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香港でのこと #1

1. 香港に行きたい!

観光ビザで台湾に入境すると、滞在可能期間が3か月と定められてる。台湾で働いていたときは観光ビザで出入りしていたため、滞在3か月目を迎える前に日本帰国をして、1か月ほど東京の業務を終わらせてから、台湾に帰るというのがルーティンになっていた。台湾生活をする中で、出会った香港人シルバージュエリーデザイナーのロンとの交流を通して香港への興味が出てきたころだ。私はどうしても香港に行ってみたかったが、当時香港出張をする業務もなし、経費で行けることはできなかった。そこで香港エクスプレスで台中ー香港を飛び、観光ビザ更新をする案を思いついたわけだ。当時この便は安い時で6000円で往復できた。仕事が忙しいし、経費も安くなるという理由で東京のボスからを説得することができた。晴れて香港へ初上陸する日が訪れる。  

2. 香港といえばロンになった日

香港滞在中はロンの共同スタジオを寝床とした。繁華街に面したビルの入り口はいかにも香港というような一見どこに呼び鈴やダイヤルプッシュキーがあるかわからないくらい乱雑にステッカーが貼られた扉であった。きしむエレベーターを昇りスタジオに到着部屋はアジア特有のターコイズブルーの部屋で、様々な素敵なガラクタが置いてある。(ジェンガの駒で作った鹿のオブジェ、動物の骨標本、道路標識などなど)当時は雨傘運動の直後で、アーティストやデザイナーは各々「反送中」や「光復香港」と共産党への反対意志を指名したポスターやステッカーを作っていたので、彼らのスタジオにももちろん壁を飾っていた。ロンはステッカーの一つを私にくれると、ロンは我々を夜の街に誘い出した。その日世間はクリスマスイブだった。

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3. 香港メシ!#1

スタジオを出て街に出た私たちにまず手渡されたのは、中華系スーパー、コンビニでおなじみ買一送一で一本250円ほどの赤ワインだ。一人一本ずつ手渡される。ロンは酒豪なのだ。

初めて生で聞く大量の広東語、路面店から流れ出るクラブミュージック、カチカチカチと小刻みになる特有の横断歩道の青信号音。ボトルワインもさながら香港に圧倒されながらテンションブチ上げの中、ロンは次々と私たちに香港を体験させていく。

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とりあえず香港メシということで、ザ香港な食堂に連れて行ってもらう。何なのかはわからないがどれも丁度よくうまい。この夜はあと3回ほど夕飯を食うのだが、はじめての味と雰囲気というのはいつだって感動的だ。醤油や出汁の近しさを感じつつ鼻から抜ける異国の香りやのど越し。思い切りアジアを感じているとロンはもう勘定をつけて私たちを次の場所へ誘う。ちんたらなんて。アジアはテンポが早いのだ。

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4. Hong Kong Night Out

おもむろに路面電車を飛び降りた先は、西環にあるロン行きつけのクラブ”XXX”。この時点ですでにワインボトルを空けていた香港チームと全然飲み終えていない私はここでイッキさせられる。その酒はさっきまでのやつで、次の酒には持っていけないというものだ。だそうだ。

香港のクラブは空間がコンパクトで、どこも席がちゃんとある。XXXもドリンクを手に入れた僕たちはテーブル席を陣取り爆音の中おしゃべりタイム。こういう時一番盛り上がる話題は日本、香港、台湾、中国の違いだった。今思えばこの時に、お互いの政治的な関心や、ジョークにできるレベルなど伺い知ったそんな時期だ。

次の”Premium Sofa Club”もその名の通り様々なソファが狭い空間ではあるが、ずらりと並んでクセが強いお店。正直歩き回っているので倒れこむように席に着く我々。新たに手渡されるボトル。アンダーグラウンド漂う都市の世界観と相まって、この場所でしかできない体験がある香港がうらやましくなった。

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5. 香港メシ!#2

グループは20代半ば。深夜に腹が減っても行く当てはたくさんあるのが香港、不夜城市。ロンは小鍋で炊いた蒸しご飯なるものがうまいからと店なのか路地なのかくらいとわからない場所に連れて行ってくれた。深夜にも拘わらず老若男女問わず賑わっている。

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しょっぱいものも食えれば甘いものもある。台湾もそうであったが小夜という文化があって伝統的なスイーツも夜あったりする。豆腐、きくらげ、仙草などそういったものを甘いスープと一緒に頂く。僕はこういう爺臭いスイーツが好きだ。甘いものついでにと夜食べるものではないが、香港の伝統的な朝食も食べようということではちみつバターたっぷりのフレンチトーストも食べる。これにはガシガシしっかりつぶして頂くレモンティもしくは練乳ミルクティと一緒に食べるのがデフォルトなのだそうだ。

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6. 第一夜終了

時刻は朝五時を過ぎている。歩き倒した我々はロンのスタジオに帰ってきている。アジアな友達はほんとにおしゃべりが好きだ。台湾で働いていた時も深夜残業後帰宅途中の公園で午前三時を過ぎても犬連れでお酒もなくおしゃべりしているのだ。香港の彼らはずっと吞んでいたが。

好きな音楽、映画など思い思いに話し、ゲームをしたりと僕も初香港で全然眠くなかったのだが、急に彼らはバタバタと倒れていき、第一夜を終える。

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すっかり朝な外を眺め、少しだけ窓を開ける。冬の香港の砂埃っぽさと冷たい湿った空気を一気に吸う。やはり香港にいるんだと感じさせる密度と高さ。ワクワクと眠気が入り混じる、気持ちのよさを感じながら私もソファにうずくまった。

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続く...






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