見出し画像

【書籍紹介】ファスト&スロー(行動経済学がよくわかる本)

行動経済学って少し敷居の高いイメージがあったのですが、ノーベル経済学賞を受賞したカーネマンのこの本を読んでみると計算式もほとんどなくて、「経済心理学」という別名のほうがしっくりきます。てゆか著者自身が元々心理学の大学教授です。一度読めば行動経済学がぐっと身近になると思いますし、「ただの偶然に対するもっともらしい意味づけがいかに世の中に溢れていたのか」という気持ちになると思います。

1.ファスト&スロー(上) ダニエル・カールマン

人がいかに直感的・感情的判断に引っ張られがちでしかも結構間違えてしまうのか、という話を実例を挙げて繰り返し述べている本。心理学者の著者が、この本の内容でノーベル経済学賞を取ったそうです(行動経済学)。「バスケのホットハンド(シュートが成功し続ける状態)はランダム性の中の偶然なパターンでありホットハンドなんてない」と断言する等ほんまかいなという実例も多くて結構面白いです。

自分の理解で特に印象に残ってるのは、

①同時に使えるロジカルな思考力(脳のCPU的な)は有限であること
②我々はヒューリスティック(問題の置き換え)により、複雑な問題を根拠なく簡単な問題に置き換えてしまっていることにあまり気付いていないこと(例えば、この条件は損か得か→相手を信じるか信じないか等)
③人の直感は、統計的分野では特に外れまくること(ランダムの中の偶然のパターンにもっともらしい意味を見出してしまいがち等)

等でした。仕事だけでなく生活にも直結する話ばかりでAmazonのレビュー読むだけでも参考になります。

2.ファスト&スロー(下) ダニエル・カールマン

行動経済学でノーベル経済学賞を取った著者の代表作の下巻。話題は多岐に渡りますが、

◆直感が有効な場合は、秩序ある環境で繰り返しFBを受けてきたエキスパートによる判断の場合だけであること(それ以外は全て偶然)
◆人は得をすることよりも損を防ぐことに熱心なので、組織改革が行われる際には既得権益者よりも『失う物が少ない人』から変えていくことが多いこと
◆人は可能性が非常に小さい稀な出来事に対して過大な重みをつけがちであること(実際の期待値より低い条件でも確実な結果を欲しがること)
◆人の感情の記憶は、実際に幸福感や痛みを感じた期間の長さや総量ではなく『ピーク(最大値)』と『エンド(終わり方)』を加重して捉えがちであること

など。生活や仕事に密着した「経済的に見たら不合理なこと」を繰り返し繰り返し、これでもかとつきつけられます。あとは著者による「不都合な提言」が、企業経営者や学会等からたびたび無視されて来たエピソードにも苦笑いでした。

上下巻読んで今思っているのは「★世の中のあらゆることがただの偶然に溢れているのに、人の認識や意思決定には主観によるもっともらしい意味付けや無意識による問題の置き換え、バイアスが溢れているんやな」と理解した上で、「★自分を含めたあらゆる意思決定を客観的に見つめた上で、前向きに試行錯誤しまくろう」ということです。世の中の見え方が変わる、めちゃくちゃええ本でした。

この記事が参加している募集