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【連載小説】スモール・アワーズ・オブ・モーニング

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連載全5章 脱力系バンド結成物語か、国際化時代の日本人の在り方を問う問題作か?熱い湿気が覆う島シンガポールで多国籍メンバーのバンドが奏でるブルースが流れていく中で展開する人間ドラ… もっと読む
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【連載小説】スモール・アワーズ・オブ・モーニング(3)第三章 よく考えたほうがいいわ

(第2章からの続き) 「もっと、日本語で喋りながら、続けて」、うわずった声が懇願する。 「うん、きめこまかに、、ぐんぐんと力強く、これだよ、日本男子の愛し方はな。お、うぅっ」 「、、じ、じつは、、ファイザーという、製薬会社、の、青い錠剤の支援、あっての硬いぃ、だけど、、」 場末のモーテルのベッドがぎしぎし言う。 「お願い、笑わせない、、ほかのこと続けて喋って、、日本語で喋って」 「ファ、ファイザーは、今から、5年後くらいに、うっ、パンデミックのワクチン開発でも名が

【連載小説】スモール・アワーズ・オブ・モーニング(4)第四章 ちょっと愛をください

強烈な熱帯のスコールはいつもあっけなく終わる。 ロシェルは、茫然と立ち尽くすサチの前に歩み寄る。 そっと彼女をハグする。 そして日本語で言う。 「あなたは悪く無いの」 「あの人が病気なのよ」 激しい落雷と雨を降らせた黒い雲は、もう南東の方の海の上へと移動している。 ペントハウスから遥か遠くにそれが見える。 あっちがビンタン島だったな、とシンイチは思い出す。 嵐の去った、高層ビルと緑の島シンガポールでは、トロピカルバードたちが清々しい朝の始まりを告げ始めた。