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息子から届いた30年前の写真

夫と息子と3人のグループLINEで、夫と息子が何やらメッセージのやりとりをしている様子。いつもの二人の間の雑談だろうと放置していたら、夫が
「はよ、LINE見てみてよ」
と、私をせかされた。
一体何かとスマホを開いて見てと2枚の写真が添付されていた。
小さく表示された写真はなんだか古そう。
老眼の目を限界まで細め、スマホを持った手をぐーんと遠くへ伸ばして、1枚目の写真をタップして拡大すると、夫に似た人間の顔が写っている様子。
目のピントを合わせて、じっくり見ると、それは30年前、夫が大学生だったころの写真でした。
「あらー、若いわねえ」
と懐かしげに眺めていると、再び夫が、
「2枚目も、ほら見てみて」
と言うので、2枚目の写真をタップすると、なんとまあ、30年前の自分の横顔が写っているではないか。その隣に夫の姿。写真の中の私はカメラのほうを見ていないので、誰かが手当たり次第撮った写真に私と夫と会話しているところが写り込んだようだ。

当時はスマホはもちろん、デジタルカメラもなかった時代、インスタントカメラのようなもので撮ったのか、画像も粗く、被写体も背景もぼんやりとしている上、30年の月日でずいぶんと劣化している。場所は大学の構内のどこからしい。
横顔の私は夫の方を見て何か話しかけようとしている。うれしそうなというか、楽しそうというか、何ともおめでたい顔をしているではないか。

「なに、この写真? どこにあったん?!」
と、返信すると、「部室を掃除してたら見つけた」
と息子。実は、息子は親の母校の大学に通い、その上、当時夫が入っていたサークルに所属している。不思議な縁である。

よく見ると、写真の横には息子のアイコンが付いている。

「いや! 恥ずかしいわー!!」
と叫んでスマホを閉じた。

もちろん、子どもたちは、親夫婦が学生のころからの友人同士であったことは知っている。なので、夫といるところを見られたところで何の問題もない。
でもやっぱり自分たちの「恋愛中」の顔を見られるのは、かなり恥ずかしい。自分の裏側を見られてしまったような気がする。体中がむずむずする。
この気持ち、私だけだろうか?

それに、息子がそれを見つけたってことは、息子の友人たちにも晒されたってことよね?
重ね重ね、ああ恥ずかしい。

息子は一体、どんなふうに思っているのだろう。
単純に面白がっているように見えるけれど。


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