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常連と自分にとって“行きつけのカフェ”でありたい【配信者インタビュー:むいむいさん】

Radiotalkで活躍する音声配信者「ラジオトーカー」を紹介していく連載インタビュー企画。今回は、番組『中国人むいむいの質問箱(仮)』を配信する、むいむい(梅梅)さんにフォーカスします。

むいむいさんは、中国・浙江省出身の30代女性。4年前に来日し、現在は通訳・イベントMC・YouTuberとマルチに活躍。テレビ朝日の深夜番組『ブイ子のバズっちゃいな!』にもレギュラー出演中です。

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生粋の中国人でありながらネイティブレベルの日本語力を持ち、日本のアニメ・漫画へも深い造詣を持つむいむいさん。その魅力的なキャラクターは、どのようにして生まれたのか。YouTuberとして活躍しながら、Radiotalkでも番組を続ける理由とは──。2時間を超えるインタビューから見えてきたのは、思わず「なるほど!」とうなる姿勢でした。
(取材/文:天谷窓大

「日本愛」で突き進んできた

──中国生まれ、中国育ちのむいむいさんですが、日本語のトークを聞いていると、日本生まれと聞いても信じてしまいそうです。どうやって、そこまでの語学力を身につけたのですか?

むいむい:中国の大学で日本語を勉強していたんじゃないか、とよく言われるんですが、大学では全く違う専攻をしていまして……。日本語は完全に趣味の独学で身につけたんです。

──そうなんですか?!

むいむい:はい。高校時代から社会人になるまで、ずっと独学で勉強していました。どんな嫌なことがあっても、日本語を勉強しているあいだは楽しかったんです。

就職先も当初から「絶対日本語が使える仕事をしたい!」と思って、いろいろ紆余曲折を経た末に、北京にある日本の独立行政法人に就職しました。

──そこでは、どのようなお仕事をしていたのですか?

むいむい:「中国版Twitter」と言われる微博(ウェイボー)のSNS広報です。日本文化を中国語に翻訳して発信したり、主催イベントの宣伝を発信する仕事をしていました。

他にも、イベントの現場でちょっとした通訳をしたり、打ち合わせや打ち上げで日本語を使って日本人と交流したり。仕事で日本語を使うことができて、「やっぱり私には、こういう仕事が向いているなぁ」と思ったのを覚えています。

──通訳というと裏方さんのイメージですが、表舞台に立つMCの仕事にはどう発展していったのですか?

むいむい:ある日、日本の声優さんを迎えてのファンミーティングの通訳をやらないかと誘われて。日本の声優とアニメが好きだったので、「ノーギャラでいいので、やらせてください!」と立候補したんです。

これが私にとって通訳の“初陣”だったんですが、これが意外と好評で。自分も声優ファンだったので、お客さんの気持ちもわかると思ってもらえたのかもしれません。それこそ「オタク用語」の通訳もできたので、そこでうまくハマって、2回目も呼んでもらるようになって。本職と並行して、イベント通訳という仕事をするようになりました。

──イベント通訳とは、どんなお仕事だったんですか?

むいむい:イベントでゲストさんが中国に滞在する期間中、ずっと一緒に付き添って通訳するお仕事でした。それこそ前日入りから、最後にゲストさんが飛行機に乗って乗るまで、全部。それに加えて、ステージ上、ステージの裏の仕事にもずっと付き添っていました。

──会話が発生する場には、全部同行していたと……

むいむい:そうなんです。ステージ上はもちろん、メイクとか、バックステージでも中国側のスタッフとの通訳が必要なので。すごいハードな仕事だったんですが、「日本語が使える!」と思ったら、すっごいやる気が出て。頑張るうちに、いろんなイベントに呼んでもらえるようになりました。

──そこからMCのお仕事へは、どうつながっていったのですか?

むいむい:最初は通訳の仕事だけだったんですが、やがて日本側のスタッフさんに「あれ、この通訳さん、意外と日本語で進行もできるじゃん」と思ってもらえるようになって。

地方のイベントに行くときなど、向こうとしてもできるだけ最小人数で行きたいので、「この通訳さんが司会もできるから、ひとり連れて行けば司会も通訳もどっちもできて効率が良いぞ」と。それ以来、折に触れて呼んでもらえるようになりました。

──独自の領域を開拓したわけですね。

むいむい:そうですね。通訳兼司会、という特殊な立ち位置が重宝されて、継続的にお仕事をいただけるようになりました。

──中国国内でも十分に売れっ子だったように思いますが、なぜまた日本を目指すことにしたのですか?

むいむい:人前に立って、マイクを持ってしゃべることの喜びを感じちゃって。喜びを感じると同時に、「プロとしてもっと活躍したい」という欲が出てきちゃったんです。そのためには、さらなる日本語力とトーク力が必要だと感じていたのですが、それを磨くためにはもう独学では限界だな、とも同時に思っていて。

中国国内でどんなに日本語を頑張っても、そもそも仕事以外の日常生活ではあまり使う機会がなかったんですよね。そのまま日本語力が低下していくのも怖かったので、思い切って日本のアナウンス専門学校に留学を決めました。

「ネイティブの壁」を乗り越えた先にあったもの

──日本での留学生活はどうでしたか?

むいむい:クラスに留学生はほとんどいなくて、周りのクラスメイトも年下の子ばかりという環境だったのですが、仲の良い友達がたくさんできて。「本当は日本人と中国人のハーフなんじゃないの?」と言われるほどに、日本の生活に溶け込んでいました。

学校の先生からも、「あなたは十分に日本語が上手ですよ、これ以上何を求めるんですか?」とまで言われる始末だったんですが、ここまで来たら、とことん高みを目指したくて。「ネイティブレベルの技術を目指します!」と宣言して、あえてとことん厳しく指導してもらうようにお願いしました。

──日本生まれの人間からすると、「ネイティブな日本語」という感覚は逆にピンと来ないのですが、「日本語が上手」ということとは、また違うのですか?

むいむい:「日本語が上手い外国人」から「ネイティブな日本語」までの一歩って、実はめちゃくちゃ難しいんですよ。少なくとも、今日明日で出来ることではないんです。

当然、アナウンス技術の上達も、もともと日本語の環境で育っている同級生たちのほうが段違いに早くて。みんながどんどん原稿なしでフリートークできるようになっていく横で、私はなかなか思い通りに話を展開できなかったり、限られた時間内に収めることができなかったり。

──なるほど……

むいむい:結果を出せない日々に、焦りを感じていましたね。でも、壁を乗り越えるには努力しかないので……。日本人の同級生たちに敵わないのはもう当たり前だから、自分のペースで練習を重ねて上手くなるしかないなと。ひたすら耳を鍛えつつ、積み重ねていきました。

すると不思議なもので、入学から2年目を迎える頃には、来日した当初よりもスムーズに日本語を話せるようになったんです。これを機に、お休みしていた通訳やMCの仕事も再開して。どんどんお仕事を引き受けるうちに現役当時の感覚がよみがえってきて、失いかけていた自信を取り戻すことができました。

「質問箱への返事用」に始めたRadiotalk

──そんなむいむいさんと、Radiotalkとの出会いは?

むいむい:学校の実習でラジオ番組を作ることになって。練習を兼ねて、自分でもラジオ配信をやってみようとRadiotalkのアプリをインストールしたんですが、実際に配信するまでの踏ん切りがなかなかつかなくて。アカウントまでは作ったものの、そのまま放置していました。

──活動的な今のむいむいさんからは想像がつかないですね……。その後、どんなきっかけで、改めて配信しようと思ったのですか?

むいむい:学校のOBの、いまは一緒にYouTubeをやる間柄の「POOちゃん」という中国人の友人から、「自分のYouTubeチャンネルに出演しないか」と誘いをもらいまして。生配信にゲスト出演させてもらったら、これが結構好評で、私のSNSのフォロワーも一気に増えたんです。

コメント欄でも、「この中国人、日本語上手いな」「受け答えも上手い、お笑いがわかってる」という好評の声をもらうようになって。「個人チャンネルを開設してほしい」という声もたくさんいただいたんですが、ひとりだけで動画制作をするのはなかなかハードルが高くて。何か他の形でできないかな、と思っていたところで、「質問箱」のサービスが流行りだしたんです。

この「質問箱」でお便りを募集して、それに音声で答えていったら、コンテンツになるんじゃないかな、と思って。放置していたRadiotalkをもう一度立ち上げなおして、「オーディオ質問」というコンセプトで番組を立ち上げました。

──オーディオ質問、っていうコンセプトは面白いですね!

むいむい:文字通り、届いた質問に音声で答えていく番組です。当初はどちらかというと、音声日記に近いものでしたね。

そのうち、とくに面白かった質問を何本か選んで、ラジオ番組風に展開するようになっていきました。オープニングやエンディングを付けたり、「ここでお便りを紹介します」と、コーナー風にしてみたり。ままごとみたいな感じでやってましたね。

活動的な昼間に収録して、テンションを担保する

──普段はどんな環境で収録していますか?

むいむい:Radiotalkを入れたスマホをスタンドにセットして、そこに外付けマイクをつなげて配信しています。外付けミキサーは使っていないですね。とても簡易的なんですよ。

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──1日のどんな時間に収録していますか?

むいむい:午後の3〜4時ぐらいが多いですね。仕事の合間といいますか。

たまには、深夜に録ったりもしていたんですよ。でもやっぱり、喉が疲れていて。近所迷惑にならないようにトーンを抑えるせいもあって、めちゃくちゃ声が暗いというか。聞き返すと、とにかく声に元気がないんですよね。初期のころは割と深夜に録っていたので、いまとはだいぶ声のテンションが違います(苦笑)

──活動的な時間帯に収録することで、パワフルな語り口を実現しているのですね。

むいむい:そうですね。やっぱり、まだ日が明るいうちに録るほうがテンションも上げられるなと気づいて。収録時間を昼に切り替えてから、すっごい変わりましたね。なんかもう、声がダントツに明るくなりました!

「お便りをくれた人さえ聞いていてくれればいい」

──いまや非常に多くのリスナーを抱える『むいむいの質問箱』ですが、番組に手応えを感じるようになったのはいつごろですか?

むいむい:これが、全然最初は聴かれている実感がなかったんです。
当初はRadiotalkのアプリにアナリティクス(リスナー数などのアクセス統計機能)が付く前だったので、本当に何人に聴かれているんだろう、というのがわからなくて。

2020年の7月、『運コミュ』というRadiotalkの運営公式番組(※現在は『MORE TALK!』のタイトルで配信)に出演した際に「月間再生数が1位だった」と聞いて、本当にびっくりしました。

──配信するうえで工夫していること、力を入れていることはありますか?

むいむい:正直、自分の番組はラジオ番組としては、完成されていないと思うんですよね。あえてこだわらないというか。(Radiotalkの収録上限の)12分きっちり使い切るところとか。回によってはきっちり編集することもありますけど、基本的には時間を気にせずしゃべることが多いですね。

私にとって『むいむいの質問箱』は、「お便りを紹介するだけの番組」なんですよね。なので、導入もとくに気にせず、冒頭から「はい、お便り紹介します」と始める回もありますし。いわゆるセオリーというか、人を引きつけるための工夫といったことは、あんまりしていないんです。こんな言い方をすると、他の方々に失礼になってしまうかもしれないですが……。

──番組に対しては、どんなスタンスをとっていますか?

むいむい:「質問をしてくれた人に向けて答える」というスタンスでやっています。極端な話、質問を送ってくれた人さえ聞いていてくれれば、それでいいんですよね。「私のトーク、面白いからみんな聞いてよ!」とか、「もっと聞いてもらえるようになりたい」いう思いは、自分の中にはないですね。

──質問した人との「1対1」の会話をたまたま大勢の人が聞いている、というような……

むいむい:そうですね。基本「おすすめトーク」とかにも載らないのが普通というか。載ったら嬉しいけれど、別に載らなくてもいいかな、というか。あくまで自分のペースでやっていこうと思っています。

「深い話はRadiotalkでする」

──むいむいさんはYouTuberとしても活躍していますが、YouTubeとRadiotalkはどのように棲み分けていますか?

むいむい:何かネタを考えて、テーマについてしゃべるっていうことはもうYouTubeでやっちゃってるので、RadiotalkではYouTubeで話せないこととか、真面目な一面とか、「実はこういう風に、深いところまで考えているよ」という部分を持ってきていますね。

──メインのYouTubeに対して、「B面」のRadiotalkといったところでしょうか。

むいむい:そうですね。YouTubeでは難しい話があまりできないんですよ。わかりやすいしゃべり方とか、わかりやすいネタのほうが見てもらえるので、難しい話は基本できないし、しない。

でもRadiotalkだと、ちょっと難しい話とか、それこそ人生哲学っぽい話をぶっこんでも、ついてこられる人はついてきてくれるんです。全員に理解されなくても、1人か2人が理解してくれれば、それで十分なんですよね。

私、YouTubeのコメント欄には書き込まないんです。本当に私に聞きたいことがあれば、お便りという形で送ってね、というスタンスを取っていて。で、その結果届いたお便りが、Radiotalkで紹介できるような内容だったら、それこそ良質の循環なんじゃないかなと。

──YouTubeのファンのなかでも、とくに良い関係性を築けるコアな人たちがRadiotalkにやってくると。

むいむい:そうですね。YouTubeではこちらから一方的に発信して、Radiotalkではお便りを介してファンの方と深くコミュニケーションを取る、という感じです。

常連と自分にとって「行きつけのカフェ」でありたい

──むいむいさんにとって、Radiotalkはどんな場所ですか?

むいむい:「行きつけのカフェ」ですね。
とりあえず常連さんが居心地のいい雰囲気を作り出していて、それでいて、ちょっとのぞいてみようかなというご新規さんが来たら、「いらっしゃい!」って。かといって、お店の前で「ご新規さん大歓迎!」とわざわざ呼び込みはしないという、そんな温度感。常連さんにとっても行きつけのカフェでありたいし、自分にとっても行きつけのカフェでありたいんです。

──テレビのレギュラー番組を持ったり、マルチに活動を広げていることも背景にあるのでしょうか。

むいむい:そうですね。環境が変わっていってもRadiotalkは変わらずに、「家に帰ってくつろいでいるむいむい」になれる場所でいたいですね。穴場スポットみたいな。リスナーさんにとっても私にとっても、「ちょっとここで裏話でもしようか」という場所でありたいですね。

──いつでも戻ってこれる場所、というか。

むいむい:そうですね。いつでも戻ってくる場所、それが一番いいですね。リスナーさんにもそう思ってもらえる場所であれたらと思います。

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