AI時代最先端、今話題の「漂流男子」久野太一さんへインタビュー
livedoorや、サイバーエージェントなど一流IT企業で活躍しながらも、現在は東京から福岡の糸島市へ移住し、AIの進化が加速した未来に備え「極力働かない」という生き方を選択されている久野太一さんにお話を伺いました。
■久野 太一(くの たいち)さんプロフィール
出身地:東京都渋谷区
活動地域:福岡県糸島市
経歴:食品大手会社→livedoor→現LINE(旧NHN Japan)→サイバーエージェント
現在の職業及び活動:フリーランス
座右の銘:Dead by Daylight (死に救済はない)
「働かなくてもいい技術を支持したいと思った」
記者 はずはじめに、現在のように「出来る限り働きたくない」という、週に10時間ほどしか働かなくなったキッカケを聞かせてもらってよろしいですか?
久野太一さん(以下、久野) 私は今まで幾つかのIT企業で働いてきましたが、その頃に"シンギュラリティ"という概念を知ったんですね。そのシンギュラリティが訪れると、ただでさえ賢い人工知能が、人間よりもさらに賢い人工知能を人工知能自身が生み出すことが出来るという状態なるということを知り「それだったら人間は働かなくていいんじゃないか」と思うようになりました。
それからも色々な情報に触れていくうちに「働かなくてもいい未来が来るならば、自分は働かなくても良い技術を支持したい」と思うようになったことが大きな要因ですね。
「目指すはジャガイモマシーンのオーナー」
記者 なるほど。とはいっても、なかなか誰でも簡単に選択できような生き方ではないと思うんですが、久野さんの言う「働かなくてもいい技術」とは具体的にはどのような技術になるんでしょうか?また、それによって逆に「仕事がなくなる不安」みたいなものはなかったんですか?
久野 今まで私がやってきたことが、ITに触れる職業だったこともあって、具体的にイメージしやすいのでこう思えるのかもしれませんが、すぐすぐ仕事ってなくならないと思うんです。もちろんシンギュラリティに突入してしまえば話は別ですが、私のやっている仕事自体はそんなにすぐになくなるものではないと考えているので、特に不安みたいなものはないですね。
そして私が支持したい「働かなくてもいい技術」というのは、例えいうならば「ジャガイモを作るマシーン」のような技術で、私はそのマシーンのオーナーになりたいと思っています。そのマシーンのオーナーになってしまえば、仕事が奪われるのではなく、むしろ働かずに人生を楽しめる未来が待っていると思うんです。
「いつでもその技術に飛び込めるように出来る限り暇にしている」
記者 なるほど。そのマシーンのオーナーになることと、仕事をやめてフリーランスになられたことにはどんな関係性があったんですか?むしろわざわざ仕事を辞める必要性もなかったんじゃないですか?
久野 いや、私としてはそういう「働かなくてもいい技術」の波に乗れるチャンスが来た時に、すぐにそこに飛びつけるようにしておきたかったんです。そのためには、「出来る限り暇に」しておく必要がありました。
だから今も、何がいきなり来るか分からないので、そういう情報にすぐに飛びつけるように感度は働かせています。
「暇つぶしを持っていない人にとっては苦痛の未来」
記者 なるほど〜。久野さんのお話を伺うと、「働かなくてもいい未来」に対してとても鋭い嗅覚を持たれているように感じますが、働かなくていい未来では、久野さんは何をされているイメージですか?
久野 きっと働かない未来って、仕事をする時間が極端に減っていくから、ただただ暇になっていくんだと思うんです。でもこれってある意味、暇つぶしを持っていない人にとっては苦痛の未来でしかないんですよね。
だから人間はもっと遊びというか、暇つぶしみたいなものを楽しんで、そういう感覚を磨いていくんじゃないかな、と思っています。
なので私は、そういう未来が来ても苦痛にならないように、今までやってなかったPCゲームや、スタンドアップパドル(ウォータースポーツの一つ)、沢登りなど、今までやったことのない色々なことに挑戦するようにしてます。
「原点は、キューバの生き方を目の当たりにしてから」
記者 ありがとうございます。ここまでは久野さんの思い描いている世界観をお聞きさせて頂いたんですが、次は久野さんがどんな心の在り方・認識の変化によって現在の生き方になられたのかをお伺いしてよろしいですか?
久野 そうですねぇ。とても大きいと思うのは、前職で働いていた時にキューバ旅行があったんですが、そこでキューバ的な生き方を目の当たりにした時にすべてが吹っ切れましたね。
それまでは自分の履歴書が、俗に言ういい会社で埋まっていくのも気持ちよかったんです。いい会社に入ったんだから、それを死守せねば、みたいな葛藤もあって。
そんな時にキューバで、日中は暑いからみんな日陰で話をしていて、誰も働かなくて。それで日が暮れたらすぐみんなラム飲んで、踊って、っていう状況を目の当たりにして、そういう生き方もあるんだって、それが本当に目からウロコだったんです。
それからどんどん「24時間の中で、やってて楽しいことを増やすのか、やってて辛いことを増やすのか」みたいなシンプルな考え方になっていって、今のように、のどかなところでオフィスを借りて、一日2時間くらいしか仕事しなくて、でも一応生活できてるっていう生き方にになっていった感じですね。
「AI時代に一番必要なのは、AIに悪いことを教えない人」
記者 なるほど、確かにそれは衝撃ですね。では次に、これからの時代はAIがどんどん活躍していく時代になっていくと言われていますが、そんな時代に最も求められることは何だと思われていますか?
久野 AIに悪いことを教えない人とか、哲学とか、倫理感みたいな、人間特有のものを明文化出来る人が求められてくると思います。
この前ネットフリックスで、AIが生み出すディストピアを描いた番組を見たんですが、本当にこういう未来には生きたくないな、と思うような内容だったんです。なので、テクノロジーに期待はしているんですけど、人間らしさが損なわれるのは嫌だなと思うんです。だから、そういう風にならないようにみんなで頑張りたいですね。
「こういう未来であるべきということは自分の口からは言えない」
記者 確かにそういう未来は避けたいですね・・・。それでいうと、久野さんご自身は、どんな美しい時代を作っていきたいと思われていますか?
久野 ミクロの視点で言えば、親しい友達だけが住んでいるマンションに住みたいと思ってるんです。私は心地良い人とだけ過ごすのが好きなので。でもそれって、マクロの視点で見れば鎖国状態とも言えると思うんです。
例えば、アメリカの某超一流IT企業がイメージビデオを作るときに、女性が何人いて、男性が何人いて、どの人種の人たちがいて、ステレオタイプになってないか・・・・みたいなことに、その企業が全力て頑張ったとしても、必ず傷ついてる人はいるんですよね。
そのイメージビデオに登場しなかったタイプの人にとっては「自分はターゲットじゃないのか」と受け取って傷ついてしまったり。これってもう、人間の処理能力の限界を超えてしまってると思うんです。
それで、こういうことに対して「努力はすべきだよね」と言う人もいる。でも私は「どこまで努力すべきなんだろうか」と感じるんです。そうなってくると、結局それって誰にとって美しい時代なのか分からなくなってしまうんです。
だからやっぱり自分の口からは、こういう未来であるべきというのは言えないですね。
「働くってことは、友達を作る機会であり、働かないための努力」
記者 うーん、確かにおっしゃるようにすごく難しい問題ですよね。
それでは次で最後の質問になりますが、久野さんはある意味、現代の最先端的な「極力働きたくない」という生き方を選択されていると思いますが、そんな久野さんにとって「働く」とはどういうものになるんでしょうか?
久野 私は、働くことは友達をつくる機会だと思ってるんです。私の理想って、サザエさんでいうところの磯野と中島の関係性だったりするんです。会社に所属したときの楽しみも、仕事ではなくて、仕事が終わった後に行く飲み会だったりしました。そのためなら辛いことも乗り越えられた感じというか。
そんな感じで、磯野と中島が仕事をしたらすっごい楽しいと思うのんです。だから私もそんな風な関係性で仕事をしたいと思ってるんですが、残念ながらなかなかそういう人には会えてないんです。どうしても仕事は仕事、となってしまうというか。
「今一番欲しいのは近所の友達」
記者 その「働く」すごくいいですね!ありがとうございます。ちなみにそんな久野さんが今一番欲しいものって何かあるんですか?
久野さん 友達です。近所になかなか遊べる友だちがいなくて(笑)。なのでいつも、夕食後に、オンライン上の友達とオンラインゲームで遊んでます。
記者 なるほど。それは遊びを大事にされている久野さんにとっては致命的かもしれませんね(笑)。ぜひこの記事を読んでる福岡の皆さん、久野さんと遊びに糸島まで足を運んでみて下さい!本日は本当にありがとうございました。
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【久野太一(くのたいち)さんについて】
Facebook:https://www.facebook.com/kuno.taichi
Twitter:https://twitter.com/taichi_kuroshi
Blog:https://taberu-salad.com/
久野さんのオフィス:福岡市西区、海辺のシェアオフィス「SALT」
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【編集後記】
インタビューをした、冨沢&波多江です。
AI時代にむけて様々な議論がなされる中で、こんな選択もあるんだなぁと新しい価値観を提示させて頂き、とても刺激的な時間となりました!多くの若者が将来の方向性に悩む中で久野さんのように、今までの価値観に縛られず、より柔軟な発想を持った生き方は、とても希望あふれるものであると感じました!
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この記事はリライズ・ニュースマガジン“美しい時代を創る人達”にも掲載されています。
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