夜と音楽

夏の夜、当時学生だった僕と友人は川のほとりで佇んでいた。手元には友人のアコースティックギターがあり、友人はタバコを吸っていた。僕はビールを飲んでいたかもしれない。

彼はポツリと話し始めた。母親の体調が良くないこと。休学を考えていること。休んでいる間ライブハウスでバイトすること。どれも現実感がなく、フィルターを通して聞いていたように覚えている。彼は最後にこう言った。お前が、俺が卒業するまで大学にいてくれて助かるよと。

当時僕は成績不振で留年がほぼ確定していた。大学に行かずに地元のカフェで本を読み、金がなくなればバイトをして、夜はゲームをする。そんな生活を送っていた。将来のことなど何も考えずに、刹那的な日常を過ごしていた。

友人は家族と目標のために休学する。僕は自分の責によって留年する。そのギャップが酷く恐ろしくて、とても情けない気持ちになったことを覚えている。

「曲を作ろうぜ」
友人が言った。今なら面白い音楽を作れる気がする。俺が曲を、お前は歌詞を考えてくれ。

僕はギターを返して、友人の周りを歩きながら歌った。エジプトのミイラと友人の僕が、ガラス越しに会って昔を懐かしむ曲だ。今でもメロディを覚えている。

夏が終わり、友人は学校に来なくなった。普段からあまり来なかったから、あまり情感はなかった。次に会った時、彼は休む前と特に変わっていないように見えた。

僕は死に物狂いで勉強して卒業した。友人も一緒に卒業した。彼は今もInstagramで歌い続けている。僕は最近になって文字を織ることを再開した。

あの夜、2人で作った音楽を今でも覚えている。夜の音楽、川の流れる音、酒とギター、たゆたう煙、かけがえのない友人たち。僕の青春はこれらで構成されている。

風邪の噂で聞いたけど
君を見たら呪われる
でも僕は怖くない
いつでも君に会いに行く
入場料はかかるけど
君と僕の思い出は
呪いなんかじゃ消えない
呪いなんかじゃ消えない

日常を大切にしたエッセイをこれからも書き続けて行こうと思います。 サポートいただけるとnoteを書くためにカフェに行くことができます。是非よろしくお願いします!!