見出し画像

SES企業の高還元モデルは「急成長」は向いていない

SESの高還元モデルは「急成長」に向いていません。これは日本を代表する大手企業ですら採用に苦労している現状から容易に理解できることです。われわれSES企業(派遣会社)が還元率を上げたくらいで、短期間で大量の経験者を採用することは不可能です。

仮に急成長している場合、それは採用基準を緩めて未経験者や微経験者を大量に採用している結果と考えられます。これを裏付ける事実として、高還元SESの単価がIT派遣の平均単価よりも約10万円低い55万円程度であることが挙げられます。

単価が55万円程度ということは、たとえ高還元であってもエンジニア社員の給与は必ずしも高収入ではありません。これは実際に、還元率が低いといわれる従来型のSES企業の平均年収と大差ないことからも明らかです。

未経験者や微経験者の割合が多い社員構成は、不況に弱い体質です。例えば、リーマンショック級の不況が訪れた際、大量の待機社員が発生し、経営は持続的ではなくなります。

ですから、高還元モデルを採用するSES企業は、急成長を目指すのではなく、地道に基盤を固めることが重要です。企業の成長(売上や利益)を重視するのであれば、高還元モデルをやめ、テストや評価などの拡大しやすい領域で勝負していくのが賢明かと個人的には考えています。

リツアンは創業から17年間、高還元モデルを採用し、各種課題に地道に取り組んできました。このモデルは、単に給与を高くするだけではなく、綿密に構築された仕組みによって初めて持続可能となるものです。

リツアンには課題解決に専念する時間がありました。一方で、現在の新興SES業界では、競合他社の社員数の増加や利益率の高さを誇示するために決算書を公開するなど、競争にとらわれ過ぎる傾向があります。以前はこのようなことはありませんでした。

私たちリツアンは他社の動向には無関心で、内部に目を向けて、より良いサービスを提供するための方法を常に考えてきました。競合他社の売上高や社員数増加にはほとんど関心を持たず、自社のホームページに掲載している社員数も、1年間変更せずに放置していたほどです。

現在、そのような姿勢が許されない風潮になっていることは残念です。私が今感じていることについては、次回詳しく述べますが、他社は他社、自社は自社の独自性を追求することが、持続的な会社の成長につながり、何よりもエンジニアの働き方の選択肢が増え、本当の意味でのエンジニアファーストが実現できるのではないでしょうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?