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史上最高に美味しかったカップのかき氷

京都の鞍馬山に登ったことがある。かの牛若丸が幼少期に鞍馬天狗に武芸を教わったと言い伝えられる修験の場。私と友人はそれを甘く見ていた。

延々と続く階段と上り坂と、真夏の京都の厳しい残暑に、疲労困憊、息も絶え絶え。でも、登り始めたらもう後戻りはできない。私たちはてっぺん目指して登り続けた。次第に無口になり、セミの鳴き声だけが響き渡る鞍馬山を登り続けた。

汗にまみれ、日に焼けた真っ赤な顔で、やっとのことで本堂前の休憩所までたどりついた。そこで100円のカップのかき氷を買った。

小さな木のスプーンで、固いかき氷をつついて割って、小さな一口を口に運ぶ。
すごく冷たかった。そして、甘かった。
冷たさと甘さが身体中に駆け巡った。
カップのかき氷がこんなに美味しいと思ったのはなかった。
今までの疲れが氷と一緒に溶けていく気がした。

「あとちょっと、がんばんなさい!」
休憩所のおばさんに励まされ、私たちはまた歩き始めた。
ついに本堂へたどり着いた。
鞍馬山から見る京都の町は絶景だった。

鞍馬山は、史上最高に美味しかったカップのかき氷とともに、楽しい修行の場として、私の記憶に刻まれている。

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