東工大数学2024を解く

まず全体的な感想としてだが、とにかく計算量が多い。一問25分ベースの東大や京大などと比べて一問に35分かけられるから当然といえば当然かもしれないが、大問1,3辺りは計算がしんどくなるところもあった。
分野としては数Ⅲ多めで全ての大問に数Ⅲが絡む部分があった。
個人的な難易度としては5<1<<2<3<<<4だと思ったが、あくまで自分の得意不得意で補正がかかっていると思われるので参考程度にとどめておいてほしい。(それでもおそらく1番難しいのが4なのは多分正しいはずだ。)
ではそれぞれの大問の解答とそのポイントを見ていこう。

大問1


題材は円と放物線で東大理系2024の大問4を少し思い出したが、別に大して関係はない。
この問題のポイントは問題全体を眺めておくことである。事前に眺めておけば解き方に見通しが立って無駄な作業を減らせたりする。というのも(1)では$${a=1}$$のときについて問われているから、別に解答みたくaでやらずとも答えは出せる。(むしろ、その方が(1)の計算量自体は大幅に減る。)しかし、事前に(2)を見ておけば、中心の軌跡を関数で表しておく必要があることに気づくはずだ。後先考えずに進めてしまうと問題全体の計算量としてはかなり増えてしまう。
あとは中心の軌跡が媒介変数表示された関数と気づいて微分できるかだが、ここまで来たならできたいところだ。でも媒介変数表示された関数の微分をする時って個人的なイメージではあるが、事前に関数が与えられてることが多くて少し珍しく感じたから、気づけなかった人もいくらかいるだろうと踏んでいる。
解法が思い浮かばないタイプの問題ではない以上、本番なら40分かけてでも合わせたい。

大問2


抽象的な関数を扱う問題で得意不得意が分かれそうではある。しかし、しっかり誘導のレールが敷かれているので苦手であっても(2)か(3)ぐらいまでは行きたい。
大きなポイントとしては$${t=0}$$での値が与えられているから、これを元にところどころで出てくる定数の値を決定するというのが挙げられる。特に(1)の後の$${p_{(t)}}$$の値の決定は必須であり、(3)での積分定数Cの値も代入で決定できる。(事前にネットで調べた解答の中には勝手に積分定数を省いているものもあったが、不定積分で積分定数を勝手に省略してはならない。)
(4)に関しては$${f_{(t)}}$$, $${g_{(t)}}$$が具体的に分かるのでゴリ押しが効くが$${\tan{\frac{3}{8}\pi}}$$の値は経験していないと知らないだろう。求め方に関してはtanの加法定理の公式と$${\tan{\frac{\pi}{4}}}$$,$${\tan{\frac{\pi}{8}}}$$を上手く使えば導ける。
$${\tan{\frac{\pi}{8}}}$$の求め方については東大理系数学2024の大問2でも説明したが、$${\tan{\frac{\pi}{4}}}$$と倍角の公式で求まる。(気になる方は合わせて読んでほしい。)


ちなみに(4)についてはわざわざ$${f_{(t)}}$$, $${g_{(t)}}$$を決定せずとも次のようにしてスマートに求められるのだが、これは初見では出てこなかった。(おそらく想定解はこっちなのだろう。)


全部は取りきれなかったとしても半分は必ず取りたい。

大問3


これが本当に計算が煩雑になる。(なんならこのやり方ですら、僕は2,3回計算間違いをしている。)だからこそできる限り計算を減らす方法を模索したい。また、写真の解答がおそらく見づらいことが予想されるから、補足を加えていきたい。まず(1)だが、座標を置いてから漸化式を立ててるのは解答の都合上、ある程度論理を組み立てるためである。というのも本来は、$${C_n}$$の$${y}$$座標の絶対値は初項$${\frac{2a^2}{b}}$$,公比$${\frac{a^2}{b^2}}$$,項数$${n}$$の数列の和であることを利用して求めている。もし解答を読まなくてピンとこなかったら、その数列の和を求めて最後に-1をかける($${y}$$座標は負だから)とうまくいく。この発想が出てきたのは解答にもあるように三角形の相似に注目したからである。$${y}$$座標さえ求まってしまえば、$${x}$$座標を求めることはできる。続いて(2)だが、座標が求めてあるのでベクトルを使ったりしてできないこともないが、どう考えても計算に無理があるだろう。だから、ここでは直線$${k}$$と線分BCが直交してることを利用したい。そこで$${A_n}$$から直線$${k}$$に垂線をおろすことで等積変形している。また、計算を少し楽にするために$${\sqrt{a^2+b^2}=c}$$としている。これを文字置きした理由だが、相似で出てくる直角三角形の三辺比を$${a:b:c}$$と見やすくしておくためである。(置くと使い勝手がいいだろうという勘でもあるのだが。)実際上手くはまって$${c}$$が消えたり2乗の形で出てきている。最後に(3)だが、これも素直に求めて代入するのではなく、(2)で求めた面積$${S_n}$$を上手く利用している。どの問題においても計算をできる限り楽にする必要がある印象を受けた。ただ、特段何言ってるか分からない問題ではないから他に解けるものがないなら時間を精一杯回したい。

大問4


ここで求めた一般形は(1),(2)にも適用できるが、実際に解いてそこまで見えてることは流石にないだろう。


これが1番難しい。というか1番難しい(3)がなくても難関大の入試問題として成立しうるレベルだと思っている。
まず基本的な前提として確率漸化式を使う。なぜ使うのかと聞かれると困るのだが、ただ、$${n}$$が絡む確率の問題で正攻法で解こうとすると計算が煩雑時になりそうな時に漸化式を使うと上手くいくケースが多いというのは確かな話である。(実際、模範解答として一般的には漸化式が使われていない問題でも漸化式を使って解けるケースも存在する。)
この問題の場合もそうで、$${n}$$という抽象的な数のうち、1枚だけ表、3枚だけ表、…の確率の和を取ろうと思ったら、$${n}$$の場合分けや二項係数の和が絡んできて(1)ですらあっさり解けるとは思えない。こういう時に遷移図を書いて$${n}$$番目と$${n+1}$$番目の関係を漸化式にすると(1)、(2)はすんなり解ける。だから、漸化式を立てる発想から(2)までは解き切れたらこの問題単体では十分だろう。と言ったが、(2)で登場する漸化式を解くには少し工夫がいるのでここまで辿り着いてもできなかった人もいるかもしれない。
ところで問題の(3)なのだが、難しいポイントは何だろうか?もちろん式が複雑なところとか極限までやらないといけないところとかそもそもこの問題全体が難しいとかいろいろあるだろうけれど、やっぱり難しいのは$${m}$$の扱い方だと思う。(僕はここで勘違いをしていて上手くいかなかった。)少し考えてみると分かるが、(1)や(2)と同じようには$${X_n}$$と$${X_{n+1}}$$の関係に着目して漸化式を立てられない。というのも下の図のようになっていて(1)や(2)みたく遷移図から2つの関係を簡単に書くことができないから、漸化式じゃうまくいかない。


それじゃあ、他の方法になるのかと思いきや解答では漸化式を使っている。さっき「うまくいかない」と言っておきながらどういうことなのかというと、これは順序を入れ替えているのだ。
(1)と(2)では先に$${p_k}$$を代入してから漸化式を解いたが、(3)ではその逆、先に漸化式を解けるタイミングで解いてその後で$${p_k}$$を代入している。これの何が違うのかというと、前者では$${X_n}$$と$${X_{n+1}}$$の関係が必要になるが、後者では一旦、一般化して関係を借りておき、その関係が必要なくなった状態のところに$${p_k}$$の値を代入している。これは正直難しいからできなくても十分だろう。
最後の極限にはeの定義を利用している。指数つきでかっこの中身がゴチャついた形は大体eの定義が有効になる。

大問5


複素数と2次方程式の解絡みの問題で、そこまで難しくないしおそらく色んな解答があると思われるが、実数解を持つか虚数解を持つかで場合分けされてるものが多いと思う。(実際に調べたわけではないので予想に過ぎないが。)
判別式から攻めたり解を$${\beta}$$などとしたりしても求められると思うが、僕は極形式を選択した。理由は$${n}$$の存在を示すのが簡単だからだ。左下にて存在することを示しているが、ここで$${n}$$とせずに$${2n}$$とすることで$${m}$$の偶奇による場合分けをなくしている。また、写真の右上では「複素数の相等より」としているが、実際に本番想定で解答を書くならもう少ししっかり書いても良いかもしれない。その後は少し整数問題チックになるのだが、ここで僕が目標として考えていたのは$${a}$$か$${b}$$の取りうる範囲を決定することである。というのも三角関数には影に不等式が隠れているのでそれを上手く使えば範囲を絞れる。範囲を絞ってさえしまえばあとは片っ端から調べたらそれで答えは出せる。

全体的に計算量が多く、また数Ⅲからの出題が多めで非常にやりごたえのある5問だった。また時間が空けば2023年以前の過去問にも手をつけたい。

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