見出し画像

【書籍紹介】カズオ・イシグロさん3冊

突然ですが自分がFacebookに書き溜めていたブックレビューを少しずつ紹介していこうと思います。初めは2017年12月のノーベル賞発表後にまとめて読んだカズオ・イシグロさん。特に「日の名残り」は、読みやすいしめっちゃ名作なので是非どうぞ。

1.日の名残り(カズオ・イシグロ) 

→英国貴族に仕えた真面目で品格のある執事が、20年前の同僚女性に会いに行く旅路で古き良き時代を回想するという話。平たく言えば「めっちゃ真面目な人がわざわざ休暇を取って昔一瞬いい感じやった人に会いに行く」というヒヤヒヤするストーリーで、時代背景は「ダウントン・アビー」の世界です。最初は堅そうな物語に入り込むのに時間がかかりましたが、読後感はすごく爽やかで読んで良かったです。Amazonのジェフベゾスさん始め世界中の人がこんなピュアでもどかしい話を愛読してはるんやなぁと。

自分が感じたメッセージを一言で言えば、「いつからだって青春はやりなおせる」というものです。読んだ後、思い出野郎Aチームの「ダンスに間に合う」が頭の中でずっとリフレインしていたのでした。

2.わたしを離さないで(カズオ・イシグロ)

カズオイシグロさん2作目。まるでハリポタを初めて読んだ時みたいな用語のわからなさから始まって、読み進めるにつれて作品の設定が明らかになっていくプロセスがこの本の醍醐味なんやと思います。登場人物の内面描写がすごく丁寧で要所要所ではすごく共感しつつ(めっちゃ切ないです)、全体の違和感がなかなか拭えず最後にクリアになるみたいな。
「日の名残り」もそうですが、こういう繊細な感情を描いた本が世界中で読まれるというのはすごいポジティブなことやなぁと思ったのでした。

3.忘れられた巨人(カズオ・イシグロ)

カズオイシグロさん3冊目で、話の意味が掴めないまま2週間かけて読んだ本。NHK白熱教室のインタビューで著者が「人生の真実を語るのに物語の設定はあまり関係ない」という旨の説明をしていましたが、この老夫婦のファンタジー物語でカズオさんは何を言いたいのか?と、とにかく手探りで読み進めました。

読み終わって別のインタビュー記事も読んでようやく少し理解したのは、「どんな個人や集団や国家も、あまり思い出したくない昔の過ち『burried giant(原題:埋められた巨人)』を抱えていて、その記憶と折り合いをつけながら(そして時折思い出しては心を乱しながら)生きているもんや」という重ためのテーマです。そんなに胸踊る話ではないですが、確かに普遍的なことですね。

何言いたいのかわからない人の話をじっくり聞いていたら、最後にあっとわかったような読後感でした。読んだ後に、いろいろなレビューを読んで事後的に理解を深めていくのも新鮮な体験でした。

この記事が参加している募集

推薦図書