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【短編】Promise

眠れてないんだろと、何もかもお見通しのように言われた時、あなたの顔が見れなくて目の前にある広い胸板から顔をあげられなくなった。大丈夫だと笑顔で言える自信も嘘をつき通してバレずにいられる忍耐力も、もうなかったから。

さっきまでワチャワチャと騒いでニコニコ笑って楽しく過ごしていたはずだったのに、私のどこにそんなスキがあったのだろう。閉店したお店に何故か片付けを手伝えと私だけ残された時にこうなることを予想しておけば良かった。先輩だから逆らえないのを逆手に取って、今日は帰らず自分といるように命じて、でもちゃんと家の人に心配かけないように連絡させることも忘れない。

食べろ、寝ろと言うだけでは言う事を全然きかない私の性格を知ってて、目の前で確認しないと気が済まない心配性のお兄ちゃん。お兄ちゃんには彼女がいて私にも好きな人がいるから、だからこそ上手くいくお互い恋愛を挟まない本当に兄妹みたいな関係。

彼女と喧嘩したから一緒に浴衣を着て花火大会に行こうと誘ったお兄ちゃんの声はいたずらめいた中に悲しみが漂っていた。何故その時に二つ返事で承諾して出掛けなかったのか、今になっても後悔したまま。

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