デート
最近、年甲斐もなく(?)インスタのリールとかストーリーをいろいろといじって遊んでいるのだが、インスタが提供してくれる、著作権がちゃんと考慮された上で自分の動画に載せられる楽曲の多さに驚いている。
そういうのを詳しい知り合いに聞いたら、たぶん、インスタを持っているメタ(旧フェイスブック)が、著作権無視が多い(?)TikTokやYouTubeに対抗してそこらへんをよりきちんとして利用してもらうことでちょっとした動画クリップ投稿のシェアをとりにきている戦略なのではと言っていた。
ソファでごろ寝して、いろんな人が上げたインスタの動画を見ていたら、何故かイタリアの風景に懐かしいイタリアのカンツォーネが載せてあるクリップがどんどんでてきた。それらで共通して使われていた曲で、個人的にとても懐かしい思い出のあるものがひとつあった。
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タイトル画像の、イタリアのOrnella Vanoni の "L'Appuntamento"、邦題「逢引き」というのがそれ。
導入部分、アルペジオのギターの伴奏に、ハスキーだけど歌唱力ある声の、明るいけれど物悲しいメロディーが流れる。
とてもイタリア~ンなきれいなメロディの歌である。優雅で、かつ、ちょっと演歌っぽくもの悲しい。近年これ忘れていたが、大昔、とても好きだった曲。カセットテープ(古い)にはいっていて、ウォークマンとか車でよく聞いたっけ。
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この曲、中学生だったか高校生の頃にみた映画のテーマ曲だった。当時は映画といえば動画配信の前でビデオもDVDもまだなかったので、時たま行く映画館での鑑賞以外は、TVの日曜ロードショーのような番組でみていた。そこでたまたま見た映画のテーマ曲だった。
映画は、アラン・ドロン主演の仏伊合作「ビッグガン」というマフィア犯罪ドラマもの。この映画、この曲がかかって始まる。
マフィア専属の殺し屋である主人公はすでに中年にさしかかっていて、愛する妻と小学生くらいの一人息子と一見小市民的な生活を送っている。腕はピカイチ、マフィアのボスが命じる抗争相手とかを冷静に一発で撃ち殺し、証拠を残さず整然と現場を去る。
映画の冒頭、オープニングテーマのこの曲が終わると、背広姿の一見ビジネスマンのような彼は、ターゲットのオフィスにごく自然にはいっていくと、言葉もかわさず、サイレンサーのついた銃で「プシュ」っと眉一つ動かさずターゲットを銃殺。異変に気がついて隣の部屋からでてきた奴も、何が起こったから悟る間もなく数秒で、彼は仕方ないなと肩をすくめてまた「プシュ」っと殺す。事務員が書類をチェックしてハンコ押すルーティーンをやるみたいに、無表情でささっと仕事を済ます。そのクールさが、不謹慎ながら「かっこいいな」と若き日の僕は思っていた。
殺し屋は、マフィアのボスにそろそろ引退したいと漏らす。もう、鳥を撃つのは飽きてきたと。本心は、家族のため、子供のため、足を洗ってまっとうな仕事をしたいということであったが。
マフィアとしては、腕利きの彼を手放したくなかったのもあるが、誰を殺したかの情報をもっている危険な存在なので、翻意促せないとわかると、車に爆弾を仕掛けて殺してしまおうとする。しかしながら、車は、彼が部屋の窓から手を振って見送った奥さんと子供がエンジンをスタートしたら爆発する。彼はそれを目の当たりにして復讐を誓う。彼を消そうとした組織のやつらを一人一人殺していく。そんな話。
まあ、当時では結構暴力的なシーンの多いアクション映画だが、アメリカ映画と違って、不思議にエレガントに撮られていた。カーチェイスも、アメリカの暴走するLAとかのと比べたら、もっと低速で小さくてかわいいイタリアのFIATが古風な中世の街並みの道路でこつんとぶつかりあうような感じ。そんな感じにぴったりだったのがこの曲。
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この曲の原題"L'Appuntamento" は、まあアポイントメントだから「約束」くらいの意味で、邦題が逢引きと訳すくらいだから、約束は約束でも男女のデートを指すのかなくらいは知っていた。イタリア語はスペイン語の親戚のようなものなので、歌詞がなんとなくどんなことを唄ってるのかが5割くらいわかっていたつもりだったが、敢えて、歌詞をGoogle Translateしてみた。
すると、この歌詞のL'Appuntamentoが、「日付」となっている。あれれ?と思い、イタリア語→英語でみたら、"date" になっていたので、ああなるほど、AIは英語の date から日付にしたのかと。
それで、最近活用している、DeepLのほうでもイタリア語→日本語をやってみた。驚き。ちゃんとここを、「約束」と訳している。
さらには、歌詞の一部をなぜか英語のセリフにしてる!。これって、日本の歌謡曲の常套手段だから?
ちなみにこの部分、原語ではこれ。
ちなみにグーグル君はこの部分こんな感じ。
DeepL君、かなり歌謡曲聴き込んでるねという感想。
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さらにちょっと驚きは、この曲、オリジナルはイタリアの曲ではなく、ブラジルの曲のイタリア語訳で、ブラジル人作曲でブラジルまずヒットしたのがラテン諸国でも導入されたという。
原題は、"Sentado À Beira do Caminho"だが、DeepL君は、「シッティング・バイ・ザ・ウェイ」と英語に訳している。これ、DeepL君、ちょっとはずしたな。歌詞の意味的に、「道端に座ってあなたを待つ」あたりがよかった。
歌詞は、イタリア語のバージョンに共通するような、破局を迎えつつある愛、デートの約束で待っていて不安になるというようなのがでてくる。L'Appuntamento に対応する単語はでてこない。スペイン語だとデートは la cita かな。ぐぐるとポルトガル語のデートは o encontro と出てくるが。こういう日常会話用語って、ラテン系語学ファミリーでもけっこう違ったりする。
あと、不思議に、イタリア語の「あなたがこなければ、私は存在できない」というのが、もっとポジティブ思考で、自分はなにがあっても存在するんだみたいになっている様子。
この部分をDeepL君は、
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曲としては、やはり、聞き慣れたイタリア語のこのOrnella Vanoni のが好きですね。
はやく、旅を再開して、イタリアの街並みをこの曲を脳裏に流しながら、ゆっくりと散歩してみたいものです。 ■
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