見出し画像

リツアンのこれまでの「歩み」と「理念」をまとめました。

ホームページに掲載する「代表メッセージ」を更新するに当たり、リツアンのこれまでの歩みと理念についてまとめました。

リツアン創業の背景と業界の課題

リツアンを創業したのは、いまから17年ほど前です。当時の派遣会社は、派遣社員を「人財」と呼びながらも、実際には取り替え可能なモノや商品のように扱い、会社の利益を最優先していました。マージン率が40%や50%という高水準が一般的で、会社は大きな利益を上げている一方で、派遣社員の生活は常に厳しい状況に置かれていました。

私が働いていた派遣会社も例外ではなく、派遣社員の待遇改善を訴えても、単なる一営業マンとしての私の声は届かず、売上や新規取引の獲得件数といった目標達成がすべてでした。派遣社員の満足度向上は会社の主要課題ではなく、売上目標や応募者数の拡大が最重要視されていました。

リツアンを設立したのは2007年9月のことです。この少し後、派遣業界に転機が訪れます。2008年のリーマンショックとそれに伴う派遣切りです。多くの派遣労働者が仕事を失い、行くあてもなくなった人々が東京の公園に集まって過ごす「年越し派遣村」がメディアに広く報じられ、日本社会に大きな衝撃を与えました。これを契機に、派遣労働のあり方が根本的に問われることとなり、派遣労働者の待遇改善や雇用安定に向けた法的な取り組みが強化されました。

特に、マージン率の透明性が求められるようになりました。以前は公開されていなかったこれらの率はブラックボックスとして扱われていましたが、2012年の法改正により公開が義務付けられ、派遣労働者に対する適正な報酬の支払いが保証されるようになりました。これにより、不当な利益を追求する悪質な派遣会社は市場から淘汰され、派遣業界全体は健全化に向けて進展しました。

SES企業の問題点とその背景
しかし、新たな問題が浮上します。それは新興のSES企業の台頭です。SES企業は、派遣会社と同様にクライアントにエンジニアを派遣し、労働力を提供しますが、準委任契約を基に運営されているため、派遣法の規制を受けません。このため、マージン率の公開が義務付けられておらず、利益構造が不透明なままです。

現在、この不透明性を利用したSES企業による誇大広告が問題となっています。特に問題なのは、SES企業の求人に頻繁に登場する「還元率」です。還元率は、請求単価に対して支払われる「給与」と「経費」の合計がどれだけの割合であるかを示し、SES企業を評価する指標として用いられます。割合が高いと待遇が良いとされ、低い場合は待遇が悪いとされます。

ただ、還元率は計算方法にルールがないため、還元率にどのような経費を含めるかは企業によって異なります。例えば、社会保険料の会社負担分のみを経費に含める企業があれば、福利厚生費まで含める企業もあります。このように還元率は調整可能なため、高待遇に見せようと還元率を「盛る」企業が現れます。一つの企業が還元率を盛れば、ライバル企業もそれに追随し、結果として現在のSES業界の採用現場では誇張された還元率が支配的です。求職者は、この還元率を基に企業を評価します。その結果、入社後に様々な問題に直面します。特に、還元率に基づいた想定給与と実際の給与とのギャップが問題の原因になっています。

還元率は企業評価の指標として不適切です。それにもかかわらず、SES企業が還元率を使用する理由は、マージン率を評価指標として使用したくないからです。マージン率は法律に基づいたルールに準じており、評価指標として最適です。しかし、マージン率を使用すると、SES企業が高待遇を主張している割合が実際には偽りであることが明らかになります。したがって、SES企業はマージン率を避け、還元率を使用しているのです。

例えば、SES業界で「高還元」とされる還元率70%は、社会保険料のみが含まれている場合、実際の給与の割合は約60%です。この給与割合をマージン率に換算すると約40%です。技術派遣の全国平均のマージン率は、厚生労働省によると38.6%(給与割合は41.4%)です。つまり、SES企業が高還元とする給与割合は、技術派遣の全国平均よりも低い水準です。なお、これは還元率に社会保険料のみを含んで計算したものであり、ここに福利厚生費などの他の経費を含めば割合はさらに低いものになります。

現在、新興のSES企業が従来のSES企業に異を唱える形で台頭してきています。新興SES企業は高還元率と単価連動制を掲げて、業界の改革を訴えています。しかし、先ほど述べたように、新興SES企業が謳う高還元率の多くは実際には低待遇です。それにもかかわらず、彼らは自らを「新SES」と称し、業界改革の旗手かのように見せかけているため、業界事情に詳しくないエンジニアはそれを信じてしまいます。結局、新興SES企業がやっていることは(すべてではないにしても)、誇張した言葉で求職者を引き寄せ、低賃金で搾取するという、派遣法改正前の派遣会社の手法の焼き直しにすぎません。実際、法改正により市場から締め出された悪質な派遣業者が、現在SES市場に流れ込んでいるといいます。

私たち派遣会社やSES企業は、エンジニアの労働対価の一部を収益源にしています。私たちは、エンジニア社員がクライアントで働いてくれているから会社は成り立っているわけです。そのため、私たちはエンジニア社員の給与に対して誠実である必要があります。還元率の問題など給与に関する情報に虚偽や誇張があってはなりません。一部では、入社前に給与の詳細確認を怠ったエンジニア本人にも責任があるとの意見もありますが、給与に関して誤解を生まないよう丁寧に説明するのは、労働対価を基にビジネスを行う私たちの責務です。そのため、リツアンは創業以来、請求単価や給与に関する情報を一貫して公開してきました。さらに、マージン率についても、公開が義務付けられる前から透明性を持って情報を提供しています。

リツアンのビジョンとミッション
リツアンは、給与に関する情報を正しく伝えます。そして、「給与額」にもこだわります。その理由は、私たちが派遣会社だからです。私たちは、エンジニア社員と日常的に顔を合わせているわけではありません。そのため、彼らの仕事に向き合う姿勢、頑張り、成果といったものに対して、直接感謝したり、労ったり、励ましたりする機会は限られています。私たちができることは、彼らの仕事に対する取り組みや成果を、給与という形で評価することだけです。ですから、リツアンは「1円でも高い報酬を支払う」ことをミッションの最上位に掲げ、エンジニア社員の給与額にこだわっています。

ただ、仕事の魅力は給与の高さだけではありません。仕事の真の魅力は、夢中になって取り組んでいる時の充実感であり、成し遂げた後の達成感です。特にエンジニアのようなクリエイティブな仕事では、これが際立っています。しかし、私たちは、エンジニアが夢中になり、やりがいを感じる仕事を創出することはできません。できることは、そのような魅力的な仕事を紹介することだけです。所詮、私たちは仲介業者です。私たちができることは限られています。その限られた中で、できることを真面目に取り組むことが、エンジニア社員に対する私たちの役割です。ですから、リツアンは魅力的な案件を獲得する営業努力を惜しみません。

リツアンが掲げるビジョンは「いきいきと生きる人を増やす」ことです。これを実現するためのミッションの第一は、先ほど述べました「1円でも高い報酬を支払う」ことです。そして、第二は「会社を出入り自由なコミュニティの場にする」ことです。

働き方に対して人が重視するポイントは多様です。収入を最優先に考える方もいれば、仕事内容を重視する方もいます。プライベートとの兼ね合いから勤務地や勤務時間を大切にする方もいます。安定性を求めて正社員を望む方もいれば、自由度を求めてフリーランスを希望する方もいます。

終身雇用を前提として働いていた時代、働き方の選択肢は限られていました。しかし、最近は働き方が、派遣、SES、フリーランスなど多様化しています。これらを組み合わせることで、例えば、家族との時間を大切にするために今は勤務地や勤務時間を優先し、子育てが一段落した後には給与や仕事内容を重視するなど、ライフステージに応じた働き方を選ぶことができます。また、キャリアパスを重視して、前回のプロジェクトでは経験を積むために派遣やSESで参画し、今回はコア業務に携わり専門性を深めるために正社員として働く。そして将来的には、自由と報酬を求めてフリーランスとして独立するなど、スキルや経験に応じて働き方を変えていくことも可能です。

これからの時代、自分に合った働き方を探し求めて複数の企業を渡り歩くキャリアパスが重要です。これを支えるのは、出入りが自由で寛容な企業文化です。私たちは、新たな挑戦をするために旅立つエンジニア社員が、いつでも戻れる場所を用意しています。挑戦がうまくいかなくても、安心して戻れる場所があれば、最適な働き方を求めて何度でも挑戦できます。会社に「所属して」組織のルールに縛られて働くのではなく、サークルのように、自由で、柔軟で、気軽に「参加する」会社を目指しています。

このような自由で柔軟な働き方を実現するために、リツアンは「会社を『使われる』ものから『使う』ものへ変える」という第三のミッションを掲げています。終身雇用が維持されていた時代、キャリアの発展は主に社内での昇進や昇級を意味していました。社員は長期間にわたり同じ会社で働き、会社内での役職の昇進や給与の増加を通じてキャリアを築いてきました。

しかし、今後は、キャリアは社内だけでなく社外にも広がっていきます。エンジニア社員には、リツアンをキャリア発展のためのツールとして活用して欲しいと考えています。例えば、リツアンを通じて多様なプロジェクトに参加し、スキルと経験を積むこと、リツアンを利用して転職希望の企業と繋がること、また将来的に独立する際に必要な人脈を形成することなど、リツアンが持つリソースを個人のキャリアパスのために活用してもらうことを望んでいます。法人が持つ信用力、人脈、影響力は個人のそれを上回るため、それを自身のキャリアパスに最大限に役立ててほしいと考えています。

まとめ
以上のように、情報を正しく伝え、報酬にこだわり、出入り自由な環境を整えることで、エンジニア社員が新たな挑戦に取り組む意欲を引き出します。そして、その挑戦を会社のリソースで支援することにより、私たちの掲げる「いきいきと生きる人を増やす」というビジョンを実現します。「いきいきと生きる」という言葉は少々大げさに聞こえるかもしれませんが、まずは「いきいきと働く人」を増やすことから始めます。人は仕事に夢中になり、その仕事をやり遂げたときに、いきいきと輝いています。仕事に専念し、粘り強く最後まで成し遂げるためには、まずは生活の安定という基盤が必要です。それをリツアンの給与体系で支え、夢中になれる魅力的な案件を営業努力で獲得し、よりよいサービスを社名の由来でもある「立案」してまいります。これからも、私たちは「三方良し」の基本理念を大切に、エンジニア、クライアント、リツアンの三者が誰一人欠けることなく、平等に利益を享受できる関係性や仕組みを築いていきます。

※ SES企業や技術派遣に転職する際に、業界の裏事情について『SES/技術派遣 転職虎の巻』を作成しました。これからITエンジニアを目指す方に、業界を知る手助けになることを願っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?