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修学旅行での自由課題、阪神ファンについて

ナマで『なんぎやなぁ~~~』を聞く


※お断り
この内容は当時中学生だった少年の偏見で構成されております。あらかじめご了承ください



中学2年の修学旅行は京都と奈良に行った


どんなものかというと、修学旅行によくアリがちもアリがちな神社仏閣を巡るやつだ。


その中でひとつ問題があった。


全行程の中に1日、自由行動の時間があり、そこでなにをやるのか、ということで国語の教師から自由課題を出された。


自由課題とは文字通りの自由課題で何でもアリだった。


こういうのが一番困る。


『〇〇について書きなさい』


こういうのが一番良い。


東大寺の大仏でも通天閣についてでも何でもいい。とにかくテーマを!指示をください!という感じで指示待ち人間にとっては地獄のような課題だった。


しかし!


そんな中でボクは違った。

せっかく初めて関西に行くのであるから、当時野球が大好きで大の巨人ファンとしては、そこにいる阪神ファンの様子はぜひ知りたい。たとえば阪神が負けた翌日、彼らはいったいどんな生態をしているのか。興味津々であった。(失礼だな)

今でこそ関西にだって巨人ファンとか西武ファンとか他のチームのファンだってたくさんいることを分かっているけれども、当時のボクは

関西の住人 = 全員阪神ファン

阪神ファンにあらずんば人間にあらず


・・・ぐらいの偏ったイメージを持っていた


これは非常に面白い課題になるのではないか。

実行に移す前からワクワクが止まらなかった。

何しろそんなのあったらオレ自身が読んでみたい。


あくまでもズームイン朝のプロ野球イレコミ情報の知識だけども、やっぱりナマで

なんぎやなぁ~~~


・・・を聞きたいではないですか。



そして自由課題の日。


前日の阪神タイガースの試合である。

ここで阪神が勝つとこの自由課題はお蔵入りになる。


そうなった場合は

『こんなこともあろうかと』

・・・などと宇宙戦艦ヤマトの真田隊員のセリフのような保険的すべり止め的企画、見学したお寺や神社のことをありきたりかつ通りいっぺんのことを書いてお茶を濁さねばならなかった。


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前日の阪神タイガースはフランチャイズである甲子園で、ノムさんのクール解説でオナジミの野村克也新監督を迎え、めちゃくちゃ強くなっているヤクルトが相手であり、確か自分の記憶が確かなら

12-4

ぐらいでボロ負けしたはずである。(あくまでもうろ覚えである)


わがこと成れり!

天は我に味方した!!


オレは日頃の行いの良さを感謝した。


まさに神様「自由課題ガンバレよ」全力で後押ししてくれているようではないか。


まずは昼間っからコップでお酒を飲んでいるベテランめのおじさんにファーストコンタクトをとってみる。


その前に改めて自分の中でのミッションを繰り返す


まず、インタビュアーとして自分が巨人ファンだということは絶対にバレてはならぬ、ということ


いくら14歳の少年とはいえ、巨人ファンを無事に帰すほどかの地は生易しい場所ではないだろう


場合によっては全力で逃亡を図り、仮に無念にも捕縛された場合は拷問あるいは生きて辱しめを受ける前に舌を噛み切って死ぬとか、そこまで考慮せねばなるまい・・・オレは綿密に事前のシミュレーションをしていた。


じゃあそれなら阪神ファンを装えばいいじゃないの


そういう意見が出るのも当然であるが、これは短絡的かつ卑怯な考えでありながら、なおかつ却って危険な作戦である。

いやあ~昨日は残念でしたねえ、ボク阪神ファンなんでショック受けましたよぉ~(ションボリ)


なんて安易に彼らに接触をはかるのは非常に危険だ。


彼らは生まれる前から筋金入りの阪神ファンである


そんな人たち相手に付け焼き刃の阪神タイガースの知識は却って危険だ

瞬く間に見抜かれるだろう

その後の身の安全は確実に保証されない


生兵法は身を滅ぼす


街亭の戦いにおける馬謖のような目に遭うのは火を見るよりも明らかだ。泣いて斬られる的な。


それならばいっそ「いやあボク野球は全然わかんないんです汗」と言ってしまった方が比べものにならないほど良い。


だが、オレが考えた作戦はこうだ


ボク地元の大洋ホエールズのファンです!と胸を張って答える。



当時弱かった阪神よりもさらに弱かった大洋は、話題にしても当たり障りのないように思えた。

また、いくら阪神の話をする方もまったく野球のことわかんない人間よりも、野球がわかる人間を相手にする方が話も弾むってもんだろう。


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心の中で W の帽子をかぶりつつ



結果的にコップ酒を飲んでいたベテランめのおじさん(前歯が何本か無かった)に声をかけたのは大正解だった。


こちらが望んでいた反応を十二分に上回る反応をしていただき、心の中で

ひゃぁああああああぁぁぁぁぁあああ!!!!!!

と、叫んでいた。嬉しさのあまり。


もうね、ボヤキまくりですよ。


ボヤキといえばヤクルト新監督の野村克也氏(当時)の専売特許だけども、今回に至っては仕方あるまい。


出るわ出るわボヤキチェーンスモーカー状態


攻撃したら凡打の山、残塁の山

投げたら痛打、快打の山


そして結果は関の山である


それぐらい当時の阪神はヒドカッタ。

それに付随するファンの魂の叫び。


ホンマにあのボケらいっぺんどついたらなアカン

おもんない野球なんか見ん方がええでボク(オレ)!

なんぎやなぁ~~~


もうオレは満足だった。


念には念を入れ、そのあといくつかさらに取材を行い詳細なレポートにまとめた。

我ながら良い出来だと心から思えた。


これならば国語の教師から褒め称えられて、その後の成績の方も期待できるだろう。


そして、クラスのみんなの前で褒め称えられるこのオレを見てポッと頬を染める女生徒が確実にいるはずである。


見つめ合う2人。

清く正しい男女交際の後、そして初恋同士での結婚に幸せな家庭・・・


目の前にはバラ色の未来が待っていた


・・・はずだったのだが、そのレポートを国語の教師に提出したら、

割としっかり目に怒られた。


何だったらゲンコツのひとつももらった。



国語の教師は熱狂的阪神ファンであった。


自分が愛してやまない阪神がボロクソに負けてウキャウキャと喜ぶ巨人ファンのガキが嬉々として身分を偽って悔しがる阪神ファンから色々と話を聞き出してその様子をつぶさに観察し、それをレポートにまとめてドヤ顔で提出してきたのである。

熱狂的な阪神ファンであるこのオレ(教師)に対して。


そして、ニヤニヤニヤニヤ半笑いで

どうすか?ねえ、センセこれどうすか??面白いっしょこれ?向こうの本場の阪神ファンこんな感じでしたぜwwwwww


・・・みたいなノリで。


まあ、ゲンコツのひとつも落としたくなるよね


そこでボクは悟ったのであります。


大人の世界の汚さ、そして理不尽さ

大人って本当に難しい

大人になるって悲しいことなのね




※ちなみに、そのあとしばらくその教師は口を聞いてくれませんでした
















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