています。
電気の消えた店内で、冷蔵庫に入った花の水替えを頼まれました。
水替えなんてちょろいと思っていたら、大間違い。
花の入った大きなバケツが恐ろしく重くて。筋力ゼロの帰宅部の学生の腕に耐えられませんでした。何度も水をひっくり返しました。こぼしては拭き、またこぼしては拭き。その上、冷蔵庫で冷やされた水は、冷たくて。初夏だというのに、手が真っ赤になりました。
2か月でやめました。

でも、辞めた本当の理由は、水替えが辛かったのではありません。
原因は飼い犬。
柴犬だったらしいその犬は、およそ柴犬に見えないほど横綱級の肥満犬。
おかげで、動きはのっそり、ぽってり太った体をなでると、じっとしていてとても愛くるしい。
と思っていたら! 
店主が店を留守にして、私と二人っきりになった瞬間、突然牙を向けてきたのです。ワンワン吠えるわ、うなるは、噛みつこうとするわ。とんでもない豹変ぶり。
水替えに値を上げるより先に、この犬にかみ殺されそうなので辞めたのです。
そういえば、私を雇うときも「前の子が突然辞めちゃって」って言ってたから、絶対あの犬のせいだと思っています。

書店員

中学・高校時代に行きつけだった本屋でバイトを募集していたので、速攻で申し込みました。時給700円くらいだったと思います。
文庫本売り場で、夕方から閉店までのレジ係。
店が吹き抜け構造になっていたので、仕事が暇になると上の階の子とついおしゃべりしちゃって、よくしかられました。
バイトでも、給料天引きで2割引きで本が買えました。文庫売り場で数時間もいたら、毎日読みたい本を見つけちゃいます。当然たびたび買って帰りました。そのせいでバイト料の大方が本代に消えてしまいました。
好きな本をずっと眺められて楽しかったけど、夜、バイト先から40分かけて自転車で家に帰るのが嫌になって、3か月ほど働いて辞めました。
(実家が田舎だったので電車など通っていないのです)

書店員その2

正確には書店員ではなく、「本屋の棚卸しのバイト」です。
前段の書店の人から誘われて、受けました。
県内にあるこの書店の支店を回って、1日かけて棚卸しをするというもの。
臨時休業して、空調を切られた真夏の書店。蒸し風呂のような中でひたすら本のタイトルと金額と数量を書き込んでいく仕事。
これがかなり楽しくて。
ふだんなら手を出さないジャンルの本を、1冊1冊手に取ることができるんです。へえ、こんな本があるんだ。こんな世界があるんだと、数えるふりして中を覗いたり、田舎の女子大生には刺激的なちょっとエッチな小説を垣間見たりね。
もはやバイトというより、宝探しの気分。
読みたい本を見つけておいて、店が再開したら買いに行ったりしました。(稼ぎに行ったはずなのに)

家庭教師

大学生のバイトの王道、家庭教師。
私もやってみましたが、人に教えることが向いてないことがよく分かりました。
私が登録していた家庭教師派遣会社は、専用の教材を買うことと家庭教師を雇うことがセットになっていましたので、生徒さんにはその教材をもとに教えます。参考書を読んで説明するだけの教え方、成績が上がるはずもなく。都合で何回か休んだら「もう来なくていい」と言われました。クビになりました。
生徒さんだった子にはとても申し訳なかった。
家庭教師はそれですっぱり辞めました。
(あと、派遣会社にピンハネされる額がひどかった)

大手スーパーのサービスカウンター

先に勤めていた友人に誘われて、行くことにしました。
書かれた数字をぜんぶ10000から引いていくという謎の採用試験があり、一応合格したみたいです。

居心地が良くて、大学4年間と卒業後フリーターの1年をここで過ごしました。

あの頃はいい時代で、OJTではなく、バイトに入って最初の3日間、教育係の人から包装の仕方から接客態度、レジの使い方、包装の仕方まで、スーパーで必要なスキルをみっちり教えてもらいました。
友人は日用品の品出しの仕事をしていたので、てっきり私もそこかと思っていたら、なぜか私が配属されたのはサービスカウンター。
皆さん、ご存じですよね。レジとは別のエリアに設置された、あのお客様相談室みたいなところです。
商品の包装、宅急便の受付、店内放送、苦情受け付け……つまりは各売り場でやらないこと全部、「何でも屋」です。
阿波おどりのシーズンには、店先でビールを売らされたし、お中元、お歳暮売り場の人手が足りなければ、応援に行ったり。
クリスマスやバレンタインの時期には一日中、大量ラッピング。
サービスカウンターの仕事はイレギュラーばっかりだし、忙しくて大変だったけど、その分、臨機応変に対応する方法とか、忙しい時の仕事の優先順位の付け方とか、たくさん学びました。
世の中にはいろんな人がいるということも学びました。優しい人、お金持ちの人、ずる賢い人、横柄な人、酔っ払い、万引き犯、店員をナンパする人。そこはまるで社会の縮図のようでした。
ちょうど、バブル景気から経済不況になる過渡期でした。店がだんだんと安売りに走るようになって、商品の質が落ち、客層が変わっていきました。1円、2円で文句を言い、無理難題をいう客が増えました。売り上げが減り、リストラで社員が減りました。次第に客足が途絶えていく5年間をずっと見てきました。数年後、スーパーは閉店しました。
閉店の映像をテレビで見て、寂しかったな。

今はどんなバイトが流行りなんでしょうね。

もう一度やるなら、本屋のバイトがいいなと思う今日この頃です。

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